北京
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5月10日の講演会で発言する瀬口清之氏(撮影:CRI東京特派員 周莉)
日本キヤノングローバル戦略研究所(CIGS)の瀬口清之研究主幹は10日、東京都内で外国特派員向け講演会を開催し、中国のマクロ経済情勢や、中米貿易摩擦の影響、中日関係などについて語った。
瀬口氏は中国のマクロ経済情勢を分析し、「2017年の第1四半期から2018年の第2四半期まで、中国経済は全体的に安定を保ちつつ好転する傾向を見せ、1949年の新中国成立以来最も安定した状態を維持していた。また、2018年の第3四半期からは、安定を維持しつつ前進する方針へと移行し、安定から緩やかな減速へと転じた」とした上で、2020年のGDP成長率が6.0%を実現できれば、2020年に実質GDPを2010年比で倍増させるという長期成長率目標の達成はほぼ確実となると分析。さらに、「2020年の成長率目標はほぼ達成できる可能性が高まっているがゆえに、2020年までの最重点課題は改革の推進だ。その改革の中身は大きく分けて3つある。一つ目は金融リスクの防止、2つ目は貧困からの脱却、3つ目は環境改善だ」との指摘する。
瀬口氏は、中国政府による各種の景気刺激策の効果や増値税引き上げ前の駆け込み仕入れによる生産増など、様々な要素の影響を受け、2019年第1四半期、中国のGDP成長率は専門家の予測をはるかに上回る6.4%増となった他、企業経営者や消費者マインドの改善も見られたと分析、また、中米貿易摩擦により、輸出入とも伸び率が鈍化しているものの、サービス産業とネット販売を中心に好調な勢いを呈していることから、国内消費は堅調を維持しているとし、住民一人当たりの可処分所得の伸び率も安定的に推移、雇用や就職情勢は長期的な安定を維持し、中国経済発展のファンダメンタルズは堅実だとの見方を示した。
また、中米貿易摩擦については、「かつての日米貿易摩擦と大きく違う」と指摘する。「日米貿易摩擦の際、米国向けに輸出する企業の主体は日本企業だったが、中米貿易摩擦では、ダメージを受けたのは中国企業だけではなく、米国企業をも巻き込んでいる」との分析を示し、「日本の市場は世界でも有名な閉鎖的な市場で、GDPに占める外国の直接投資が非常に小さい。これは今でもその状態が続いている。ところが、中国の市場は日本よりはるかに開放的で、米国の多くの有力企業が中国のマーケットで大きな売上高をあげ、利益を得ており、米中両国の経済は明確にウィンウィン関係にある。この点はかつての日本と大きく異なっている。ウィンウィン関係にある時に、相手がダメージを受けるようなロスを与えれば、ウィンウィン関係はロスロス関係になってしまう」と危惧を述べた。
しかし、実際には、トランプ政権内の強硬派は、中国の経済成長を阻止し、中国が米国に追いつくことを阻むよう、様々な過激な主張をしている。これは中国と米国企業にダメージを与えるだけではなく、日本やヨーロッパにも悪影響を及ぼし、世界経済が深刻な長期的不況に突入する危険性すら孕んでいる。
瀬口氏は中日関係にも触れ、「最近、日中関係は改善傾向を見せている。両国関係は競争から協調へシフトし、第三国市場における協力で合意した」とし、第三国市場協力のあり方について、「日本は明治維新以来、欧米との関係を深めてきた。欧米諸国の社会制度や政治・経済制度を深く理解している。今後、中国がアジアのみならず、ヨーロッパや米国、アフリカ、オセアニアでも日本はアドバイザーとして協力できる。こういうワールドワイドな日中の協力が私が思い描く第三国市場協力だ」と提案した。
瀬口氏は最後に、「中国の発展は日本の発展、日本の発展は中国の発展」と中日関係の重要性を改めて強調し、講演を締めくくった。(ZHL、む)