コロナ禍を乗り越え 相互理解と共に発展する2020年代を目指せ ~JETRO上海事務所前所長・小栗道明さんに聞く(下)

2020-08-25 22:49  CRI

 

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観光客が戻りつつある上海豫園(8月22日 QG撮影)

 中国での滞在歴が通算12年になる小栗さんに、中国がビジネス環境の改善に向けた取り組み、中国政府が最近良く言及している「国内大循環」の真意、開催まで2か月余りとなった第3回国際輸入博覧会に寄せる期待などをめぐりお話を伺います。

ビジネス環境の改善に本腰 企業に寄り添う政府

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上海市浦東新区陸家嘴の眺め(写真提供:上海市商務委員会)

――「外商投資法」の整備を始め、ビジネス環境の改善に向け様々な取組をしている中国について、小栗さんが実感したことは?

 これまで上海で過ごした5年間、私が一番印象に残ったのは、中国政府や華東地域の地方政府の関係者がビジネス環境の改善に対し、本気になって取り組んでいることです。「企業のために役に立とう」という皆さんの気持ちが伝わってきます。先日、世界銀行が発表した世界のビジネス環境のランキングでも、中国が31位に順位をあげて、29位の日本と2位しか差がなくなりました。

  上海市の李強書記が「政府は“店小二”です」と自ら言いました。「店小二」は日本語にはない表現で、企業に寄り添って、困っていることの解決を図る「お助け人」という意味です。これは政府のトップだけではなく、各部門のリーダー、運営に携わっている処長クラスの実務担当などにいたるまで、ビジネス環境の改善に高い意欲を見せており、印象に残っております。

――今年は新型コロナウイルスの感染拡大という事態で、日系企業の皆さんも不安な日々だったのではと思いますが……

 その期間も政府関係者の真摯な対応ぶりが印象に残っています。たとえば、日本人駐在員の不安を和らげるため、日本語ができる先生がたくさんいる病院を日本人向け発熱外来にしたり、日本語のボランティアを組織して、ホットラインを開設してくれたりしていました。企業や駐在員が抱えている問題を提示すると、それに対してできる限りの対応をしてくれています。すべてのことが解決できるわけではありませんが、まずは企業の声に真摯に耳を傾けて、できる限り寄り添っていく姿勢がひしひしと伝わってきました。

「国内大循環」と言えども対外開放は続く 日本企業にまだチャンスあり

――新型コロナの経済への影響を緩和させるため、中国政府は「六穏」(六つの安定=雇用・金融・貿易・外資・投資・見通しの安定)、「六保」(六つの確保=雇用、基本的民生、市場主体、食糧・エネルギー安全、産業チェーン・サプライチェーンの安定、末端の行政運営)の方針を導入していますが、小栗さんはこれをどう評価しますか。

 7月にも中央レベルで安定的な貿易外資という会議が開かれました。その後すぐに上海市の関係部局から「中央政府の方針を受けて、日系企業は何に困っているのか」という問い合わせがありました。貿易、ないし、外資誘致に引き続き積極的に取り組むという姿勢は変わっていないと思います。また、日系企業も抱えている問題を解決して、順調に発展できるようにといった思いが伝わってきます。

 最近、中国国内で言われている方針として、「国内の大循環」という言い方があります。これについて、「中国が内向きになっている」と解説する日本の一部メディアがありますが、私は決してそうは見ていません。「国内の大循環」とは外資を排除するわけではなく、あくまで「引き続き外資を歓迎する。外資も中国国内の大循環の中で利益を得られる環境作りをしていく」として受け止めています。サプライチェーンの安定化もそうですが、引き続き、開かれた体制で経済を発展させていく、また、内外資の差別を付けずに行っていく姿勢だとみています。そうした中で、日本企業はまだまだビジネスチャンスがあると思っています。

――小栗さんは「国内の大循環を主体として、国内・国際の2つの循環が相互に促進する」という中国の新しい発展の枠組みについて、とりわけその開放性に着眼しているようですね。

 そうですね。正しく習近平主席がおっしゃる「開放の扉は大きく開くだけだ」ということです。その前提の下での国内大循環ですので、グローバルサプライチェーンとの断絶はまったく考えていないと思います。むしろ改革開放をしっかり進めながら、国内の大循環をはかって、諸外国とともに発展の果実を共有していくことを、私自身は期待もこめてそう見ています。

――一方、中国経済の明るい材料をどう見ていますか。

 その一つは内需が堅調であることです。「90後(1990年代以降に生まれた世代)」の方々が、消費欲が旺盛だとよく言われています。上海を例に、日本の流通店舗「ロフト」が上海にオープンして、多くの若者で賑わっています。中国の成熟しつつある消費者層をとらえようという日本の進出は、まだ続くと思いますし、内需と中間層がより拡大して、市場も大きくなっていくことが日本企業にとって大きなチャンスだと思います。

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資料写真:第1回国際輸入博覧会の会場

――この11月、第3回国際輸入博覧会はオフライン形式で、上海で開催される予定です。パンデミックの終息が見通せない中、今年の開催を小栗さんはどう展望しますか。

 上海ではすでにほかの展示会が防疫対策を採りながらも開かれています。日本も含む世界各国の企業と商談する一大イベントですので、予定通りに開催されると思います。ただ、商談の仕方がオフラインか、オフラインも一緒に使うのかなということになるかと思います。

 JETROとしては、昨年も出展した「ヘルスケア」と「食品」に「日用品」も加えて、三分野で中小企業の製品を出展して、彼らの商談を支援する予定にしています。ただ、モノは入ったとしても人が来られないということも見越しながら、オフラインの展示とオンラインでの商談の組み合わせをしながら、準備を進めています。

――そう言えば、今年6月の広州交易会が完全にオンライン形式で開かれましたが……

 そうですね。オンラインだからの良いところと悪いところが両方あると思います。ライブ配信を行いながら、リアルタイムで商品を売る「ライブコマース」は、オンラインならではの良さです。ただ、実際に触ってのさわり心地や、試食で食べることはオンラインでできないので、分からないわけです。

 一方、お酒の展示を例に、オフラインではお酒の商品を見て、そこで試飲ができます。そこにオンラインを組み合わせることで、実際にどういうところで、どうい人たちが作ったものか分かります。そういったように、今回、われわれ自身もオフラインとオンラインをうまく組み合わせながら、中国の方々に日本の製品とサービスを伝えていきたいと思っています。

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資料写真:空中から見る国際輸入博覧会の会場

中国と日本 相互理解と共に発展する2020年代を目指せ

――最後に、小栗さんは中国で通算12年滞在されたと聞いておりますが、明日で本帰国する今、今後の両国の経済・貿易関係に寄せる期待をお聞かせください。

 国際社会では不安定な状況が続く中、私自身としてはここから10年、つまり2020年代はまた日中関係の黄金時代になるのかなと期待しております。私自身もその中でそうした役割を果たしていければと思っております。

 日中は今は対等なパートナーで、一衣帯水の関係にあります。GDP規模が世界2位と3位を占めているこの二つの国がうまく経済を発展していくことで、世界の発展につながる重要な役割を担っていると思います。対等なパートナーシップを組みながら、日中の企業または国民が、互いに良く知りながら、ともに発展することを目指していく2020年代になればと願っております。

【プロフィール】

小栗 道明(おぐり みちあき)さん

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 1994年に日本貿易振興機構(JETRO)に入構。JETRO北京事務所(1999~2004年)、広州事務所(2004~2006年)、本部企画部海外地域戦略主幹(北東アジア)などを経て、2015年から2020年8月半ばまで、同機構上海事務所所長。8月13日に任期満了に伴い本帰国。現在は東京勤務。

【リンク】

 経済社会活動の再開、上海で実感したこと~元JETRO上海事務所・小栗道明所長に聞く(上)

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