北京
PM2.577
23/19
米ミネソタ州で白人警官による黒人暴行死事件が起こってから一週間以上が過ぎた。この事件が引き金となった抗議デモは今、全米140都市に広がり、逮捕者は5000人を超えた。事態の深刻化の原因は複雑であるが、その根源にあるのはトランプ大統領をはじめとした現政権の独善的思考にほかならない。
「アメリカファースト」を合言葉に発足したトランプ政権はこれまでに、一方的な理由で世界保健機関(WHO)を含む国際機関から相次いで脱退を宣言してきた。米国自身を含む世界の国々が、戦後に長い時間をかけて築き上げてきたグローバルガバナンスが、深刻な局面を迎えている。そのうえ米国は「デカップリング」(切り離し)を唱え出し、経済・貿易などの面での中国の切り離しを多くの国々に呼びかけ、国際社会の分断を企図している。
自己中心的に分断を煽るその姿勢は、米国内の問題へのトランプ政権の対応にも貫かれている。トランプ氏はデモを極左グループのテロと称し、鎮圧には連邦軍の出動まで辞さないと発言したことで、却って暴力を煽り立てたとも評されている。
昨年6月に香港で起きた暴力事件の様子を、ペロシ米下院議長は「美しい風景」などと称えていた。今、とても美しいとは思えない同じ風景が米国内に広がっている。ニューヨーク市のデブラシオ市長は「トランプ政権発足後、緊張と憎しみの雰囲気が日増しに濃くなっている」と指摘し、大統領こそが暴力の「共犯者」と明言した。客観的に見れば、米政府がこれまで感染症対策を怠ってきたことが、多くの人命を危険にさらし、経済や暮らしにも深刻なダメージを与えている。先行きへの強い不安が呼び起こした共鳴が、デモ拡大につながった面は否めないだろう。現に、感染症がまだ収束していない中での大規模なデモが、感染の急拡大につながる危険性も指摘されている。国際的な公衆衛生の視点からも看過できる事態ではない。
トランプ政権はいつまで自身の過ちを認めず、問題解決に取り組むよりも外国への責任転嫁を優先し続けるのだろう。これでは、国内からは民衆の強烈な怒りを、国際社会からは不信と反発を、さらに招くだけだ。今こそ、トランプ大統領とその政権が問題の本質に冷静に向き合って、独善的な思考を捨て、自国民や国際社会に対して果たすべき米政府の責任を示す時ではないか。(CRI日本語論説員)