日中間の交流の活性化に貢献したい~富山県の石井隆一知事に聞く

2019-04-30 21:27  CRI

聞き手:王小燕

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 「日本の自治体職員在中国 加油!」シリーズ69回目、今回は先週、出張で北京にお見えの富山県の石井隆一知事にお話を伺います。

 知事就任後、今回で12回目の訪中となる石井知事。訪問の目的は第2回「一帯一路」国際協力サミットフォーラムの公式行事として開かれる「地方協力」分科会の出席に、北京で富山の伝統工芸をPRするイベントの開催です。

 訪中に寄せた期待や、富山ご当地の魅力をめぐりお話を伺いました。

■中国と直行便で結ばれている富山

ーー石井知事にとって、今回は何回目の中国訪問ですか。

 知事就任以来、今回で通算12回目になります。北京へは2014年10月以来、約4年ぶりで、今回で6回目の訪問になりました。

ーー富山からはどのようなルートで北京に入られたのですか。

 富山には「富山―大連便」が週3便運航されておりまして、今回は大連経由で北京に入りました。大連を経由して中国各地に移動できるので、とても便利ですね。

ーー今回の北京訪問を決めた理由は?

 今回は、中国人民対外友好協会、そして中日友好協会から招待状をいただき、4月25日から始まる“第2回「一帯一路」国際協力サミットフォーラム・地方協力分科会”に参加させていただくことになりまして、北京へまいりました。

 分科会では、私は「富山県と中国との経済・文化・観光交流」について発表を行います。また、「一帯一路」に関連する各国の重要都市や省の幹部などもいらっしゃると伺っておりますので、今後の交流の拡大等について、意見交換をさせていただきたいと考えております。

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第2回「一帯一路」国際協力サミットフォーラム・地方協力分科会で講演中の石井知事

■伝統工芸に演劇とアート…幅広く交流したい

ーー今回は、石井知事の来訪に合わせて、「とやま伝統工芸PR展示会in北京」も開催されているようですね。

 本県では、これまで欧米中心に伝統工芸PR展示会等を開催してきたところであり、富山県の伝統工芸は、パリやミラノ、ニューヨークでも非常に高いご評価をいただいております。近年、中国においても日本の伝統工芸品の人気が高まってきており、昨年8月には遼寧省瀋陽で県産品セミナーを開催したところ、大変好評でした。今回、北京に来ましたので、いよいよこの首都北京においても伝統工芸PR展示会及び交流会を開催し、大いにPRすることとしました。

 展示会は4月21~25日、北京の798芸術区にある上座家具798店において、7つの産地21社約120点の富山県を代表する、能作、モメンタムファクトリーオリイ、四津川製作所、天野漆器さんなどの伝統工芸品を展示しているほか、富山県の新進気鋭の若手の職人にもご参加いただき、高岡銅器職人の折井氏による銅器の着色や高岡漆器職人の武蔵川氏の螺鈿細工の実演、ワークショップも開催していただきました。

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「とやま伝統工芸PR展示会in北京」、会場の様子

ーー知事の公式プロフィールによりますと、「演劇・音楽鑑賞」が趣味のようですが、演劇で結ばれる富山と中国との交流に対して、今、どのような動きが注目されていますか。

 今年の8月23日~9月23日、富山県の南砺市利賀、そして黒部市において「シアター・オリンピックス」という演劇祭が開催されます。これは1993年に創設された国際的な舞台芸術の祭典で、2014年には北京でも開催されました。今年は、「シアター・オリンピックス国際委員」である鈴木忠志氏が芸術監督となります。また、今回のシアター・オリンピックスは、日本とロシア(サンクトペテルブルグ市)で共同開催することとなり、祭典史上初の2か国共同開催となります。中国からの作品も上演される予定です。シアター・オリンピックス国際委員リュー・リービン氏演出「天と地の間の生」、ワン・シャオイン氏演出「蘭陵王」の2作品です。この「シアター・オリンピックス」の動きにぜひ注目してほしいですね。

ーーアート関連で、富山県美術館が最近大変話題になっているようですね。

 富山県美術館は、アートとデザインをつなぐ美術館として、一昨年3月26日に開館しました。建物は公園に向かって大きく開かれ、立山連峰の美しい眺めが楽しめます。また、屋上には公園を整備しており、擬音語・擬態語を表す「オノマトペ」から発想したオリジナルの遊具もあります。

 これまでに、208万人を超える方々に来館いただきました。斬新な建築や企画展、収蔵品の質・量が高い評価を受け、全国的にも注目され、県外からも多くの方にお越しいただいており、大変うれしく思っています。

■石井知事が語る富山の魅力

ーー石井知事は富山生まれの富山育ちのようですが、故郷の誇れるものについて、ご紹介お願いいたします。

 富山県には、①世界的な山岳景観を誇る立山黒部アルペンルートや日本一のV字峡である黒部峡谷といった美しく雄大な自然、②世界遺産の五箇山合掌造り集落をはじめとする多彩な歴史・文化、③ユネスコが支援する「世界で最も美しい湾クラブ」への加盟が承認された富山湾など、四季を通じて魅力ある観光資源が豊富にあります。

 立山黒部アルペンルートや世界遺産の五箇山合掌造りは「ミシュラングリーンガイド」でも高く評価されており、ぜひ、中国の方々にお越しいただきたいと思っています。

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富山の海岸

ーー食も、富山の誇れるもののようですね。

 本県は、富山湾や立山連峰などの大自然が育む、海の幸・山の幸に恵まれています。

 特に、日本海の魚、約800種中、500種が生息する富山湾は魚の宝庫で「天然の生け簀」と呼ばれています。春のホタルイカ、夏のシロエビ、秋のベニズワイガニ、冬のブリなど季節ごとに様々な魚を味わうことができ、新鮮な魚と美味いお米で握られた「富山湾鮨」は、県を代表する食の魅力です。

 また、ミシュランガイド「富山・石川」版では、富山には北陸で唯一の三ツ星の店舗があるほか、富山県内の94の飲食店、レストランが掲載され、世界基準でも高い評価を受けています。

ーー富山産米は最近、中国でも食べられるようになったと聞ききましたが…

 農産物では、2017年から中国へ富山県産コシヒカリが輸出され始めたほか、パックご飯も輸出されており、中国でも美味しい富山米を食べていただけるようになりました。そうした中、本県が長年かけて開発した富山米新品種「富富富」が、昨年秋に本格デビューしました。「富富富」は高温の夏でも高品質、病気に強く農薬が節減できるなどの特徴があり、日本の消費者からは、「香りが良い」、「甘くて美味しい」、「冷めても美味しい」など、高い評価をいただいています。

 また、富山には、名水の湧き水や北アルプスからのきれいな水を仕込みに使用した美味しい日本酒の地酒もありますので、中国の皆さんに是非味わってほしいと思っています。

■日本屈指の「ものづくり県」、国際見本市も

ーー富山は古くから工芸の栄える県として知られていますが、ものづくりの伝統が今もしっかり生かされているようですね。

 富山県は、低廉な電力や豊富な水、勤勉で質の高い労働力などに支えられ、電子部品や自動車部品、機械、金属など幅広い分野で、オンリーワンの高度技術を有する企業が多く、日本海側屈指の「ものづくり県」となっています。

 本県の医薬品産業は、300年以上の歴史と伝統を有し、本県発展の礎を築いてきた基幹産業の一つで、「くすりの富山」として全国に知られております。2016年の医薬品生産金額は、都道府県別で2年連続全国第1位となるなど、全国有数の医薬品生産拠点を形成しています。

 現在、富山県から中国へ298事業所110社の企業が進出をしており、活発なビジネス交流が行われています。YKKや不二越、コマツNTCなどが進出しています。

 また、本県の優れたものづくり技術や製品を国内外に発信し、県内企業の販路開拓を図るため、2年に1回、「富山県ものづくり総合見本市」という地方都市では最大規模の国際見本市を開催しています。前回は、2017年10月26日から3日間、富山産業展示館(テクノホール)新展示場のオープニングイベントとして開催し、中国国内からは103社・団体に出展いただきました。

 次回の見本市は2019年10月31日(木)~11月2日(土)に開催することとしており、中国から多くの企業に、参加いただきたいと考えております。

ーー最後に、富山県と中国との地方交流に寄せる期待をお聞かせください。

 富山県は、日中友好にその生涯を捧げられた故松村謙三先生のふるさとであり、遼寧省、雲南省、上海市など中国との交流を早くから積み重ねております。特に遼寧省とは、今年度で、友好交流協定書締結35周年を迎えることとなりました。富山県は私が知事になりましてからも、遼寧省とは地道に経済、文化、観光、環境協力など幅広い分野での交流・協力を展開してまいりました。

 これからも、今までの中国との交流の実績を財産としながら、各分野での交流を継続、発展し、日中間の交流の活性化につながるよう貢献してまいりたいと考えております。

(写真提供:富山県)

【プロフィール】

 石井隆一(いしい・たかかず)さん

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 1945年12月生まれで、富山県富山市出身、1969年に東京大学卒業後、自治省、現在の総務省に入省。静岡県総務部長をはじめ、総務省自治税務局長、消防庁長官などを経て、2004年11月に、富山県知事に当選。現在、知事4期目です。また、全国知事会地方税財政常任委員会委員長なども歴任。

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  この番組をお聞きになってのご意見やご感想をぜひお聞かせください。メールアドレスはnihao2180@cri.com.cn、お手紙は【郵便番号100040 中国北京市石景山路甲16号中国国際放送局日本語部】もしくは【〒152-8691 東京都目黒郵便局私書箱78号 中国国際放送局東京支局】までにお願いいたします。皆さんからのメールやお便りをお待ちしております。

 

【お便りの抜粋】

<宮城県仙台市・秋葉浩之さん>石井知事は、北京で開催された地方協力分科会で富山県の様々な魅力を発表されたとのことですが、今日本の観光産業が力を入れているインバウンド(訪日観光客)の推進に向け自治体のトップが自ら発表するという、積極的な活動が心強いと思いました。中国と富山の航空便は大連便が週3便就航しているとのことですが、私が住む仙台と中国との便は北京から上海経由の仙台便が週2往復だけです。仙台と台北を結ぶ便が週16往復就航しているのとは余りに対照的です。宮城県もインバウンドには力を入れていますが、ポテンシャルの高い中国人観光客の誘致に向け中国と仙台を結ぶ航空便の増強が望まれるところです。  

<東京都・三輪徳尋さん>今日の一時間目は、二階幹事長からの誘いで、地方協力フォーラムに参加した滋賀、山梨、 高知の三県の知事のお話でしたが、2時間目で紹介された富山県知事や、岩手県知事など も地方協力フォーラム参加しているようで、それぞれの県では協定締結やイベントなどが行 われると公表されておりました。  地方自治体としては、観光振興、中小企業振興、農業振興の分野で海外への進出が必要 となっているとおもいますが、正直なところ、日本の都道府県は海外ではどこにあるかから始 めなくてはならないのではないでしょうか。シティセールスや地域のブランド確立なども日本 国内と同じとは、なかなかいかないものと思います。  都道府県レベルの地方自治体で作られた戦略的な国際化を所管する部署がようやく成果 を出し始めている段階なのではと感じています。しかしながら、市町村のレベルでは自治体職 員も不得意分野であるようですし、財政的にも国際化対応の部署が積極的に活動する自治 体が増えるにはまだ長い時間がかかりそうです。  第2回「一帯一路」国際協力サミットフォーラムで開催された、地方協力フォーラムはこの時間 で取り上げていただき、その成果を知ることができました。また、特に注視していた第1回「一帯一路」 企業家大会も、その成果を報じるニュースなどを読み、それぞれ盛会裏に終わられたことを拝察 いたしました。しばらく、関心の高い「一帯一路」関連の話題が届けられそうなので、 とても楽しみにしています。

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10月29日放送分
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