北京
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日本のアニメ映画「千と千尋の神隠し」が6月下旬から中国で上映され、大ヒットしています。この映画の主題歌「いつも何度でも」の中国語バージョン「亲爱的旅人啊(愛しき旅人)」を歌うのは、実力派男性シンガーの周深で、優しく澄んだ歌声が映画の美しく幻想的なムードとミックスし、中国初公開にささげた贈り物とも言われています。そんな周深はまた「大魚・海棠(ビックフィッシュ)」、「白蛇:縁起(ホワイト・スネイク)」、「昨日青空(昨日の青空)」など中国のアニメ映画の主題歌も歌っており、「国産アニメシンガー」と呼ばれています。今回の中国メロディーは、そんな周深と彼が歌ったアニメ映画の主題歌をご紹介しましょう。
音楽の夢をあきらめず
周深は、独特な澄んだ歌声で知られています。音域も大変広く、地声とファルセットをうまく切り替え、独自の個性を打ち出しています。そんな歌声は、アニメ映画で独特のムードを醸し出すことができます。
今27歳の周深は、少年時代は背が低いことを大変気にしており、また声が女性のように高くて、クラスメートに「ニューハーフ」とからかわれていました。こうした偏見が心に傷を残してしまい、音楽が好きでありながら人前ではあまり歌を歌いたがりませんでした。高校を卒業して、学校の歌唱コンクールでグランプリに輝き、ようやく音楽への自信を持つようになります。その後、ウクライナの国立音楽院で歌唱法のベルカントを学び、本格的に音楽の道を歩み始めました。
天使にキスされた歌声
努力と才能を兼ね備えた周深は2014年に浙江省衛星テレビのオーディション番組「中国好声音(ザ・ ヴォイス・オブ・チャイナ)」でデビューしました。女性のようなハイトーンと男性のボリュームや迫力を兼ね備え、独特な魅力の歌声でした。「ほかの人とはまったく異なり、天使にキスされた清らかで澄んだものだ」との評判も寄せられました。
そして周深は2016年、24歳で第23回東方風雲榜(東方風雲ランキング)で最優秀新人賞に輝き、また、国産アニメ「大魚・海棠」の挿入歌「大魚」も大ヒットして、多くのテレビドラマや映画で挿入歌を歌うようになりました。
今年の1月に上映された国産アニメ「白蛇・縁起(ホワイト・スネイク)」の主題歌「縁起(縁の始まり)」も周深が歌ったものです。子供の声と女性の声の中間のような美しい歌声が、映画の中の東洋らしい水墨画のような風景とうまく交じり合って、白いヘビが化けた美女と、生身の男性との限りない恋を生き生きと表現しました。
映画を内容豊かにする歌声
周深は今、中国ポップス界の人気歌手ですが、その歌声については賛否両論があります。「透明感があって、本人の心と同じで澄んで美しい」と絶賛する声もありますが、一方で「あまりにも女っぽくて男性的なたくましさがない」という批判の声もあります。これに対して本人は「歌声は気にしないで、音楽自体を評価してほしい」とコメントしています。
そんな周深は、想いをすべて歌に込めて、内容豊かなものにしています。去年に上映された青春アニメ映画「昨日青空」の主題歌「来不及勇敢(その時)」をレコーディングした際、「映画の中で高校生の男女がひそかに思いを寄せますが、結局すれ違ってしまうことから、昔の自分を思い出します。特に、青と白の制服を見ると、すぐに高校時代を思い浮かべて、思わず涙が溢れます」じんわりとそう語りました。
番組の中でお送りした曲
1曲目 大魚(たいぎょ)
この歌は国産アニメ「大魚・海棠」の挿入歌で、周深のデビュー曲として知られています。
波は音もなく 深い闇夜に沈み
大空の果てまで覆ってゆく
大魚は夢の狭間を泳ぎ
眠るあなたの輪郭を見つめる
2曲目 縁起(縁の始まり)
この歌はアニメ「白蛇・縁起(ホワイトスネイク)」の主題歌です。
私はまるで小舟
行き着く先がない
千年の古いメロディー
夢に届いてきた
3曲目 来不及勇敢(その時)
この歌はアニメ映画「昨日青空(昨日の青空)」の主題歌です。映画は中国1990年代の純情な高校生の恋愛を描いたものです。
歌詞:
君の制服姿も
僕の日常から遠ざかってしまう
僕の夢は君にしか分からない
あの素晴らしきひととき