北京
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2月5日は旧正月・春節の元日です。春節は中国では最も大切な祝日として昔から、文人墨客が描くテーマとなり、名家に描かれた春節は中国伝統文化の趣に溢れています。小説家・老舎は春節の特徴的な北京文化の魅力を表現し、文学者・梁実秋は大晦日の楽しげな場面を描き出し、作家・莫言は旧暦12月8日に食べる伝統的な穀物のお粥「臘八粥」を懐かしみました。これらの名作家の優れた文章力を通して、春節の特徴的な光景をしみじみと感じることができます。中国メロディーは今回と次回の二回に分けて、名作家が描く春節の様子と音楽をご紹介します。
老舎が描く北京の春節
北京を代表する作家の老舎は、北京の春節の風俗習慣に非常に詳しく、彼が1951年に発表した「北京的春節(北京の春節)」という文章は、旧正月前後の北京の食事や儀礼などを描き、読者に魅力的な北京の春節風情絵巻をイメージさせました。
「大晦日はとてもにぎやかで、どの家でも年夜飯・年越し料理の準備に忙しい光景が見られます。何処へ行っても酒や肉の匂いが漂います。老若男女を問わず、みな新しい衣服を着て、入り口の門扉に真っ赤な「春聯(正月を祝うめでたい詩文を書いた赤色の紙)」を貼り、部屋の中には色とりどりの旧正月に飾るめでたい絵「年画」を飾ります。どの家も徹夜をして明かりが煌々と灯され、爆竹は昼も夜も絶えず鳴り響きます。やむを得ない事情がない限り、人々は帰省して、一家団欒で食事をしたり、祖先を祭ったりしなければなりません。大晦日の夜に幼い子供を除いては、みな寝ずに年越しをします」
梁実秋、年越しの徹夜への「文句」
梁実秋は1930年代に北平で活躍した文学者、文芸評論家です。1903年に生まれた梁実秋は清の末期と民国初期の北京の社会生活を体験し、彼の「過年(新年・旧正月を祝う)」という文章の中に北京の旧正月を祝う風俗習慣に思いを馳せました。多くの人が子供時代に春節の時間を楽しむのと違い、梁実秋は幼い時は春節を祝うことにあまり興味を持っていなかったそうです。その原因は大晦日の夜に寝ないで年越しをする風習はいつも早々に寝る子供にとっては、「かなり苦しかった」と語っています。では、梁実秋の「過年(新年・旧正月を祝う)」という文章の一部をお楽しみください。
「庭のあちこちに宮廷式ランタンやぼんぼりなどを掛け、蝋燭の明かりが煌々と灯されます。床に脱穀した後の茎が敷かれ、踏むとぎしぎしと音がするのが、とても楽しかった。しかし、身を切るような寒風に吹かれて、顔は寒さで真っ赤になり、とても気分が悪かった。大みそかの午後12時を過ぎてトウモロコシの粉で作ったパンが卓上に並べられた時、私はもう疲れきって、まったく食欲が無くなっていました。少し食べた後、すぐに眠りこみ、空が白むことに気付かなかった」
莫言、活気あふれる「施粥」に憧れる
ノーベル文学賞を受賞した有名な小説家・莫言は彼の「過去的年(過去の春節)」という文章の中に子供時代に「臘八粥」をもらう場面を想像して、子供の天真爛漫な様子を描きました。
中国では旧暦12月8日は「臘八節(ろうはちせつ)」と呼ばれる仏教の祝日で、この日に多くのお寺では「臘八粥」というお粥を無料で振る舞っています。そんな「臘八粥」を食べると、旧正月がますます近づいていることを感じさせます。では莫言の「過去的年(過去の春節)」という文章の一部をお楽しみください。
「待ちに待った旧暦12月8日がやっと来ました。これは旧正月を迎える始まりです。その日の朝にお粥を作る風習があり、そんなお粥の中には八種類の穀物や果実を加える必要があると言われていますが、実は七種類だけで、中でも棗は欠かせないものです。当時、私はお寺の前で行われる『施粥(せじゅく)』という式典に非常に憧れました。巨大なお鍋の中に多くの袋のお米と豆が鍋の中に入れられ、粘りあるお粥が鍋の中でぐらぐらと煮立ち、泡がぶくぶくと出ていて、匂いが肌寒い朝の空気に漂ってきます。多くの茶碗を持つ子供が行列で待ち望んでいます。当時、私はいつも自分もお粥をもらう列の中に並ぶことを想像しました。お腹が空いても、とても寒くても、心は大喜びでした。その後、自分の作品の中にこの場面を何度も描きましたが、描かれたシーンは想像のような輝かしさに遥か及びません」
番組の中でお送りした曲
1曲目 団円飯(一家団欒の食事)
歌詞:
家族は一家団欒のために忙しい
家族全員がそろって一家団欒の食事をする
家族の素晴らしい祈りもそこに託される
2曲目 情怨(恋の恨み)
この歌は京劇の節回しを真似て作られたもので、北京の伝統文化の息吹が溢れています。
歌詞:
眠れない夜
君のことが浮かんでくる
君は小舟に乗り
雲と霧を通り抜けてやってくる
危険に遭うと
君はいつも助けてくれる
君の愛は僕の心を温める
3曲目 臘八(臘八節)
この歌は元の時代の詩人・虞集の同じタイトルの詩作を基にアレンジしたものです。歌は旅人がお寺の臘八粥をもらってから、旧正月がもうすぐやってくることに気付き、故郷を偲ぶ気持ちを表現しました。