北京
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1時間目 「CRI時事解説」中国とフィリピンの関係に再び「虹」&イタズラ爺さん・奥田正彦さんのハンコ彫り:裛露掇其英
担当:王小燕、斉鵬
11月もそろそろ終わりに近づき、こちら北京は夜の最低気温が氷点下にまで下がってきました。冬将軍の足音が聞こえてきました。こんな中、この25日、中国国際放送局(CRI)主催の「和して同ぜず書画展」が韓国の首都ソウルで開幕となりました。30日まで、日照願画廊と新上画廊にて展示中です。中国、日本、韓国、モンゴルなど北東アジア諸国の書家・画家と青少年の作品がそれぞれ70点余り展示されています。この書画展は2015年に創立された後、これまでに中国、日本、モンゴルなどで展示や交流活動を行ってきました。今年の書画展は4月に東京、6月に西安、8月に北京で巡回展示し、中日韓朝モンゴル5か国の書家・画家の作品300点余りが展示されてきました。
11月も最終週になる今日の番組。「CRI時事解説」では、「中国とフィリピンの関係に再び『虹』」と題したCRI論説員の文章をご紹介します。続いて、最近、火曜ハイウェー宛てに届いたリスナーさんのお便りをご紹介します。
後半は毎月最終週にお送りする「イタズラ爺さん・奥田正彦さんのハンコ彫り」。奥田さんは11月号に取り上げる印文は、東晋の詩人陶潜の詩「飲酒 其の七」から「裛露掇其英(つゆにうるおう そのはなをつむ)」です。
2時間目 健康志向と美に目覚めた中国、おいしさとストーリー性で対応~石川県・中亮介さんに聞く
聞き手:王小燕
この8月まで石川県上海事務所に駐在していた中亮介さんのインタビュー2回目です。便利な暮らしを求めて、IT技術を生活のあらゆる面に取り入れて、大きな変貌を遂げている中国。これまでの3年間の滞在を経て、本帰国する前の中さんは、落ち着いた目線で観察してきたことを分かち合います。
■中国のトライアンドエラーの精神にいつも驚かされる
ー中さんが初めての中国を訪れたのはいつでしたか?
2008年の春でした。当時、週4便に増便したばかりの小松‐上海便を利用し、上海と無錫や南京、蘇州を訪れました。当時は、まだ上海万博の準備が始まったころで、上海浦東国際空港で飛行機を降りた後、開通したばかりのリニアモーターカーや建設中の万博会場を横目に、渋滞した高速道路を走り上海市内に移動したのを覚えております。
当時の上海は、確かに大きな街ではありましたが、現在のように近代的な大都会というイメージはありませんでした。たかだか7年で、街の雰囲気が一変した気がいたしますが、中国に何度もいらっしゃった方がみなさん口をそろえておっしゃる、中国の変化の速さを今、私自身が肌で感じております。
ー来るまでに、イメージしていた中国と実体験した中国との間に、ギャップはありましたか。
昨今の中国はといいますと、大気汚染や島の領有権問題などネガティブな情報が先行している感が否めず、ニュースなどでは、連日、中国経済の減速がささやかれておりますが、実際に中国に赴任してからは、中国人の溢れ出るパワーに圧倒されっぱなしの毎日です。急増する中国人観光客や「爆買い」などが日本でも話題になるなど、中国の持つエネルギーはまだまだ計り知れないものがあると思います。
2015年の国慶節の爆買いから始まり、毎年売上高を更新する11月11日の独身の日のネット通販の消費力など、現在を生きる、中国の方々の購買力を目の当たりにしてきました。
ーこれまでの三年間、中国で暮らしていて、特に印象に残った点は?
中国における便利なものの普及する速度は目を見張るものがあります。日本では、新しいシステムを導入する時、まずはそれに伴うデメリットも考慮してなかなか導入に踏み切れないところがあると思いますが、そういう点で、中国におけるトライアンドエラーの精神はいつも驚かされています。IT分野の浸透という意味では、日本より先に進んだ部分も多く、例えば、支付宝、WechatPayなどの電子マネー、モバイクをはじめとしたシェアサイクルの普及などです。
■<食>健康志向が高まっている
ーさて、石川県産品の中国での販路拡大の支援がお仕事のようですが、現場では何か中国ならではの特徴を感じていますか。
中国の方々は、ストーリー性のあるものを好む傾向があると認識しています。例えば、日本酒でもただおいしいだけではなく、どこどこの名店で採用されているとか、著名人が好んで飲む銘柄だとか、他人に語りたくなるような話題性があるもののウケが良いように感じています。
ー食べ物を例にしますと、商談会などで特に気になった点は?
ベビー用食品とスイーツへの注目度が高いということを目の当たりにしました。最近の中国では、中間所得層が増えているといわれていますが、そういった層の人が増えることによって、これまでお金をかけなかった分野にも消費が拡大しており、その一つがベビー用品だと思います。5月に上海で開かれた商談会には、石川県の老舗の醤油屋さんがサンプルを出品した無添加、減塩の赤ちゃんから使える醤油に対して、多くの関心が寄せられました。所得が増えたことにより、子供の成長にかけられるお金が増えたことが影響していると分析しています。
これらのように、ただ良いものを中国の方にお勧めするのではなく、これからの中国市場では、今回のベビー用食品のように、日本の食の安全性などの日本食の持つブランドイメージを最大限活かすなど、ある程度のテーマを定めた販路拡大の戦略も必要だと感じています。
■<工芸品>オンラインの発信とオフラインの実体験でPRする
ー「工芸王国」という誉れがある石川県、中国での販路開拓に向けた取り組みは?
石川県は、九谷焼や輪島塗をはじめとした伝統工芸が色濃く残った地域、と形容されています。本物の技が残っている地域だということがお分かりいただけると思いますので、ストーリー性を前面に出して本県の伝統工芸品の良さを中国の方々にも知っていただけるよう、工夫を凝らしながら、石川県の伝統的工芸品の中国における販路開拓に取り組んでいるところです。
私が中国に赴任してからの取り組みで申し上げると、2015年には、広東省広州市における商談会と、上海市における商談会を実施しており、その成果として上海では、南京東路にある大丸百貨において石川県の伝統的工芸品フェアも実施しています。
2016年も引き続き、広東省広州市において伝統的工芸品の商談会を実施しており、その際は、石川県と石川県の伝統工芸を知ってもらうセミナーと沈金体験などのワークショップを開催し、セレクトショップや雑貨屋などの現地バイヤーに加え、KOLなど現地の発信力を持つ方々にもお声かけをして、石川県とその工芸品の魅力を発信しました。
広州での伝統的工芸品販路開拓支援事業の集大成として望んだ2017年の商談会では、石川県からは九谷焼、輪島塗、山中漆器の6社が参加。現地コーディネーターと綿密な下準備をして、積極的なSNSでの事前発信、空間コーディネーターの起用による商談会場のデザイン及び設営など趣向を凝らしたことによる高級感の演出を実施しました。また輪島塗沈金体験教室や金沢箔貼り体験教室も実施し、職人の技術の高さを実際に感じる場を設けました。その結果としては、、商談会用に持ち込んだ商品を、商談会終了後ほぼ全て購入してくださったバイヤーの方もおり、3年間で最高の成果を上げることができました。
2017年の商談会が終わった後、商談会で知り合った方々が何組も石川県を訪問してくださっており、人と人との繋がりが、石川県の工芸品の普及に留まらず、インバウンドの効果も生んでおり、私個人としても、大変思い入れもある事業となっています。
◆暮らしやビジネスの現場でも中国の素早い変化を実感
ー2015年の5月中旬のご赴任から、上海生活が早3年余りが過ぎましたが、町の変化をどうご覧になりますか。
当時を思い返すと、街の風景や人々の生活様式も随分と変わりました。
私が中国に赴任したのはちょうど北陸新幹線が開業した直後。その頃と比べると、石川県の様子も、金沢駅が自動改札化してSuicaが使えるようになっていたり、街中で見かける外国人観光客の方々の数が以前と比べ物にならないほど増えるなど、一時帰国するたびにその違いに驚かされます。また、金沢の街中に再開発で新しいショッピングセンターができていたり、郊外に大型のショッピングモールがオープンするなど、県内にも新しいショップや話題のスポットができて、週末の人の流れなどにも変化があることと思います。
しかし、上海(中国)の街は、私達のふるさと石川をはじめとする日本のそれと比べ物にならない変化を遂げており、日本では考えられない速度で日々進化しています。
アリペイをはじめとした決済アプリの普及によるスマホでの電子決済・キャッシュレス化については、私が赴任した当時は、まだコンビニなどで現金決済や銀聯カード(デビットカード)決済をする人が半数以上いたように記憶しておりますが、今では現金で支払いをする人をほとんど見かけることがないほど普及しています。あまりに普及しているため、モーターショーや野外ライブなど大型のイベントの際など、臨時で出店している飲食店や売店などでも電子決済が主流となっており、お店側もアリペイでの支払いを前提として、小銭を準備しておらず、海外から来た方などが額の大きい紙幣での支払いを拒まれて、買い物ができずに困っている現場に出くわすことがあります。
ー中さんが駐在していたこれまでの3年は、中国ではITやIoTなどが人々の暮らしに大きく入り込んだ3年間でもありました。
そうですね。現地の銀行口座と紐付いたスマホ決済が大前提となったサービスが一般化し、それを享受できる人にとっては大変便利になり、私の赴任時に比べると現地の生活様式は一変しておりますが、逆に、それらを利用できない外国からの旅行者や出張者が、不便を強いられるという問題も発生しています。
前述したお釣りの準備がないことにより現金決済が出来ないことや、配車アプリの普及により端で手を上げて流しのタクシーを捕まえづらくなったことをはじめ、最近では、レストランのメニューですらQRコードでスマホに読み込んでネット上で注文し、そのまま電子決済をするというお店まで出てきており、無人化コンビニも含めて現金決済が不可の場面もよく眼にするようになりました。
便利なものの普及が早いことは良いことかもしれませんが、過去のものを切り捨てる速度も速く、国際都市である上海ですら数の理論が優先され、海外からの旅行者や出張者が「置いてきぼり」をくっているように感じます。ただし、その辺の整備は今後追いついてくるものと思われますので、状況を追っていきたいと思います。
■異文化との付き合い方~大事なのは気持ちの持ち方!
ー帰国後、中国で体験したことをどう生かしていこうと思っていますか。
先に話したように中国の変化の早さに驚きを感じているとともに、その便利さを享受し、上海ライフを楽しんでいますので、まずは、現在の中国がこんなところだよというのを、私が住んで感じていること、見知ったことを日本の皆様にお伝えをして、知っていただき、今の中国の皆さんが何を望んでいるのかを石川県の皆さんに知っていただくことで、今後の可能性が広がっていくのではないかと考えています。
ー―最後に、これからビジネスで中国に来る予定の方たちへのアドバイスがもしあれば、ぜひお願いいたします。
先に話したベビー醤油の件もですが、ネット通販の爆発的な普及、wechatなどによるSNSでの情報発信など、消費動向の変化や、新規技術の導入と一般への普及の速さなどから、これまでとは違ったアプローチが必要となるケースが多くなっています。普段から常にアンテナを高く、情報収集をしなければならないと感じています。
また、心の持ちようで、物事のとらえ方が違ってきます。中国国内で出張する際に、航空便の遅れというのが確かに頭の痛い問題ですが、時間にゆとりをもったスケジュールを組まれることと、数時間の飛行機の遅れに寛容な心をお持ちになることをお勧めします。
【プロフィール】
中 亮介(なか りょうすけ)さん
1982年生まれ。 2005年3月に中京大学卒業。 2006年4月 石川県庁入庁、健康福祉部、観光交流局、観光戦略推進部、商工労働部を経て、2015年5月から8月まで、日中経済協会上海事務所。現在は石川県庁で勤務。
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