北京
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チベット族の風土民情を中国語で綴ったアルバム「阿姐鼓(姉の鼓)」。1995年、ワーナー・ブラザース・レコードにより、中国語アルバムとして初めて全世界でリリースされ、60カ国余りで合わせて200万枚のセールスを記録しました。歌手・朱哲琴のテンションのある歌声は、まるでチベット族の芸術ヒロインの魂が乗り移った妖精のように、広大で神秘的な大地へと誘うものです。今回の中国メロディーは、このアルバムについてご紹介しましょう。
アルバム「阿姐鼓」は、音楽ファンの間で定評のあるもので、制作から歌まですべて中国人が手掛け、中国を代表するアルバムの一つとして音楽ファンの人気を博しました。アイデアから制作まで、チベットを原点にしており、天と地の精神を称え、深い趣があるものです。
このアルバムのプロデューサーを務めた何訓田氏は、上海音楽学院の教授で、早くからチベット文化に大変興味を持ち、何回も現地を訪れて、長年にわたる積み重ねや創作を経て、1994年にようやくこのアルバムの曲作りを完成させました。また1992年、当時わずか24歳だった若手歌手・朱哲琴にアルバムの曲を歌うよう依頼します。ベストなメロディーや最高の演出を求めて、スタッフは700日あまりにわたりチベット自治区や四川省などをくまなく歩きました。
アルバムは7曲が収録され、内容から制作まで非常に優れたもので、聞き飽きることの無いものと絶賛されました。中でも2曲目の「阿姐鼓」は、メロディーラインが豊かで、落ち着いた歌声とインパクトあるドラムのコントラストで、厳しい環境の高原で暮らすチベット民族の人々が自然に任せた心境を表しました。
歌声で優しく温かい幸せを届ける
アルバム「阿姐鼓」は、1995年に世界60ヵ国で同時リリースされ、命の源を求めるような朱哲琴の澄んだ美しい歌声に、多くの人が心を打たれました。
このレコーディングは1994年夏、朱哲琴が26歳の時にチベットで行われました。ある日の深夜、彼女は1人でポタラ宮の麓に来て、月と星に照らされた宮殿を眺めます。そして明け方の4時ごろからリンリンとした音を耳にします。それは葬儀に向かう馬車が通り過ぎる音で、死者の冥福を祈る音も入り混じっています。その後ポタラ宮を離れ、チベット族の民家を通りかかった時、母親が赤ちゃんの体にバターを塗りつけている光景を目にしました。朱哲琴は朝の光を浴びて母に抱かれた赤ちゃんを見て、「死ぬ時は生まれた時と同じ、温かなひとときだ」と感じました。
そして、チベットから戻った朱哲琴は、考えや悟りを歌の中に溶け込ませ、歌声とともに優しく温かい幸せを届けます。
音楽で心の理想郷を探す
アルバム「阿姐鼓」は1995年に全米レコーディング協会の「オーソドックス・レコード賞」を受賞しました。そして、香港の新聞「アジア週刊」は、アルバム「阿姐鼓」について、「中国で新しい音楽が誕生した」と評価しました。
アルバムのプロデューサーを務めた何訓田教授は、「私たちがチベットを訪れるのは、チベットを探すためではなく、自分自身を探すためだ。空しい現代人が探すのは、想像中の理想郷であるユートビアであると思う」と話ししました。
そして、アルバムを歌った朱哲琴は「ポタラ宮の麓の村では一晩中バターランプが灯され、どの家でも風鈴の音が聞こえる。月夜に光る数多くのバターランプで、言葉にできない喜びが満ち溢れる。こんな温かさを世界中に伝えたい」と言いました。
番組の中でお送りした曲
1曲目 阿姐鼓(姉の鼓)
歌詞:
姉は幼い頃から口が利けない
私が物心ついた年に家を出た
それから毎日毎日会いたくて
姉さん
あの時と同じ年になって
不意に分かったの
それから毎日毎日探してる
姉さん
マニ坂に座るお年寄り
独り言を繰り返す
オン マニ パドメ フーン
オン マニ パドメ フーン
2曲目 天唱(天の歌)
歌詞:
死ぬ時は生まれた時と同じ 温かなひととき
夕焼けはあかつきと同じ 太陽の輝き
命を迎える時
命を送る時
風は歳月を吹き散らし
鷹に捧げ
雲が体を抱き上げ
大空に送っていく
3曲目 卓玛的卓玛(チョマのチョマ)
歌詞:
チョマ チョマ
母さん 私を「チョマ」と呼んで
母さんを「チョマ」と呼んであげる
チョマ チョマ