北京
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三月六日は二十四節気の一つ啓蟄です。この頃になると大地も暖かくなり、春の陽気に誘われて冬ごもりしていた土の中の虫たちが動き始めます。そんな啓蟄は更に三つの期間、初候・次候・末候に分けられ、初候の五日間は桃の花が咲き始める頃、次候の五日間はうぐいすが鳴き始める頃、末候の五日間は鷹がカッコウに姿を変える頃と言われています。今回の中国メロディーは啓蟄期間中の自然の移り変わりと各地の春のメロディーをご紹介しましょう。
初候~桃の花の季節~
啓蟄の初候は3月6日から10日までの期間で、この時期は桃の花の季節と呼ばれています。一冬の静寂を経て、春風が再び北方の大地に吹き渡り、蕾を膨らませ始めた桃の木は春雨の洗礼を沐浴して、桜色の笑顔を咲かせ始めます。
桃の花が咲くところでは鳥のさえずりもより美しくなり、そのかぐわしい香りが更に多くの蝶とミツバチをひきつけ、静寂した桃の林はにぎやかになります。花から花へ行ったり来たりする蜂と蝶は楽しそうに舞い、春の賛歌を歌います。初候の時期の大地は至る所で、このような美しい春の景色に彩られています。
次候~ウグイスが鳴く頃~
啓蟄の次候は3月10日から3月14日までの期間で、この時期、ウグイスは春の息吹を感じて、心地よいさえずりで伴侶を探します。
中国で最も古い詩集「詩経」ではウグイスは春を象徴するもので、結婚の隠喩ともされています。「詩経」の中には「倉庚于飛,熠耀其羽。之子于帰,皇駁其马(仲春の時にウグイスは鳴き始め、その羽根はなんと美しいことか。あの娘が嫁ぐ時、結婚式はなんと盛大なことか)」という詩句も残されています。
ところで、ウグイスはなぜ結婚の象徴なのでしょうか?ウグイスが鳴き始める時期は仲春に当たり、自然の陰陽の二つの気が合わさる時期で、この時期に結婚すれば、「順天時(天の時に従うもの)」と考えられています。また、ウグイスの習性は雄と雌の鳥が共に生活して共に飛び、鳴き声もとても耳に心地よいため、いずれも夫婦円満の象徴と見られています。
末候~カッコウが春を告げる~
啓蟄の末候は3月15日から19日までの時期で、大地は次第に深い眠りから蘇ってきます。虫や蛙などが鳴き始め、さまざまな花が咲き乱れて、大地は生気に溢れています。この時期に田畑で「カッコウ、カッコウ」とよく通る声が聞こえてきます。その鳴き声はまるで谷あいから届く春のこだまのようです。
中国では「畑の耕作はカッコウの鳴き声から始まるものだ」と言う言い方があります。この時期、夜明けに響くカッコウのさえずりは、農家たちに早く畑に行こうと促します。カッコウのさえずりに連れられて、農家たちは種まきや稲の苗の植え付け準備をするために耕し始めます。そして、作業に励む農家たちの汗は田畑に流れ、それと同時に豊作を願う麗しい希望も田畑に撒かれるのかも知れません。
番組の中でお送りした曲
1曲目 桃花紅杏花白(桃の花は赤く、杏の花は白い)
この歌は山西省の民謡を基にアレンジしたものです。
歌詞:
桃の花は赤く
杏の花は白い
野を越え山を越え
あなたを探す
ヒメユリの花が
真っ赤に咲いている
あなたと出会うのは
なんと幸せなことだろう
2曲目 之子于归(あの娘が嫁ぐ時に)
この歌のタイトルは「詩経」の中の「仓庚于飞,之子于归(仲春の時にウグイスは鳴き始め、あの娘が嫁ぐ時)」という詩句に由来しています。
歌詞:
歌は清らかで抑揚があるが
振り返ってみると一人ぼっち
君と生涯一緒になりたい
3曲目 斑鸠调(カッコウの調べ)
この歌は江西省の民謡で、お茶農家たちが茶摘みの時に歌うものです。
歌詞:
春にカッコウがさえずる
カッコウのさえずりは心地よく
君はそちらでさえずり 私はこちらで聞いている
「カッコウ カッコウ」と
鳴いているうちに桃の花が咲き
鳴いているうちに桃の花が笑う