北京
PM2.577
23/19
みなさんご存知のように、春節は中国の最も大切な祝日です。そんな春節への思い出は人によって違います。今回の中国メロディーは引き続き、名作家が描く春節の様子と音楽をご紹介しましょう。
魯迅の『祝福』~春節の喜びに悲劇を隠す
中国の偉大な文学者・魯迅は「中国近代文学の父」と言われています。その作品のテーマは封建社会と儒教の旧道徳を批判し、民衆の反抗意識を呼び覚ますものが多くあります。短編小説『祝福』は旧思想の迫害を受けた祥林嫂(シァン・リンサオ)の不遇の生涯を描いています。小説の冒頭部分では旧正月を祝う魯鎮の街の喜ばしい雰囲気を描きましたが、これは小説の主人公であるヒロイン・祥林嫂がこんなおめでたい雰囲気の中で雪の積もった地面に倒れて死んでしまったという悲劇的な物語をいっそう引き立てる伏線となっています。では、小説の冒頭部分をお楽しみください。
旧正月の年末は最も年末らしい時期で、村や街はもちろん、空もお正月の光景を見せている。夕方の薄い灰色の雲の中は時折、光を放ち、続いて大きな音が伝わってくる。それは「送神」、かまどの神様を送るために鳴らす爆竹の音。また、近くの爆竹の音はとても賑やかで、耳をつんざくような音がまだ消えていない内に火薬の匂いが漂ってきた。僕はこの夜に故郷の魯鎮に戻ってきた。
氷心の『子供時代の春節』~農村行事「花児会」
現代中国の女流作家、詩人の謝冰心は、1919年に五四運動に参加し、初期の作品では母の愛への賛美を多く描いています。1946年からは日本に滞在し、東京大学の講師を務めましたが、1951年に帰国し、それ以降は主に児童文学の分野で活躍しました。作品の中の人物はまるでスケッチで描かれたように、少ない言葉でもその人物のイメージが紙面に浮き上がってくるほどです。例えば、「童年的春节(子供時代の春節)」というエッセイでは、農村の旧正月ならではの行事「花児会」の場面は次のように描かれました。
春節の時に最も注目を浴びるのは各村からやってきた「花児会」という旧正月祝うパフォーマンス行列です。これらの行列の出演者はいずれも各村の農家たちで、パフォーマンは「踩高蹺」(竹馬踊り)、張り子の船の中で歌いながら練り歩く民間舞踊・「跑旱船」などの民俗芸能が行われ、行列の中にいる若い女性に扮した人はみな農家の若者で、厚化粧した彼らは銅鑼や太鼓などの伴奏の下、大勢の子供に取り囲まれ、行列して並び前進してきました。我が家のドアの前にやってくると、パフォーマンスを披露してくれて、そのユーモア溢れる歌はとても滑稽で、人を笑わせました。
沈従文が描く湖南省の春節~竜灯踊り
中国の現代作家・沈従文は、13歳で地方軍閥に身を投じ,辺境の各地を転々としました。作品のほとんどは故郷の湖南省西部を舞台にし、小説の代表作『辺城』は西南辺境のミャオ族の生活を抒情的かつ牧歌的に描き、湖南省西部の代表作家と呼ばれています。湖南省西部のお正月の行事について『忆湘西过年(湖南西部のお正月を回想する)』という随筆では、故郷のお正月の様子と春節の出し物・灯篭を次のように語りました。
故郷は湖南省西部にある1万戸の住居しかないような小さな町ですが、地元の竜灯踊り花火は半世紀前から湖南省西部で知られるようになっています。正月や節句のたびに各家庭はみな自前の飾り灯篭を披露し、元日から12日までは「送灯(飾り灯篭を送る)」という風習があり、飾り灯篭を持ちながら、銅鑼や太鼓を打ち鳴らします。13日から15日までの「焼灯(飾り灯篭を焼く)」という風習は、主に各家庭の花火の優美さを競い合うものです。
番組の中でお送りした曲
1曲目 好运来(好運が訪れる)
この歌はお正月の時に、人々が新年の好運を祈る気持ちを表しました。
歌詞
好運が訪れ あなたに好運が訪れるよう祈る
好運は喜びと愛をもたらす
好運が訪れ わたしたちに好運を呼んでくる
新年がやってきて好運が訪れ どの家も家族団欒を楽しむ
家族みんなにご多幸とご健康が訪れるように
2曲目 跑旱船
この曲は民間舞踊「跑旱船」の伴奏音楽です。「跑旱船」は中国の北方地方で喜ばれる民間舞踊で、お正月と伝統的な祝日のときに行われ、銅鑼や太鼓などで伴奏し、祝日のめでたい雰囲気を表します。
3曲目 満城煙花(町全体に花火を)」
この歌は2017年のCCTVのお正月番組「春節の夕べ」の舞台で登場した作品です。
歌詞:
雪がひらひらと舞い落ち 世界にキスをする
雪が家々のドアを軽く叩く
灯火が夜の町の中を行く人々を照らす
帰り道はまだどれくらいあるのだろう?
今夜の町全体の花火はなんと華々しいことか
大地の雪は青春の芽生えを待っている
広々とした大地で私たちが一緒に成長する
天下は素晴らしい一つの家族だ