北京
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初夏を迎えて、桃の花や杏、梨の花などが相次いで盛りを過ぎゆく中、北京の街角や伝統的な民家の四合院で広く植えられているエンジュの木が、小さく目立ない花を咲かせます。その優雅な香りはすがすがしい気持ちにさせてくれます。今週の中国メロディーは、そんなエンジュにかかわる音楽をお届けしましょう。
北京四合院の中のエンジュ
北京市の中心部に点在する、下町風の庶民の住宅街「胡同(フートン)」に足を運びますと、伝統的な民家である四合院で、玄関の前や庭に広く植えられているエンジュの木が強く印象に残ることと思います。夏になると、大きく茂ったエンジュの木の下で、涼みながら将棋をさしたり、お茶を飲んだり、時には木陰で居眠りをしたりする人もいます。また、やんちゃな男の子はエンジュの木によじ登り、セミや鳥を捕ったりします。そんなエンジュは、昔から縁起のいい木とされています。「門前一棵槐,不是招宝就是進財(玄関前のエンジュは財宝を招き入れる)」という諺があるほどで、北京の伝統文化の一部とも見られています。
エンジュの花の恋歌
4月の下旬から5月の初め、モクレンや桃の花、海棠などは枯れてしまいますが、一方で、木の枝から垂れ下がったエンジュは白い花をふさふさとたくさん咲かせています。そよ風が吹くと、柔らかく甘い香りが静かで落ち着いた気分にさせてくれます。
中国では、エンジュの花が出てくる歌はほとんど恋の歌です。エンジュの独特な甘い香りが恋の匂いとよく似ているからでしょうか。その中でも特に有名なのは、四川省の民謡「槐花幾時開(エンジュはいつ咲く)」です。この歌の歌詞は短く、「高い山にエンジュの木、手をついて人を待ち望む。母親が何を見ているか聞き、娘はあのエンジュが咲くのを待っていると言う」といった内容です。わずか二言三言の歌詞ですが、恋に悩む農家の少女の恥じらいやとっさの言葉を生き生きと表現しています。この民謡は、2004年に開かれた第11回全国青年歌手コンクールで、雷佳という歌手が鮮やかな表現で見事に歌い上げ、フォークソング部門で金賞を獲得しました。
「広場ダンス」のラブソング~槐花香(エンジュの花の匂い)~
「エンジュの花」と言いますと、中国で40代や50代の人は、あの「槐花香(エンジュの花の匂い)」という曲を思い出すかもしれません。この曲は、1995年に謝軍という歌手が歌って大ヒットし、今はカラオケの定番曲となっています。
中国では、公園や広場で音楽に合わせて年配の女性がダンスをする光景がしばしば見られます。これは「広場ダンス」と言います。そして、この謝軍の「槐花香(エンジュの花の匂い)」が特に人気があるそうです。朝早く、そして夕方、公園で広場ダンスを見た折には、ぜひこのフォークバージョンの踊りをお楽しみください。
番組の中でお送りした曲
1曲目 槐花(エンジュの花)
歌詞:
エンジュの花は甘くいい香り
エンジュは三月に咲く
三月は花が咲き乱れるが
エンジュにかなうものはない
2曲目 槐花幾時開(エンジュはいつ咲く)
この民謡は、2004年に開かれた第11回全国青年歌手コンクールで、雷佳という歌手が鮮やかな表現で見事に歌い上げ、フォークソング部門で金賞を獲得しました。
歌詞:
高い山にエンジュの木、
手をついて人を待ち望む。
母親が何を見ているか聞き、
娘はあのエンジュが咲くのを待っていると言う
3曲目 槐花香(エンジュの花の匂い)
歌詞:
そしてまたエンジュの香りが漂う
あの人は今どこにいる
エンジュの香りが漂う季節
あのぬくもりの夜を思い出す
恋人のエンジュのリング
香りが心に漂う
心に愛が溢れる
花より甘いもの