北京
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キーワード①
【镖人】(biāorén)[名]ボディガード、用心棒.
古代に旅人や貨物輸送の護衛にあたった武術の心得のある人を指した言葉で、「镖客(biāokè)」とも呼ばれます。いわゆるボディガード、古い言葉では用心棒ですが、保護する対象は貨物や旅人だけでなく、中には賞金のかかったお尋ね者がいたことすらあるようです。
さて、この『镖人』は最近中国で評判の漫画作品のタイトルで、英語では『BLADES OF THE GUARDIANS(ブレイズ・オブ・ザ・ガーディアンズ)』と呼ばれ、日本でも話題になりました。NHKの番組でも3回も取り上げられ、「世界レベルの傑作だ」との評価を受け、その流れで、単行本が中日同時発売されることも決まっているそうです。
作品は中国の隋朝(581-618年)の末期から唐朝(618-907年)の初期の時代を舞台にしたもので、主人公の刀馬が身元不明の「镖人」として、幼い息子を連れて、物騒な世の中を旅します。表向きはよく金を口にしますが、実は自分なりの道義と原則で行動する人と言う設定になっています。日本のイメージでは子連れ狼のようなイメージで捉えると分かりやすくなるでしょうか。
『镖人』はネット上で約4年間連載され、高い口コミと人気を誇っています。読者からは、「感動の作品。画風にしてもストーリーにしてもとても成熟していて、中国の漫画に希望を感じることができる」との声も寄せられています。先頃北京聯合出版有限公司から出版されたのは一巻目で、中には第一章から第七章までの全内容とネット連載にはなかった『刀馬と常貴人』が含まれています。
これだけ評判を集める作品の作者である許先哲氏は美大出身というわけではなく、漫画を書くことを決めたのは26歳頃という異才です。隋末の世界観を再現するために、史実資料の収集に7年の時間をかけ、登場人物の服装、武器、文化に至るまで詳しく研究したと言います。彼曰く、「中国の歴史にはたくさんの王朝、素晴らしい人物、書籍がある。それらを真剣に発掘すれば、良い物語を作り出すことができる。漫画は、日本の物語をコピーするのではなく、中国ならではの素材を使って勝負しなければならないと思う。ここで言っているのは画風ではなく、文化の奥行きのことだ」とのことで、そのこだわりから、納得のいくスタートを切りたいと、扉絵だけでも2000回以上書き直したということです。
日本の読者がどう受け取るのかが非常に楽しみな作品です。
キーワード②
【北京女子图鉴】(Běijīng nǚzǐ tújiàn)[固]北京女子図鑑.
日本のドラマ『東京女子図鑑』をリメイクしたネットドラマのタイトルです。
話題の小説を実写化した日本のドラマ「東京女子図鑑」が中国でも人気を集めたことから、昨年10月、中国の動画配信サイト優酷(Youku)が「東京女子図鑑」の著作権を持つワタナベ・エンターテインメント社と東京カレンダー社との間で、北京と上海を舞台にそれぞれで中国版の「東京女子図鑑」を製作することで合意に至ったことを発表しました。これは、優酷が日本側と十分に意思疎通を交わしたうえで合意に至ったもので、中国を代表する二大都市北京と上海を背景にドラマを製作すると言うこれまでの合作の中でも珍しい合作企画です。
そして、このほど、北京版の『北京女子图鉴』の配信がスタートすることになりました。
人気女優・戚薇(チー・ウェイ)が主演を務め、ファッションメディア大手であるトレンドグループの蘇芒(スー・マン)総裁がファッションコーディネートを担当するこのドラマでは、ヒロインの若い女性陳可依(チェン・コーイー)が、夢を叶えるために北京に「上京」するところから物語が始まります。そして、独身女性が一人で大都市に暮らし働くリアルな姿を描きます。また、この物語は、2008年から2018年の10年間の陳可依の成長を軸に描かれています。
ヒロインを演じるチー・ウェイさんは、ヒロイン陳可依と同じく四川省出身であることから、役作りに当たって「思い出したくないことまで、あらゆる経験を全部つぎ込んだ」と語りますが、独立した自分を目標にしながらも、なぜか男性への依存度が高いヒロインの姿には、視聴者から「ブレすぎ」「受け入れられない」という声も多く、コミュニティサイト「豆瓣(ドウバン)」での点数もそれほど高くないようです。
オリジナル版が中国のネットユーザーの間でも評判が高かった一方で、リメイク版の評価がなぜここまで低いのかという疑問には、「『東京女子図鑑』は主人公自身の努力でいい仕事に乗り換え、彼氏も乗り換えるが、『北京女子図鑑』の主人公は仕事でも生活でも男に頼って這い上がっていく。2つのドラマは本質的に違う」との指摘があります。
ここ数年、日本で人気が出た映像作品や小説をリメークする中国の映像作品が増えていますが、好評を博したものはわずかです。その原因としては、原作をしっかり咀嚼(そしゃく)していないことや、中国文化や中国的な思考法をストーリーに上手く織り込めなかったことなどが考えられます。
こうしたことから感じるのは、コンテンツ制作にはまだまだ「工匠精神」が足りないのかな、と言う点です。中国のクリエイティブ業界のさらなる努力が望まれます。