北京
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中国の職業教育
9月1日は、中国で新学期が始まる日になります。
これまでにも、中国の教育制度については色々と機会を設けて紹介してきましたが、今回は「普通教育(一般教育)」とは違う「职业教育(職業教育)」について紹介していきましょう。
中国で職業教育を行う学校は「职业学校(職業学校)」と呼ばれ、義務教育を終えた人なら、「中考」(「初中学业水平考试」)を受験することで入学することができます。
この職業学校には主に3つの種類があります。
【职业高中】(zhíyè gāozhōng)略称:职高[名]職業高校;専門高校.
中国の「职业高中」のほとんどは「普通高中」から改編されたもので、入学条件は「普通高中」と同じ、学制も3年間と、なんら変わりがありません。卒業後には、関連の大学入学試験を受けて、大学へ進学することもできますし、そこで学んだことを生かして就職することもできます。育成目標としては、中級技術者や管理者、中級技術労働者と従業員とされていますが、入学後には専攻に従い、専門知識を選びます。
日本で専門高校と呼ばれる学校と同様の存在で、様々な職業に直結する勉強のできる学校です。
この職業高校の一部の学校では「3+2」の形をとっており、高等職業技術学院と協力して、5年間学んで、「大专」(大学専科;日本だと短大や高専に似たクラス)の卒業証書を取得することができます。一般高校で学ぶ語学、数学、外国語などのほかに、専門知識、例えば、幼児教育や農業関連、自動車修理、建築、観光、パソコン、医療衛生、会計、美術、音楽、料理など、技能的な専攻科目がカリキュラムに組まれています。
ですが、この「大专」は学歴認定では一番厄介なもので、外国人に説明するときには非常に困り者となる存在です。日本の短大も準学士という学位を出すものの、最近では4年制に変更する学校が増えているのと同様、中国でも、1990年代以降から4年制に改編される学校が多くなってきています。
【中等专业学校】(zhōngděng zhuānyè xuéxiào)略称:中专[名]中等専門学校.
「中专」では、学校で一般教養知識を学ぶと同時に、中等専門知識を学ばなければなりません。「中专」には公立と私立があり、「普通中专」と「成人中专」の区別があります。
1982年以前、「中专」は高校の卒業生しか入れなかったのですが、それ以降、一部の地域の財政、教育、医療関連の「中专」では中卒生を募集するようにもなり、1986年からは、省や部クラスの「中专」も中卒生を募集するようになるなどの変化があり、その流れの中で、一時「中专」の合格点数が重点高校の点数よりも高い時期がありました。
当時は、「中专」を卒業すれば、「铁饭碗」を持つことができ、「干部」になれる上に、大学に進学するより早く給料をもらえるということで、一般家庭の出身の人たちには大人気でした。特に子供の多い家族の場合、子供を大学に行かせるより早く就職して給料をもらってくれたほうが、家族にとって役に立つからということで、このレベルの学校に行かせる親がたくさんいました。
しかし、「中专」の人気は、1990年代の中期以降、卒業生の就職制度改革や、大学の募集拡大の頃をピークに下降線を辿ります。この改革によって「铁饭碗」がなくなり、そこに大学の募集拡大が始まったことから、大学の間口も広くなりました。その為、その頃から、今度は「中专」は成績の悪い人が行く場所だというイメージが人々の中に定着するようになってしまいました。しかし、現在の政策では、「中专」の卒業生も「普通高中」の卒業生と同じように、一般の大学入試に参加することができるようになっています。ですので、あと何年か後には、もっとニュートラルな眼でこの「中专」を見ることができるようになるかもしれません。
【技工学校】(jìgōng xuéxiào)略称:技校[名]技術労働者学校.
これも中学の卒業生が受験する学校です。
実は、「技校」、「中专」、「职高」は高校と同じレベルのものなのですが、この「技校」の卒業の場合、技術労働者としての証明書はもらえますが、学歴証明書がもらえません。
「技校」の学制は少し特別で、1年制から5年制のものまであります。本来が中、高級の技術労働者の育成を目的とした学校であり、卒業後には国家資格証書が授与されます。その資格は5つのレベルに分けられており、一番低いのが初級技師、一番高いのが高級技師というものになります。高級技師の待遇は「高級工程師(高級エンジニア)」とほぼ同じとなり、初任給も優遇されます。
近年では、中国国内のベテランの技術労働者や高級技術労働者が不足していることから、国の政策も職業教育にウェイトをおき始めています。ひょっとして、「技校」の卒業生のお給料が普通の大学卒業生より高いという現象も出てくるかもしれません。