北京
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中国の名所と言えば、故宮こと北京の紫禁城が思い浮かぶ。1406年から1420年まで14年の歳月をかけて建てられたこの古代宮殿群は今年で600歳を迎えた。
明・清という中国最後の二つの封建王朝の皇居として、24人の皇帝がここに暮らしていた。封建王朝の崩壊により、500年以上の風雨を経験した紫禁城は扉が開かれ、1925年に故宮博物院として生まれ変わった。新中国成立後、幾度もの修繕を経て、人民の博物館として栄えた故宮は1987年に世界遺産に登録され、東方建築文化を代表する観光の聖地となった。
2002年、故宮はこの100年で最大規模の修繕を迎えた。ハード面の修繕に伴うのは、ソフト面の改革とイノベーションだ。
文物をより良く保護するため、そして来場者の見学体験を最大限に向上させるため、2017年から故宮の入場券は一律ネット予約制を実施。ビッグデータ技術の導入により、来場者は入館可能な時間帯を予めネットで選び、eチケットで気軽に入場できる。昔のような、受付で入場券を買う人ごみや入館を待つ長蛇の列は永遠に消えることとなった。
また、従来の「高嶺の花」のような神秘感よりファッショナブルなイメージ作りに取り組み、故宮口紅、故宮パジャマ、故宮人形、故宮しおり…誰もが親しみやすい様々な故宮グッズが誕生している。可愛くてクールな表情で人気を獲得。流行文化を取り入れた伝統文化の要素は身近になり、故宮の魅力はいっそう生命力に満ち溢れ、光り輝いている。
新技術は伝統文化を守る新しい力だ。2018年のブラジル国家博物館火災、2019年のノートルダム大聖堂火災、そして同年の沖縄首里城火災を受けて、古代木造建築群としての故宮は照明設備や消防設備の機能にいっそう工夫を凝らした。文物にダメージを与えそうな紫外線や赤外線をろ過できる低温光源の使用、5000ヵ所以上の自動火災報知機や雷検知器の設置、消防ロボットシステムの導入。さらに、VR技術によるクラウド博物館やデジタル故宮の建設が進められ、コロナ禍の中でも世界中の故宮ファンに中華文化の魅力を絶えず発信している。
歴史の栄光を語り継ぎ、未来につなぐ魅力を探る——600歳の故宮は若返り、時代の流れを捉え、大胆な自己革新を続けている。開放と包容、伝承と革新の融合こそ、伝統文化を守る最善のあり方ではないだろうか。(CRI日本語部論説員)