ボランティア翻訳者孟華川さん、楊明月さんに聞く

2020-04-22 16:08  CRI

小さな弱い力でも架け橋を目指して頑張りたい

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(左)孟華川さん(右)楊明月さん

 「中国で新型コロナウイルスの感染が拡大した時、日本の皆さんからたくさんの支援や温かい言葉がかけられました。それが今では、日本国内でも感染者が増え続け、医療関係者とのメールから不安が伝わってきます。こんな中、日本語専攻の自分、日本留学経験者の自分たちにはいったい何ができるのでしょうか」

 2月初め、日本国内で感染者がじわじわと増えていた中、このような悩みを抱えていた二人の若者がいました。

 中日友好病院で日本との医学交流の窓口を担当し、日本政府の奨学金制度で早稲田大学での留学経験もある孟華川さんと、中日間の医療交流サービスを手がける企業「北京華益日盛」の経営者である楊明月さんです。

 二人は大学院時代の同級生で、同じクラスで学び、同じ寮の部屋で寝起きを共にした仲。いずれも大学院では日本語を専攻し、卒業後は中国と日本との医学交流や人的交流の現場で仕事をしています。親友の二人は悩みも同じで、その上、思いついた解決策までも。

 「中国の医療現場の経験を何とか日本サイドに伝えることはできないのか」

 「そうだ!中国で公開されている『新型コロナウイルス肺炎診療ガイドライン』の資料集を日本語に翻訳して届けよう。一緒にやろう」

 電話で話し合った二人は、即座に波長が合いました。その時、中国では新型コロナウイルス感染症の治療経験を総括した資料集『新型コロナウイルス肺炎診療ガイドライン』が、試行第6版まで更新されていました。まずはこの第6版の翻訳からという話になりました。

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3月4日に公表した『新型コロナウイルス肺炎診療ガイドライン』の表紙

 「みんなの力を結集しよう」

 すぐに始めた行動は、中日医学翻訳ボランティアチームの結成でした。2011年に北京第二外国語大学日本語専攻を卒業した二人は、出身大学の先輩や後輩に声をかけてみたところ、「だれもやる気満々。結局みな私たちと同じ思いでいることが分かりました」。それ以外にも、北京大学医学部や中国各地の中医薬大学で学ぶ日本人留学生と卒業生、ベネッセグループ中国事業部の関係者や楊さんが率いる「北京華益日盛」社の社員が参加し、メンバーは最初の7人から今は20人を超えています。北京、南京、東京などからインターネットを通しての連携作業です。中でも、中国の医師資格を持つ南京中医薬大学博士課程在学中の吉川淳子さんをはじめとする日本人留学生と社会人が加わったことで、翻訳の質の向上に大きな役割を果たしたと、二人は感謝の気持ちでいっぱいです。

 「新型コロナウイルスと闘う日本の皆さんに、中国の最新の医療経験を直接伝えたい」――世界で新型コロナ騒ぎが続く中、中日医学翻訳ボランティアチームの皆さんはこの切なる思いを胸に、一心不乱に作業を続けました。最初の1冊は一週間ほどで翻訳と校正を終え、日本に送付することができました。

 届いたフィードバックには、資料提供への御礼に「日中が連携してウイルスと戦いましょう」という意志表明だけではありませんでした。「もっと知りたいことがある」というリクエストも相次ぎました。

 「中国では院内感染の対策をどう行っているのか」

 「重症・危篤患者の看護は?」

 「妊産婦などへのケアは?」

 「コロナ態勢の下で、実習医の受け入れと管理は?」……

 日本側の関心事項を受け、ボランティアチームはこれまでに相次いで、新型コロナウイルス肺炎診療ガイドライン(試行第6版、第7版)、「新型コロナウイルス肺炎重症・危篤患者看護基準」、「医療機関における新型コロナウイルス感染管理ガイドラインを翻訳して、日本医師会や70あまりの日本の主な大学病院や研究所と関連団体に提供してきました。

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 二人によりますと、ボランティア翻訳の作業は現在も続いています。今取り組んでいるのは、中国で電子ブックとして出版したばかりの『新型コロナウイルス肺炎防治精要』(監修:鐘南山、王辰、編集:瞿介明、曹彬、陳栄昌、上海交通大学出版社)。中国のトップレベルの専門家たちの知見が結集された本です。日本国内での正式出版を目がけて作業を続けている最中のようです。

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 また、資料の翻訳にとどまらず、日本国内の医療態勢がひっ迫する中、マスクなど医療物資の不足が起きていることを知った二人は、日本留学帰国組や身近なネットワークで呼びかけて、募金や物資を送る活動も展開中です。

 「医学に国境はない。残念ながらウイルスも同じです。新型コロナウイルスで人的交流が一部遮断されましたが、これをきっかけに、中国と日本は国だけでなく、病院や個人レベルでも連携を強めることができればと願っています。翻訳やメールのやり取りを通して、日本の皆さんと心がより近づいたと実感し、そうした気持ちが結果的に、コロナウイルスとの戦いに少しでも役に立てれば嬉しいです」、と孟さんは言います。

 一方、7人の社員を抱える楊さんの会社「北京華益日盛」はいま、日本との医学交流や人的な交流の業務は感染症の影響を受けたため、新しい事業の模索に努めています。しかし、「中日医療交流の架け橋」を目指す目標は変わらず、「小さな、弱い力とは知りつつ、両国の医療交流に少しでも貢献したい。中国と日本は、新型コロナウイルスとの戦いで結束し、交流再開の日が早く戻るよう心から祈念しています」と楊さんは期待をこめました。

(聞き手&文:王小燕)

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