北京
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全世界でダウンロード数20億回超のアプリ・ティックトック(TikTok)がインドで禁止されたことに続いて、米国でも禁止される話が出ている。トランプ大統領は当初、運営会社のバイトダンス(ByteDance、中国名:字節跳動)に所有権の売却を要求した。これを受けてマイクロソフトが買収に向けた交渉を行ったが、トランプ大統領は発言を翻し、ティックトックの米国事業自体を禁止する方針を明らかにした。結果、買収交渉は中断されている。
15秒の日常を記録するだけの短編映像アプリが、なぜこれほど警戒されるのか。主に2つが原因として挙げられた。一つは、個人情報漏洩の懸念だ。アプリへの登録には個人情報の入力が必要で、撮影時には位置情報などが収集される。しかし、これはツイッターやフェイスブックなど、米国製を含む多くのSNSアプリも大差ない。二つ目は、端末のクリップボードの内容を許可なく読み取るという「スパイウェア疑惑」だが、これもティックトックに限らず、米国製のリンクトイン(Linkedin)、レディット(Reddit)のアプリも同様だった。今回の規制の根本的な原因は、あくまで「中国製だから」という点に尽きるのだろう。
ティックトックは2020年1月に世界でダウンロード数1位のアプリとなった。ほかの上位アプリはほとんどが米国製だ。つまり、ティックトックの成功は、米国にとって金の成る木である各アプリやプラットフォームの脅威なのだ。なお、ティックトックが禁止されたインドには、フェイスブックの短編映像アプリが二度目の進出を果たしている。
バイトダンスのケビン・メイヤーCEOは声明文で「ソーシャルメディア業界全体が(プライバシーなどの問題で)監視されているが、ティックトックは出自が中国であることから特に厳しい目で見られている」と明かした一方、「米国内に透明性と説明責任を担保するセンターを設立し、率先して自社サービスのアルゴリズムを規制当局に開示していく」とも伝えた。その上での禁止とあれば、これは明らかな「差別」だ。
中国には「樹欲静而風不止(物事は思い通りにならないもの)」という言葉があり、その心持ちでいる者は多い。だが成功への純粋な願いを抱いて海外進出を果たしたにも関わらず、「中国製だから」という政治的な理由で自慢の商品を規制される――このような仕打ちは、企業側の悔しさを思うと居た堪れない。何より、ティックトックの米国内ユーザーは1億を超えている。その中にはティックトックを通じてビジネスで成功した者もいる。短絡的な規制が米国民の生活までをも脅かさないことを願うばかりだ。
(CRI日本語部論説員)