経済社会活動の再開、上海で実感したこと~元JETRO上海事務所・小栗道明所長に聞く(上)

2020-08-18 20:56  CRI

 

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 聞き手:王小燕

 ウィズ・コロナの時代、中国における社会経済活動再開の様子はどこまで進み、中でも日系企業の生産回復の進捗状況はどうなっているのか。今週と来週はこの8月中旬まで日本貿易振興機構(JETRO)上海事務所首席代表を務めていた小栗道明さんにお話を伺います。

 

コロナ前に戻りつつある上海

――上海はここのところ、オフラインでの映画祭や展示会など大型行事が相次いで開催されています。小栗さんが上海で暮らしながら実感したことは?

 中国各地で状況が少しずつ異なると思いますが、上海については、国内での感染は早期に収束したこともあり、比較的早くから経済社会活動が再開しました。6月から様々なイベントなどが開催され、7月以降、防疫対策をしっかり採りながら、展示会も昨年と変わらないように行われるようになりました。

 先日、「チャイナ・ジョイ」というゲームやコンテンツ関連の大型展示会が上海で開かれました。会場を訪れた同僚の話では、昨年と変わらない多くの若者で、活気ある賑わいを見せていたそうです。また、「報復式消費」といって、それまで我慢していた買い物が一気に爆発したような活気です。

 上海の有名な観光地である外灘(バンド)を私はコロナ期間中に訪れましたが、人っ子一人いない閑散とした様子でした。しかし、最近では多くの観光客で賑わうようになっています。「ナイトタイム・エコノミー」という夜の商業経済が活発になり、生活感覚としてはコロナ前の生活に戻ったような感じになっています。

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7月31日~8月3日に上海で開かれた第18回中国国際デジタル互動娯楽展覧会(2020China Joy)の会場
(写真:新華社 7月31日撮影)

――新型コロナが起きた後、しばらく出張もせずに上海市内にとどまっていた小栗さんは5月半ば頃から、出張するようになったと聞きましたが……

 はい。5月半ばに江蘇省の省都・南京市と浙江省の省都・杭州市をそれぞれ訪問しました。華東地域では、コロナの状況が安定した中、コロナの期間中、上海政府も含めて、江蘇省政府、浙江省政府が日系企業に対して多大なるサポートをしてくれました。それに対する感謝と日系企業が抱えている現状の報告を兼ねて訪問し、政府の方々と意見交換をしました。

 ちなみに、華東地域全体は非常に日系企業が集積している地域で、その数は2万社ぐらいに上るとも言われています。業種と規模もありとあらゆるものがあり、分野も自動車関連産業からヘルスケア、半導体、サービス業、小売業など多岐にわたっています。

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観光客が戻りつつある上海の南京路・外灘(バンド)
(写真:新華社 7月23日撮影)

順調に進む「復工復産」、57月期は「絶好調」の企業も

――地元政府のサポートといいますと、小栗さんが特に印象に残ったことは?

 まずは、日本人を含む外国人は中国人と変わらないように安全を確保し、「復工復産(企業活動の再開)」に関しても、内外差別なく、日系企業も順調に再開できるように、丁寧に取り組んできたことが印象的でした。また、地方政府が日本語での発信も含めて、様々なサポートをしていました。

 実際に企業の方々に聞いた話では、まだ感染拡大が懸念されていた中、マスク、消毒液といった防疫用品の確保を地元政府がサポートしてくれたこともあり、また、製造現場では地方にいるワーカーの皆さんが戻って来られない時、市政府が特別にバスを手配したりして、支援していただくこともありました。ここ数ヶ月は、日本に戻った駐在員が戻って来られない状況が続いていますが、この中では、たとえば、江蘇省常熟市政府がチャーター便を日本から手配した例もありました。各段階において日本企業の復工復産を丁寧に支援していただいていると感じています。

――ところで、華東地域の日系企業の生産再開の現状はどうなっていますか。

 現状はまさに元通りに戻ったというか、5月、6月、7月は前年比でプラスになっているといった声を多く聞くようになっています。

 華東地域では、中国国内で順調に生産が回復、発展しているところに関係する日本企業も少なくないですが、こういった企業と最近話していると、「むしろ絶好調です」とさえ聞きます。元を上回るような状況になっている企業も少なくなく、足下は非常に良い状況だと思います。

――そうした流れの中で、むしろ改善してほしいといった点について、どのような声がありますか。

 人員の往来を何とかしてほしいという声がありますね。日本に戻った駐在員が戻って来られないとか、新規に赴任する予定の駐在員が中国に入れないとか、一緒に来ている家族が離れ離れの状態を余儀なくされていて、お父さん、お母さんがそれぞれストレスを抱えているので、家族を呼び戻すといったようなところですね。

 ただ、こういった点も上海市をはじめ、6月下旬以降にインビテーションの発給が早まり、ずいぶん改善されています。

 

いち早く回復した中国市場で今後も業績伸ばしたい

――コロナ禍の影響を一時期大きく受けていた華東地域の日系企業ですが、中国市場の今と今後をどう展望していますか。

 他の地域に比べれば、華東地域の日系企業は中国国内の市場に製品を販売したり、サービスを提供したりする企業が比較的に多いものですから、コロナの影響を受けて、サプライチェーンを変更するといった企業があまり多く見られないのが現状です。

 4~5月に行ったアンケート調査の結果でも、9割以上の企業が特にサプライチェーンの変更を考えていないという回答をしていますし、むしろ中国の中でサプライチェーンを完結させるようなことも含めて、中国の国内市場を重視するといった姿勢はまったく変わっていません。

 最近、日系企業との意見交換の中で、世界経済の先が見通せない中で、中国がいち早く経済を回復してきているので、今後も中国での業績を伸ばしたいという、むしろ期待のほうが大きくなっている状況だと思っています。

――中米摩擦の影響が中国進出の日系企業にどう出ていきそうですか?

 サプライチェーンのこともありますが、摩擦によって今後の中国経済の成長や自社のビジネスモデルはどうなっていくのかを心配していることは確かです。

 中には早くから業績が良くなく、今後も中国でのビジネスの発展が難しいという判断で中国から撤退する企業もありました。ただし、多くの企業が中国の内需が今後も拡大することに期待しています。中国の産業レベルや国民生活が上がる中で、日本製品やサービスに対するニーズも大きくなるという期待もあり、さらに市場拡大を目指すという動きが強くあるのも事実です。こういう企業はむしろ、中国のマーケットをいかにつかんで行くかという前向きの姿勢になっていると思います。

(つづく)

【プロフィール】

華東地域の日系企業、「復工復産」の今~元JETRO上海事務所・小栗道明所長に聞く(上)_fororder_oguri

小栗 道明(おぐり みちあき)さん

 1994年に日本貿易振興機構(JETRO)に入構。JETRO北京事務所(1999~2004年)、広州事務所(2004~2006年)、本部企画部海外地域戦略主幹(北東アジア)などを経て、2015年から2020年8月半ばまで、同機構上海事務所所長。8月13日に任期満了に伴い本帰国。現在は東京勤務。

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