北京
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23/19
中日のゲストや研究者が北京に集うことで毎年開かれてきたフォーラム「中国社会科学論壇」が27日、今年は「コロナ下の国際情勢と中日関係」にフォーカスして、北京会場と東京会場をつないで開かれました。主催元は中国社会科学院学部主席団、実施と運営は中国社会科学院日本研究所で、コロナ禍の今年は東京にある日本貿易振興機構(JETRO)アジア経済研究所が日本側のカウンターパートとして加わりました。2つの会場を合わせると、研究者、シンクタンク、メディア代表らが60人余り出席しました。
会場の様子
開幕式には、中国の戴秉国元国務委員、日本の福田康夫元首相、中国社会科学院の謝伏瞻院長、日本貿易振興機構(JETRO)アジア経済研究所の深尾京司所長が参加して挨拶を行いました。
挨拶に立つ戴秉国元国務委員(北京会場)
戴氏は挨拶の中で、「世界情勢がいかに変わろうとも、日本との友好協力の方針は変わらない」と指摘した上で、「第14次五カ年計画」期間中における中国の一段とハイレベルな開放と発展について、「日本経済界にとって重要なチャンスとなる。日本にぜひこのチャンスをつかんでもらい、今後も中国の発展における重要な役割を果たしてほしい。また、その中で利益を分かち合い、自身の成長にも取り入れてほしい」と述べました。さらに、「中日両国はアジア文明の重要メンバーとして、理解し合い、友好的に付き合い、学び合うだけでなく、人類文明の進歩と発展に『東洋からの知恵』を提供する必要がある」と訴えました。
北京会場のスクリーンに映る福田元首相の挨拶の画面
一方の福田氏は、「中国はいま、米国との間で解決すべき大きな課題を抱えている。さらに、米中二国間だけでなく、他の多くの国々と協調し、より安定した国際社会を呼び込むような協力関係を築くためのテーマや枠組み、組織などを考えなければならない段階に至っている」と指摘し、「新しい国際秩序を作っていくため、東アジアの大国である中国と日本が果たすべき役割は極めて大きい。様々な問題解決に向けた両国の協力において、『学問』が果たす役割は極めて重要と考えるべきだ」と、両国の研究機関同士の交流の意義を高く評価しました。
また、中国社会科学院の謝伏瞻院長は、コロナ下の中日関係の発展をめぐる3つの提言として、(1)経済協力のさらなる質の向上と高度化を促進すること、(2)世界経済と国際協力システムを一緒になって維持すること、(3)民間の往来と世論環境を引き続き改善させていくことが必要であると示しました。
JETROアジア経済研究所の深尾京司所長は「人類は意外としぶとく、数々の疫病を乗り越えてきた。今回の疫病もやがては乗り越えていくだろう」と話した上で、「米中対立下の世界経済」をめぐる共同研究の展開に期待を示し、「日中それぞれ最大級の社会科学系研究組織が、共同で米中対立の世界経済への影響を冷静に分析し、その成果を社会に発信すること、また、環境問題や人口減少など日中共通の問題を共に研究していくことの意義は大きい」と指摘しました。
開幕式後には、中国社会科学院世界経済・政治研究所所長の張宇燕研究員、日本国元在中国大使の宮本雄二氏、中国社会科学院日本研究所の楊伯江研究員、東京大学社会科学研究所の丸川知雄教授がそれぞれ基調講演を行いました。その後、「コロナ後の世界経済とグローバルバリューチェーンの変化」「中日イノベーション協力の可能性」「中日の社会発展分野での協力」という3つのトピックスを巡って、北京と東京をつないでのディスカッションが行われました。
北京会場の様子
なお、中国社会科学院は、1977年に設立された中国国務院直属の哲学および社会科学研究の最高学術機構です。同院が主催する「中国社会科学フォーラム(CASS Forum)」は社会科学系の国際交流を促すために2010年に設けられたプラットフォームで、以降、毎年開催されています。
北京会場の様子
(記事:王小燕 写真:韓永順)