北京
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3月8日は国際女性デーです。中国においては、「女性デー」として全国各地でさまざまな記念式典や催しが開催されています。これにちなんで今回の中国メロディーは世界で唯一の女性だけの文字「女書」の物語とその文化をご紹介しましょう。
奥山に咲く野薔薇
みなさんご存知のように、この世界では人類は「男」と「女」に分けられ、動物と植物も「オス」と「メス」に分かれます。ところで文字に性別はあるでしょうか?実は世界には絶滅の危機に瀕しているものの女性専用の文字「女書」が存在しています。
女書は湖南省江永地方で女性同士の親友、姉妹、親子の間で代々伝わる古い文字で、その細長く菱形をイメージさせる形はとても滑らかかつ繊細で、まるで一匹一匹美しい魚人のように古代から泳いできて、女性たちの喜怒哀楽を訴えているようです。そんな女書は世界に残る唯一の女性専用の文字で、この文字はいつ、誰によって作られたかは今でも謎に包まれています。これらの不思議で美しい文字は扇子やハンカチ、帯など、女性のプライベートの持ち物に書かれていたもので、表記や吟唱、刺繍などの方式で女性間のみのコミュニケーションの手段として伝えられ、地元の女性たちの独自の精神の王国を作り上げました。
また、江永地方は漢民族とヤオ族が混ざり合って暮らしている地区で、歌と踊りが上手なヤオ族の影響を受けているため、女書の作品はほとんど七言句の韻文です。歌で創作し、歌で相手に伝え、歌って伝承するもので、「奥山に咲く野薔薇」と讃えられています。
代々伝わる女性の知恵
女書は山紫水明の湖南省江永地方に誕生しました。豊かな自然環境に恵まれ、地元の人々の暮らしは比較的豊かで、女性たちは古来より農作業をせず、自宅で「女紅」と呼ばれる針仕事をするのが一般的でした。「男尊女卑」思想の影響を受け、地元の女性は教育を受けることができませんでしたが、豊富な想像力をもって独自の女性文字「女書」を作り出しました。
女性たちはこの女性だけの文字で自身の暮らしぶりや波乱万丈の人生、あるいは自分の喜怒哀楽を訴え、民間に伝わる民謡や民話、さらに漢詩などを綴り、多彩な女性の精神の王国を創造しました。またこれらの女書は美しい旋律でアレンジされ、母から娘に授け、「どうやって娘になるのか?妻になるのか?母親になるのか?どうやって母性の優しさと力でこの男性が主導する社会を支えるのか?」など、そんな女書は母から娘に授け、また娘から自分の娘に伝えて、代々受け継がれています。
女書の魂〜愛と幸福〜
昔、女性が教育を受けることが許されなかった時代では、女性は弱く、無知なイメージが広がっていました。しかし、その時代の江永地方の女性はとても変わった魅力を見せました。知恵と勇気で綴られた女書は、ずっと女性たちの心の拠り所となっています。
データによると、女書の源と呼ばれる江永地方女書村は昔から長寿として知られ、その地域は中国でも最も貧困な地方ですが、女書で作られた豊かな精神文化は人々に愛と幸福を感じさせます。女書の作品の中では生活の苦難や涙を綴っていますが、芸術や音楽、それに麗しい生活への憧れこそが女書の魂と言えます。そんな女書があるからこそ、奥山に暮らし、あまり教育を受けていない女性たちは想像をはるかに超えた素晴らしい精神的世界を持つようになります。
そんな女書は「奥山に咲く野薔薇」と呼ばれ、この野薔薇は独特な芳しさと暖かさでいつまでも女性たちの心を癒していくことでしょう。
番組の中でお送りした曲
1曲目 瑶浴(ヤオ族の沐浴)
江永地方の女書合唱団「江永女書合唱団」が歌ったこの歌から「奥山に咲く野薔薇」と呼ばれる女書の独特な魅力を感じることができるかもしれません。
2曲目 訓女詞(娘を教える歌)
この歌は母親の娘への願いと娘の母親への思いを表しています。
3曲目 穿戴歌(身なりの歌)
この歌は女性が15歳で嫁ぐ時、姉妹たちが彼女に嫁入りの身支度をしながら、名残惜しそうに歌う歌です。
4曲目 姐妹書(姉妹の書)
この歌は湖南省出身の歌手・李雨児が女書をモチーフにしたアルバム「女書組歌」の一曲です。江永地方では気の合う女性同士が義理の姉妹関係を結ぶ「結拝姉妹」の風習があり、いったん姉妹になれば生涯を通して実の姉妹よりも親しい関係を持ち続けました。承諾した証として女書の文字で「姉妹の書」を作りました。この歌では義理の姉妹関係を結ぶ女性たちの気持ちを歌い上げました。
歌詞:
それは男性が分らない文章
女性しか分らない哀愁を綴る
そこは寒い夜に最も暖かいところ
千金にも換えられない姉妹よ
生涯を通して忘れられない