北京
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湖北省黄岡市紅安県は歴史ある農業県で、「男が耕し、女が織る」という伝統を持っています。近年になって、その紡績・織物技術が省級無形文化遺産に、刺繍技術は国家級無形文化遺産に登録され、いずれも紅安県の代名詞となっています。
紅安県の手工業製品として数千年にわたって用いられてきた「紅安大布」は、貴重な純綿織物製品であり、色濃く鮮明な郷土の特色を持っています。その伝統的な紡績・織物技術は非常に復雑で、紡糸や機織りなど主要な手順だけでも15工程あり、細かい作業も合わせれば全72工程のプロセスで生産されます。
紅安大布の伝承人・黄珍蘭さん(左1)
無形文化遺産・紅安大布の「伝承人(認定継承者)」である黄珍蘭さんは、16歳で紡績から学び始め、やがて全ての工程をマスターし、これまで42年にわたって紅安大布を作り続けてきました。また、上海万博などの展示会に参加して伝統工芸品の知名度向上に努めてきたほか、貧困救済の取組みにも積極的で、地元の紅安県七里坪鎮に紡績・織物協同組合を設立し、貧困家庭の女性たちに技術を教え、訓練してきました。その甲斐あって、七里坪鎮では現在1000人以上が紡績・織物業に従事し、黄珍蘭さんの名前を冠した紅安大布ブランドの年間売上高は100万元を超えています。
機織りをする黄珍蘭さんの息子夫婦
紅安地域のもう一つの特産品が、刺繍をあしらった靴の中敷「紅安繍花靴墊」です。この中敷を代表とする紅安発祥の民間刺繍「紅安繍活」の起源は後漢光武年間に遡り、唐の時代に隆盛を迎え、清の時代に栄華を誇りました。そして2008年に紅安繍活は国家級無形文化遺産に登録されました。
紅安繍活の伝承人・劉寿仙さん
刺繍工芸を代々受け継ぐ家に生まれた劉寿仙さんと紅安繍活との付き合いは、8歳の時に祖母に習い始めてから、もう40年以上になります。この技術を継承し、「伝承人」に認定される人材を一人でも多く育成することを目指して、劉さんは紅安繍活伝習所を開設しました。これまでに累計400人近くが参加しました。
劉寿仙さんの刺繍作品
娘の劉珊さんは大学卒業後、故郷に戻って刺繍の店を手伝っています。若者の感性を生かし、ショートビデオやライブ配信などを活用することで、刺繍商品のネット販売を推進しています。紅安繍花靴墊は国内だけでなく海外からの人気も集めており、年間売上高は20万元以上に達しました。
劉寿仙さんが開いた紅安繍活の伝習所
紡績・織物・刺繍を得意とする紅安県の女性たちは、七夕伝説になぞらえて「織女(織姫)」と形容されることがあります。紅安の織女たちは巧みな技術を何千年にもわたって継承し、現代に生きる私たちの目を楽しませてくれています。(取材・写真:趙雲莎)