北京
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キーワード①
【普惠金融事业部】(puhui jinrong shiye bu)[名]<金>インクルーシブ・ファイナンス事業部.
「普惠金融」はインクルーシブ・ファイナンス(後述参照)、「事业部」の方は字面通り事業部の意味です。単語の順序を逆にした「金融普惠」は金融包摂、ファイナンシャル・インクルージョンの意味を表します。ここでは、「普惠金融事业部」として、銀行のインクルーシブ・ファイナンス業務を担当する部門を表します。
この「普惠金融」インクルーシブ・ファイナンスは、国連が2005年に提起した概念で、金融サービス需要のある社会の各階層や人々に向けて、適切かつ必要とされるレベルでの金融サービスを低コストで提供するというもので、中小企業、零細企業、農家、都市部の低所得層などを主なターゲットにしています。
この「金融普惠」の概念は、貧困を撲滅し、社会の公平の実現を目指す、つまりは貧困層の人々が経済的な疎外を受けることを無くそうというもので、単に金銭でケアするような活動とはまた違い、全員を巻き込みながら(インクルードしながら)、社会全体の発展を図ることを考えるというものです。そうした層にマネーを流すことで、貧困問題の解決を狙いつつ、更に全国の金融システム自体の活性化が図られることを狙った動きと考えることもできるでしょう。
この動きは数年前から話題になっており、成功例としてはインドのグラミン銀行などがよく知られています。低額の資金を起業資金として借り入れ、実際にスモールビジネスを立ち上げて貧困状態を脱した人がたくさんいるそうですので、中国でもそうした効果が期待されます。
中国では2013年に開かれた中国共産党第18回全国代表大会の三中全会で採択された『中国共産党中央委員会による改革の全面深化における若干の重要問題に関する決定』の中で、「发展普惠金融、鼓励金融创新、丰富金融市场层次和产品(インクルーシブ・ファイナンスを発展させ、金融におけるイノベーションを奨励し、金融市場の階層と商品を豊富にする)」という方針を打ち出し、本格的な流れを作ろうとしています。
その後、2017年5月になって、国務院が各商業銀行に対し、2017年内に「普惠金融事业部」を設立することを求めました。これによって、中小企業や零細企業、農業、農村、農家が抱える融資難などの問題の解決が図られることが期待されています。ちなみにこの「普惠金融事业部」は、総合サービスから統計計算、リスク管理、資源配置、評価の面で専門化された経営モデルまでを独自にデザインして、比較的独立した経営管理を行うことが求められます。一般のリテール業務とは違う思考回路が求められ、従来の銀行の業務モデルではカバーしきれないということでしょう。
キーワード②
【五险一金】[固・略]中国式社保;五種類の保険と一種類の積立金.
雇用者が被雇用者側に与えるべき社会保障待遇の総称で、中には養老保険、医療保険、失業保険、労災保険(工伤)、生育保険、そして住宅積立金が含まれます。
日本の社保で考えると、医療保険(中国では医疗保险)、年金保険(中国では养老保险)、介護保険(中国では养老保险)、雇用保険(中国では失业保险)、労災保険(中国では工伤保险)がそれにあたります。中国の「生育保险」のカバー範囲は、日本だと健康保険や雇用保険がカバーしていることになります。
「五险一金」にある養老保険、医療保険、失業保険と住宅積立金は、雇用者と被雇用者双方が、被雇用者の給与を基準とする一定の割合の金額を収めます。一方、労災保険と生育保険は雇用者負担になっています。また、2016年3月23日に公布された「第十三次五ヵ年計画要綱」では、生育保険を基本医療保険と合併すると明記されていますので、今後、これは「四险一金」という形にまとまることになるかもしれません。
初期のくくり方では「三险一金」と呼ばれていましたが、2004年に労災保険、2006年に生育保険が実施されたことで、これらを合わせて「五险一金」と呼ぶことになったわけです。これを一部の地方や企業で現在もまだ「三险一金」と呼んでいるのは、労災保険と生育保険が全部雇用者負担だからです。
ちなみに、今年1月1日からは、企業や事業体を定年退職した人の基本年金と都市農村住民基礎年金のレベルを引き上げたり、失業保険金や住宅積立金などの納付比率を引き下げたりしたほか、医療保険の他地域での利用と清算ができるようになるなど、国民に有利な方へと調整が行われました。特に医療保険に関しては、一本化することで、全国どこでも加入と受診が可能になり、日本のフリーアクセスに近い環境が全国で実現されていくことになりそうです。