北京
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9月16日「中国経済と日本企業2020年白書」記者会見の様子
9月16日、中国日本商会が北京市内で開いた「中国経済と日本企業2020年白書」の記者会見での取材をお送りします。
「中国経済と日本企業白書」は同商会が中国各地の日系企業が直面するビジネス環境上の課題を分析し、解決のための方策を中国政府への建議として、2010年から毎年刊行。2020年版白書は、日系企業8,678社を対象に意見をとりまとめたものです。
■ビジネス環境の改善に向けた中国の努力を評価 要改善の課題も
記者会見の冒頭、中国日本商会の小川良典会長は白書のサマリーについて紹介しました。それによりますと、2019年1~10月の日本の対中直接投資実行額は前年比2.9%減の33億3000万ドルで、前年から微減となっています。一方、日本貿易振興機構(ジェトロ)が2019年8月~9月、中国進出日系企業を対象に実施したアンケート調査では、今後1~2年の事業展開の方向性について、「拡大」と回答した企業の割合は43.2%、「現状維持」と回答した企業の割合が50.6%で、合わせれば9割以上に達したということです。
また、中国日本商会の副会長兼調査委員長で、JETRO北京事務所の堂之上武夫所長は2019年白書の建議のうち、改善があったものとして、「外商投資における制限・禁止条項の削減」、「証券業、資産運用への外資参入規制の緩和」、「外資独資旅行者の中国公民アウトバウンド業務の解禁」などを挙げていました。
そして、「今年、改善してほしい」内容については、「公平性の確保」という全体のコンセプトのほか、「対外開放、行政の規制運用・手続き、公平な競争」が建議の三要素で、「投資、技術標準・認証」が重点分野だと紹介しました。
中国はビジネス環境の改善に力を入れ続けており、「外商投資法」の施行(2020年1月1日より)や「民法典」(2020年5月)の採択などがその成果の表れと言えます。こうした法整備の動きについて、小川会長はCRIに対して、「方向性と取り組んでいること自体は、より開放を拡大しようという良い方向にある」とポジティブに評価しました。と同時に、「運営と運用において透明性を高めると、もっと投資しやすい環境になる」と期待を述べました。
さらに、白書は今年から追加された内容として、「高齢者関連サービス関連産業」という新しい章が設けられました。日本に続いて、中国でも高齢化が急速に進む中、この分野における両国の経済界、政府間協力の高まりを背景とする、今後の協力ポテンシャルがにじみ出ている章でもありました。
中国日本商会・小川良典会長
中国日本商会・堂之上武夫副会長
■コロナ下の日系企業:「高度化する中国の消費に取り組んでいきたい」
新型コロナが中国に進出した日系企業に与えた影響も、今年の白書が注目した内容の一つです。日中経済協会北京事務所と中国日本商会では1月末から計10回にわたり日系企業にアンケート調査を行った結果、多くの企業が操業を再開した一方で、稼働率の引き上げが課題となっている状況が浮き彫りになっています。
なお、ジェトロなどが華東地域で6月28日~7月2日に行った調査では、中国政府の感染症への対応について「評価する」と答える日系企業が7割超にのぼったことが分かりました。これに対して、小川会長はCRIの取材に、「中国政府と一人ひとりの国民が感染症を抑えこんで、コントロールしてきたプロセスを見た結果、世界の中でも、中国だけ(感染が収束に向かっている)という環境ができている。中国に住み、中国とビジネスをする人間として、こういう中国政府の対応や、国民一人ひとりの取り組みに対して評価すべきだと思う」と述べました。
なお、直近の中国経済の改善を背景にした日系企業の現状については、企業、産業分野別に状況が異なるという見方を示し、「輸出に頼る事業については、相手国がまだ感染状況が改善していない場合は影響を受けている。一方で、中国国内をメインの市場としている産業については、国内の復興に沿って、業績も向上している。自動車産業がその最たる例だ」という観測の結果を明らかにしました。
新型コロナが日系企業に大きな影響を与えた一方で、小川会長は「コロナによる新しい社会課題への取り組みで、新しいビジネスが生まれてくるのではないかという期待も高まっている」と話し、ピンチの中からチャンスを見つけ出すことの可能性を前向きにとらえていました。
■中国経済の成長は日本経済の拡大維持に資する
新型コロナウイルス感染症の世界的大流行などを背景に、日本政府はこの春、海外から一部の生産拠点の日本国内への帰還をサポートすることを含め、サプライチェーンの多元化を支援する予算案を二回導入しました。
記者会見の席上、中国メディアの記者からは「日本政府の補助金を申請し、中国から撤退した企業が1700社に達した」という報道の信ぴょう性を確認したり、撤退する理由を尋ねたりする場面がありました。
これを受け、堂之上副会長は「1700は、中国から撤退・移転した企業の数ではなく、あらゆる立地について行った補助金の件数のことである。サプライチェーンの多元化を目指すためのものなので、中には、新たに拠点を整備する場合もあり、撤退を促進するものではない」と説明しました。
小川会長はジェトロが行ったアンケートの中、「通商環境の変化に対する対応策」の項目では、「生産地の移管」と「調達先の変更」を「あり」と回答した企業はそれぞれ9.2%と9.9%で、「いずれも1割に満たない割合にとどまっている」という結果を引用しながら、全体でみると、日系企業の中国市場への見通しについて、「特に大きな変化が生じたとは思わない」と強調しました。
そして、「中国国内の消費は今後も伸びていくし、もっと高度化していく。その中で、日本企業として、高度化する中国の国内消費に取り組みたいし、そうしていくべきだと考える企業が多い。中国経済の成長は日本経済の拡大維持に資するもので、中国がきちんと成長していくことが日本にとって重要だ」と両国の連携の重要性を訴えました。
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