北京
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夏休みになると子供たちを連れて草原や森、海へ旅行する人は多いと思います。旅は様々な人生体験をもたらしてくれるものです。今回の中国メロディーは前回に引き続き、七月下旬のフルンボイル草原の旅を通して、草原文化と草原音楽の魅力をお届けします。
草原の早朝
中国北東部に位置するフルンボイル草原は、古代モンゴル帝国の創始者・チンギスハンの故郷で、牧草王国とも呼ばれます。朝のフルンボイル草原は爽やかで清々しさがあります。車は草原の高速道路を走り、道路の両側は見渡す限りの緑が広がっています。その中で羊の群れが白い雲のように緑の草原に点在し、金色の太陽の光で沐浴したり、新鮮な空気を吸ったりして、のんびりと草を食んでいます。
ふと遠くを眺めると、美しいフルンボイル草原はまるで巨大な絵巻物のようで、天と地の間に伸びているように見えます。こんな美しい草原の中にいると、何故、蒙古族の音楽がこれほど深く染みて、人の心を打つかがわかるような気がします。広くて美しい草原は蒙古族音楽の源で、永遠に尽きることのない宝庫であると言えるでしょう。
草原の昼
昼ごろになると、車は内蒙古自治区最大の湖・フルン湖に到着しました。湖の畔に立って眺めていると、フルン湖は見渡す限り果てしなく広がり、数羽のカモメが水面すれすれに飛んでいます。
そんな中、遠くから抑揚があって美しい蒙古族の歌声が流れてきました。蒙古族の3人家族が湖の畔で歌ったり踊ったりしていて、とても楽しそうです。その黒く日焼けしている肌としわが多い顔から彼らの自然と共に生活している様子が感じられますが、それと同時に幸せに満ちている笑顔、楽しそうに踊る姿、高らかな歌声から生命の誇りと活力も感じられます。
草原の夜
草原の夜は静かで穏やかです。三日月が東から夜空に昇り、雲の姿は月光の光と影の変化に伴って、絶えず表情が変わります。草むらの中ではコオロギや鈴虫などが元気に歌い比べ、「自分が一番の歌手」だとのど自慢しています。
この時、蒙古族のパオから馬頭琴の美しい音色も流れてきました。その寂しげで深い音色は故郷、草原、母親への深い愛着を訴えているようでした。私の心もそんな馬頭琴の音色に乗って、草原の奥へ飛んでいくような気持ちになりました。きっとその先には、人々にやすらぎをもたらす心の家があるからなのかもしれません。
番組の中でお送りした曲
1曲目 乌兰姑娘(ウラン娘)
歌は蒙古族の若手歌手・烏蘭図雅(ウーラントゥーヤー)が歌っています。「モンゴルの花」と称されている彼女は、伝統的な蒙古族民謡を現代風にアレンジして歌い、若者の間で高い人気を集めています。
歌詞:
草原のウラン娘を思い出す
あなたの歌声はなんと美しいのだろう
まるでヒバリが鳴くよう
私は馬頭琴になりたい
あなたのために奏で共に響きたいから
草原の美しいウラン娘よ
私の花嫁になってくれますか?
2曲目 美丽的草原我的家(美しい草原の我が家)
この歌は有名な蒙古族のメゾソプラノ歌手・ドードー・マーのデビュー曲で、その美しい響きのある歌声が蒙古族の持つ草原への深い愛情を表現しています。ドードー・マーは1978年にこの歌で音楽界の注目を浴びることになりました。
歌詞:
美しい草原の我が家 風は緑の草むらを吹き渡って花開く
色とりどりの蝶が舞い 白い鳥が歌う
川の流れに夕日が輝いている
馬はたなびく雲 牛と羊は輝く真珠のよう
羊飼いの少女の心地よい歌が 空の果てまで響き渡る
3曲目 草原之夜(草原の夜)
この歌は1959年のドキュメンタリー「緑の野原」の挿入歌で、歌は辺境に駐屯する若者が故郷の恋人への思いを歌いました。1990年には、世界でも有名なセレナーデとしてユネスコに登録されました
歌詞:
美しい夜はなんと静かなのだろう
草原には僕の馬頭琴の音色しか響いていない
遠くにいる彼女へ手紙を書こうと思うが
思いを伝えてくれる郵便配達人がいない
千里の雪が溶けて
春風が草原に吹き渡る時になると
彼女は僕の馬頭琴の音色に伴ってやって来る