北京
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春は一年の始まりとして万物が蘇り、大地が生気に溢れる季節です。この季節は養生することが重要な時期とされています。中国メロディーでは二回に分けて、漢方の中の養生にまつわる音楽をご紹介します。
音楽は最良の治療師
中国古代には本当に優れた漢方医は鍼灸や漢方薬などを使わず、音楽で病気を治していたと言われています。1曲の音楽を聞かせるだけで、患者の病気を治すことができたそうです。漢方医のバイブルと呼ばれる『黄帝内経』は「五音療疾」つまり音楽療法という理論を掲げました。また、中国の歴史書『春秋左氏伝』には音楽が薬物と同じように味があり、様々な病気を治して、健康長寿を実現することが出来ると記されています。
古代の宮廷に響く宮廷の楽隊と歌手の音楽は貴族たちの娯楽のためだけではなく、心身を癒す効果もあるとされています。そのため音楽は最も優れた治療師とも言われています。
「五音療疾」という音楽療法
美しい音楽は心に浸み込みます。漢方医の心理学において、音楽は気分を紛らわせ、更に人の体に影響を与えます。一方、生理学において音楽による音波の振動は体の生理的振動つまり心拍数や呼吸などと同じだった場合には同一の振動を発することになります。これは『黄帝内経』が掲げた「五音療疾」という音楽療法の基礎理論だとされています。
『黄帝内経』は「天有五音、人有五臓、此人之與天相応也(天に五音有り、人に五藏有り、これは人が天に対応するものだ)」と書かれています。五音とは古代中国音楽で使われる音階を表す階名で、宮・商・角・緻・羽の五つの音を指します。五藏とは心臓・肝臓・ 肺臓・脾臓・腎臓を指します。
五行と音楽
中国古代の宇宙観「五行説」では、宇宙のすべての事物はすべて「木・火・土・金・水」という五種類の物質の運動と変化によって生成し、その中には人体も含まれています。そのため病気にかかることは人体の五行のバランスが崩れることが原因とされています。五行が対応する人体の臓器はそれぞれ金が肺臓、木が肝臓、水が腎臓、火が心臓、土が脾臓に対応します。例えば、肝臓が病気になった場合、人体の中に木の元素が欠けていること原因であるため、木に属する角の調の音楽で治療をすればよいということです。
心臓~五臓の君主~
心臓は五臓における君主に相当し、人の精神活動や血液の循環などを司り、臓器の中で最も重要な地位にあります。心臓が止まることなく脈打つ特性は五音の中の「緻」の調の音楽に属し、西洋音楽の「ソ」に相当します。そんな「緻」の調の音楽は軽快で明るく、ウキウキさせる音楽です。例えば、江南地方の民謡「紫竹調(紫竹の調べ)」はそのリラックスしたメロディーは心臓に優しく、午後9時から11時までの時間に楽しむのが一番いいとされています。
肝臓~将軍の官~
肝臓は「将軍の官」と呼ばれ、外敵から体を守るすべての思慮、はかりごとを司ります。しかし、長期にわたって、気が重い状態が続くと、気や血の流れは停滞して、気滞や鬱血を発生させてしまい、肝臓のエネルギーを損なうことになります。
そんな肝臓は五音の中の角の調の音楽に属し、西洋音楽の「ミ」に相当します。このミの調の曲は万物が蘇り、春の息吹に溢れ、五行の木の特性に属し、肝臓の養生に適します。例えば、漢の時代の才女・蔡文姫 が作った名曲「胡笳十八拍」は木に属する角の調の曲の中に水に属する羽の音楽を取り入れています。その優雅で滑らかなメロディーはまるで春雨が樹木を潤しているようです。
脾臓~倉稟の官~
脾臓は「倉稟の官」と呼ばれています。人体の機能を維持するエネルギーはほとんど脾臓と胃腸の消化と吸収を通じて人体の各組織へ運ばれます。飲み過ぎ、食べ過ぎ、考え過ぎなどは脾臓に負担をかけてしまいます。
脾臓は五音の中の宮の調の音楽に属し、西洋音楽の「ド」に相当します。ドの調の曲は抒情的で落ち着いたもので、五行の中の土のように重厚感があり、脾臓に優しいとされています。
中国古代の名曲「十面埋伏」は脾臓と胃腸の働きを活発にし、食べ物の消化と吸収を促進することができます。この曲は食事が終わった1時間後に楽しむのが一番いいとされています。
番組の中でお送りした曲
1曲目 紫竹調(紫竹の調べ)
この曲は江南地方の民謡を基にアレンジしたもので、そのリラックスしたメロディーは心臓に優しく、午後9時から11時までの時間に楽しむのが一番いいとされています。
2曲目 胡笳十八拍
この曲は漢の時代の才女・蔡文姫 が作ったもので、木に属する角の調の曲の中に水に属する羽の音楽を取り入れています。その優雅で滑らかなメロディーはまるで春雨が樹木を潤しているようです。
3曲目 十面埋伏
この曲は中国古代の名曲で、脾臓と胃腸の働きを活発にし、食べ物の消化と吸収を促進することができます。食事が終わった1時間後に楽しむのが一番いいとされています。