北京
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今年の中国は夏に入ってから、北方地方の降雨量が例年より多くなっています。雨水が十分に満たされた北方の草原では色とりどりの花が、生気あふれる姿で大自然に彩りを添えています。この時期、カザフ族の歌謡大会「アイトゥス(阿肯弾唱会)」が草原の各地で行われます。今回の中国メロディーはアイトゥスの様子とカザフ族の民謡をお届けしましょう。
カザフ詩人の盛会
カザフ族は中国北方の草原に暮らす遊牧民族です。カザフ族は歌が好きな民族で、その諺には「歌と馬はカザフ族の二つの翼」というものがあります。また、カザフ族の歌や語りなどを唄う詩人は「アケン」と呼ばれ、毎年の夏、カザフ草原でアケンたちが即興で歌の腕前を競う「アイトゥス」が開催されます。
そんなアイトゥスの開催期間、カザフ族の人々は鮮やかな民族衣装を纏い、彩り豊かな花が咲いている草原に集まって、アケンたちの歌比べを楽しみます。歌比べでは、アケンたちが機知に富んだ、ユーモア溢れる歌詞を披露すると、観客たちから拍手喝采が起こります。アケンたちは数時間にわたって歌を競い、観客たちもアケンたちの素晴らしいパフォーマンスを応援します。この時期のカザフ草原のあちこちには、高らかな歌声と民族楽器の抑揚があって美しい音色が響き、民族音楽の世界が広がっています。
アイトゥスの伝説
昔、アルタイ草原には花より美しいカザフ族の少女が住んでいました。彼女の甘くて優しい歌声を聴くと、花たちは微笑み、飛んでいる鳥たちも感動して、翼を止めて聴き惚れます。少女はある勇敢な青年と愛し合うようになりますが、ある日、部落のリーダーが彼女の歌声と美貌に魅了され、彼女を連れていこうとしました。
絶望の淵にいた少女は民族楽器ドンブラーを弾きながら、切ない歌声で遠方にいる青年に助けを求めました。すると突然、空から一匹の駿馬が少女の側に降りてきて、少女を乗せて遠くへと飛んでいきました。少女はドンブラーを地上に投げると、ドンブラーはすぐに数えきれないほどの数に変わりました。その後、毎年、夏にこの逸話を記念するため、カザフ族の人々は草原で歌謡大会を行い、代々伝えています。
民族楽器ドンブラーの由来
カザフ草原ではどこに行っても、ドンブラーの心揺さぶる音色が聞こえます。ドンブラーは二弦の撥弦楽器で、同じ撥弦楽器のコブズに並ぶ、カザフ族の代表的な民族楽器です。カザフ族では、老若男女を問わず、みなドンブラーを奏でたり、唄を歌ったりすることができます。
そんなドンブラ―にも伝説があります。昔、カザフ族のある部落は生い茂った森の近くに住んでいました。森の中にいた熊はいつも牧畜民と家畜を襲い、国王に派遣されてきた勇士達さえも熊に敗れました。国王の息子「ドンブラー」は父親の反対を顧みず、熊と決死の戦いを挑み、倒しましたが、自らも犠牲になってしまいました。
人々は王子が犠牲になったことをいかにして国王に伝えるか悩みました。そんな中、アケンという年配の牧畜民が国王に会いに行きました。国王は「お前は王子の居どころを知っているのか?」と尋ねました。すると、アケンはある大きな松の木を指さして、「尊敬する国王陛下、この木は王子の所在を知っています」と答えました。それを聞いた国王は怒りを露わにし、「明日、この木が何も言わなければお前を殺す」と言いました。賢いアケンは大変落ち着いた様子で松の枝を切り落とし、その夜のうちに精巧な美しい楽器を作り上げました。翌日、アケンはこの松の木で作った楽器で国王のために演奏し、楽器の音色で勇ましい王子への尊敬を表しました。その音色から松や風の音、王子の勇ましい声、熊の叫び声、牧畜民が王子の死を悲しみ、悼み、泣く様子などが感じられました。この音色を聴いた国王はとても悲しみましたが、結局、アケンを許すことにしました。
その後、カザフ族の人々は勇ましい王子を記念するため、王子の名前からこの楽器をドンブラーと命名し、ドンブラーを弾く歌手をアケンと呼ぶようになりました。
番組の中でお送りした曲
1曲目 故郷(ふるさと)
この唄はカザフ族の民謡で、里を離れている人の故郷を思う気持ちを表しました。
2曲目 我的黑眼睛(私の黒い瞳)
この歌はカザフ族の恋の歌です。
歌詞:
ああアナルアン 私の黒い瞳
熟した黄色い杏を味わう 渋身の中にも甘味がある
ああ甘い味は心の中にある
酒より甘くて 村中に漂い
ミツバチも夢中になって酔っぱらう
ああアナルアン 私の黒い瞳
3曲目 弹起我心爱的冬不拉(好きなドンブラーを弾く)
この歌は1970年代、文化大革命時代に作られたもので、各民族の団結をテーマに歌いました。
ドンブラー 私のドンブラーを弾いて
北京で新しい歌を歌いあげる
ドンブラー 私のドンブラーを弾いて
北京に向けて新しい歌を歌う
各民族の新しい生活を歌う