北京
PM2.577
23/19
年末特別シリーズ(三)
政策関連の流行語
今年取り上げた新語の中から、利用頻度や影響力、生命力の強いものを再度取り上げます。
【供给侧结构性改革】(gōngjǐ cè jiégòu xīng gǎigé)[名]サプライサイド構造改革
サプライサイドの各要素の構造を合理化し、経済発展を促進することを言ったものですが、2017年に新しく生まれた言葉ではなく、1970年代にアメリカでマクロ経済学用語として産まれたことばです。中国では、2015年11月10日、習近平国家主席が中国共産党の中央会議で初めて提起したものですが、今や政策関連では最も注目されることばとなっています。
これまでのような、需要から考える経済成長モデルのせいによる供給過剰を解消し、産業の高度化や新産業の育成によって新たな供給力を作り、成長の軸足を移すことを謳ったもので、具体的な措置としては、計画出産政策の緩和による人口ボーナスの補強(二人っ子政策)、また、土地の効果的活用による不動産バブルの解消、企業の所得税減税による利益の増加、奨励メカニズムの構築による革新意欲の向上などが挙げられます。そのほか、政府でも、行政の簡素化と一部権限の企業への委譲によって、市場に決定的な役割を果たさせるべきだとの考えを強調しています。
これまでの中国の企業は、性能の良くないものや、売れないものを過剰に生産してきました。その一方、消費者側は、生活レベルが向上し、ネットなどで情報を容易に入手できるようになり、目が肥えてきたので、モノやサービスに対する要求が日に日に高くなっています。こうした循環が生まれたことにより、国内で供給されるものと求めるものの落差が大きくなり、国内のものでは満足できなくなったことから、「爆買い」や「海淘」(=海外ネットショッピング)などが流行するなどの社会現象が起こりました。
今後、供給側(サプライサイド)では、その構造調整や意識改革を行い、市場や消費者のニーズに応じて、柔軟にモノやサービスを供給(=提供)するしくみを構築し、生産性を高める取り組みをしていくことになります。
また、こうした政策が後押しするからこそ、新たな供給力である先端産業が活発化しています。他にも、様々なこだわりを持つ人が増えていることから、この先商品のクオリティもどんどん上がっていくことでしょう。今後は、需要に応じた無駄のないイノベーションが期待されます。
【雄安新区】(xióngān xīnqū)[名]雄安新区(政策特区)
2017年の上半期、中国政府は河北省で新たな政策特区「雄安新区」を設立することを正式に発表しました。この雄安新区は河北省の雄県、容城、安新という3つの県とその周辺地域からなり、北京、天津、保定3つの都市のちょうど中央に位置しています。
雄安新区は、首都北京の一極集中を緩和したり、北京・天津・河北の経済構造を見直すことで、イノベーション駆動型の発展を育む目的があるとされます。こうした意味で、今回の特区の設置は、きわめて現実的且つ歴史的意義のある重要な措置とみられています。
現段階で公表されている政府の計画によりますと、初期の開発面積は100平方キロ、中期の開発面積は200平方キロとされています。そして、長期的、つまり最終的な開発面積は2000平方キロに及ぶ予定で、深圳経済特区、上海浦東新区に続く全国的にもウエイトを持つ新区、という位置付けがされています。
[ひとこと]
歴史のある首都北京にメスを入れると言うのは、かなりの勇気ですが、それだけ中国政府の決意の強さを感じるところでもあります。現時点では、一部の国営企業が雄安新区に本部を置くようにと準備を進めている他、大手インターネット企業数社が会社登記を済ませていることが報道されています。
【中国制造2025】(zhōngguó zhìzào èr líng èr wǔ)[名]メイドインチャイナ2025
これも「供给侧结构性改革」と同じように、今年生まれた新語と言うわけではなく、2014年12月に初めて提起され、2015年3月の全人代で李克強首相が読み上げた『政府活動報告』の中で正式に計画として謳われたものです。
「中国制造2025」は中国を製造強国にするための戦略で、2015年から10年間を一つの区切りとして世界の製造強国の仲間入りを目指そうと言うものです。その次にあたる第2のステップでは、2035年までに中国の製造業全体のレベルを世界の製造強国の中でも中級レベルに押し上げるとし、それに続く第3のステップでは、新中国成立100年を迎える年、つまり、2049年までに製造業の総合的実力を世界の製造強国のトップレベルにまで押し上げることを目標としています。
ちなみに、「メイド・イン・チャイナ2025」の実施過程では、関連政策が中国国内の外資系企業を含む全ての企業に等しく適用されるということですから、中国にある諸外国の企業にとって、大きなビジネスチャンスになるかもしれません。日本の企業には世界的な先進技術があるので、両国で協力のできる分野も広いと思われます。