北京
PM2.577
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キーワード①
【隐形贫困人口】(yǐnxíng pínkùn rénkǒu)[名]宵越しの金を持たぬ人たち.
直訳すれば「隠れた貧困人口」となるところですが、実はこの「隐形贫困人口」とされる人のほとんどは、本当の意味の貧困とは全く関係のない人たちです。彼ら(彼女ら)は、月収にすれば1万元(日本円16万円相当)以上と、中国では少ないとは言えないお給料をもらっているのです。しかし。問題は、その給料をスキンケアやファッション、食べ物、住まいなど、いずれも全く節約しようとせずに全額使い切ってしまい、結果として、貯金ができないという人たちなのです。そして、自らを「見えない貧困者」と自嘲しているわけです。日本でいう「宵越しの金は持たない」人たちということになるでしょうか。
中国では、昔から節約が大事だという観念が根付いており、貯金がないと不安だという人が大勢いるものの、今の中国のネットユーザーたちは、「穷」(貧しい)という概念に対して、新しい考え方を持つようになっているようです。つい先日ご紹介した言葉に、「贫穷限制了我的想象力」というのがありましたが、今度は、毎日いい物を食べて、いい物を身につけている人を逆に「隐形贫困人口」と言うようになっているわけです。
さて、このような考え方を持っている人は若い人がほとんどです。自分はこのまま働いていれば、給料も増えていくだろうし、多少貯金がなくても困らない、という自信を持っていて、「隐形贫困人口」に変化しているのでしょう。若い時には、クレジットカードのおかげで、使わなくてもいいお金をたくさん使ってしまうこともあるでしょう。これは若さに自信がある証拠かもしれません。ですが、現実的な話、ある程度の年齢になってからは、貯金がないと不安になることも確かです。時に、子供の教育費などは大きいですし、年を取ると、健康の問題もあります。加えて、ライフスタイルも変わってきますから、消費構造自体が変化してきます。そういう意味では、なかなか貧困から抜け出せませんが、心だけは貧しくならないようにしたいものですね。
キーワード②
【亲情价】(qīnqíng jià)[名]低く鯖読んだ価格.
ここでいう「亲情」は家族愛のことで、「价」は価格。この二つを合わせて、「亲情价」というわけですが、これは「家族価格」という意味ではなく、「いくらで買った商品でも、親にはそれより随分安い価格を報告する」という意味になります。
親は子供に無理をしないでほしいと思うものです。これは特に最近の現象ではなく、これまでにもあったものです。ただ、これまでは「亲情价」という言い方がなく、「善意的谎言」(善意の嘘)と言う言い方で、親にいらぬ心配をさせないように嘘を付くという言い方をしていた、といえば、ハッとされるかたも多いのではないでしょうか。
中国の場合、1970年代以前に生まれた人たちは、戦乱や飢え、またはそれほど豊かではない時代を経験してきました。そのため、必要以上にお金を使うことを罪悪のように考えているのか、節約という考えが生まれつき刷り込まれており、「ブランドだから倍以上の値段で買う」なんてことはとんでもないと思っている傾向があります。ですから、食べ物なら予算を超えたら注文しませんし、洋服や使うものならなおさら倹約する傾向があります。ですので、そういった世代の親に対して何かをプレゼントする場合、自然と向こうが受け入れやすい値段、つまり「亲情价」で報告するほうが、向こうも安心、こちらも叱られなくて済むという「一石二鳥」なコミュニケーションにつながることになります。また、中国の親はいくつになっても子供のことを心配しがちで、いつまでも子供は子供という観念が根強く残っています。ですから、今お金があって贅沢放題できても、将来お金に困るようになったらどうするのか、という老婆心も起こりがちです。これは理解のできることではないでしょうか。
さて、この「亲情价」について、ネットでは、こんな「段子」(ジョーク)が流布されています。
息子が通常の価格でiphoneをお母さんに買ったところ、値段を聞かれ、1000元と答えました。するとその後、お母さんから「もう2台買ってほしい」と頼まれたそうです。事情を聞くと、隣の人がその値段を聞いて「そんなに安いなら自分も2台ほしい」と言って、2000元を預けたというのです。その息子は仕方なく今度は逆の嘘をつくしかなくなり、「その時は割引で買った。今は価格では買えなくなった」と断った・・・という話です。
時代の変化とともに豊かになった今の若者世代は、モノの価値を大体知っていますから。将来自分が親になったときには、その辺には冷静に対処するようになるかもしれません。そして、コミュニケーションの形態も、今とは全く違ったものになっていることでしょう。
その時代には、まだこの亲情价のような相手への心遣いは残っているのでしょうか。未来を考えると、少し心配になります。