北京
PM2.577
23/19
聞き手:王小燕
国際日本文化研究センター所長で、2016年度日本の文化功労者に選ばれた小松和彦さんに引き続きお話を伺います。
中国伝来の「妖怪」という言葉が日本社会でどのようにして定着したのか。そのプロセスを遡っていくと、なんと、「妖怪撲滅」というキーワードにつながる・・・?
「ゲゲゲの鬼太郎」などを始め、数多くの妖怪をモチーフに漫画を描き、また、数多くの妖怪画を描き残した作家の故・水木しげる氏、そして陰陽師を主人公にした作品など、妖怪文化の最新の研究成果をふんだんに取り入れた推理小説書く京極夏彦氏にまつわるエピソードも。
そして、妖怪博士の「妖怪の好み」もお聞きしました。小松さんにも、妖怪の好き嫌いがあるのでしょうか。
ジブリ映画の「平成狸合戦ぽんぽこ」(原作・監督・脚本:高畑勲、1994年)は、小松さんが高く評価している作品です。映画の中では、都市開発に負けてしまったタヌキたち。もし彼らに会えるなら、何を伝えたいのか。そこにどのような気持ちが込められているのか。
今回も「CRIインタビュー」でしか聞けないエピソードが盛りだくさんです。
■抜粋:小松和彦さんのインタビューから
――妖怪学に心酔した理由は?
神社に祭られている神様が、ある意味で人類の理想を表しているとすれば、人間の一番醜悪な部分を体現するのは、ひょっとしたら妖怪なのかもしれません。そういう目で見ていくと、神がいたら、セットで妖怪も考えたい、というのが、妖怪学を考える一つの理由ですね。
――「妖怪」と「ゴジラ」などの違いについて、どう捉えていますか。
ゴジラやエイリアンは未来や、宇宙からやってくるもの。対して、妖怪は過去と深くかかわっていて、過去の文化を引きずっている。水木しげるさんの妖怪画を見ると、どこかノスタルジックな気持ちに誘われるのがその一例です。
――日本では、「妖怪学」は妖怪を撲滅する中で始まった学問とおっしゃいましたが…。
基本的に妖怪はどんどん撲滅されていくのですが、同時に、撲滅するに値するだけの文化の発展もあったことかと思います。しかし、今度は撲滅ではなく、それを楽しむ文化をどんどん作っていけば良いのではないかと思っています。
――妖怪学を研究する学者として、外国人に一番伝えたいメッセージは?
アニメやゲームなどを通して日本文化に関心をもった人なら、妖怪文化にもきっと出会えるだろうと思います。日本文化というのは、富士山や、源氏物語、能、茶道、華道などだけではありません。今まで知られていなかった、「妖怪文化」という大衆文化もあるんだということも理解してほしいです。そして、新しい日本研究の未来はきっとそういうところにあるんじゃないかと私は思います。
■抜粋:先週のインタビューへのリスナーさんの感想
★Senxia Heyanさん
小松教授のインタビューを聴いていて、ふと柳田国男の遠野物語を思う私です。最近ああいう世界からは遠ざかっていたので何か懐かしい不思議な感じが自分の中に湧き起こって来ました。これはこれでなかなかいいものです。
★ゲンさん
妖怪談義が北京を経由して日本で聞けるとはびっくり。
小松先生の妖怪愛にどっぷり浸かれました。妖怪は人間が作った文化。
妖怪を見ていると人間が見えてくるという、優しい温かな先生の語り口に魅かれました。
ドラキュラも妖怪という、日本文化が取り入れた雑種性のお話は目からウロコでした。
中国の妖怪のお話も聞いてみたいものです。来週も楽しみにしています。
★Jason_嘉言さん
民俗学の資料を集めている最中です。とても面白い分野だと思います。先日、日本の『羽衣伝説』に関する論文を読んだばかり。そんな中での小松先生のインタビューですので、心から感謝しています。
ご意見、ご感想はどうぞriyubu@cri.com.cn宛にお送りください。
この番組「CRIインタビュー」はPodcastや中国のネットラジオ「ヒマラヤFM」でもお聞きいただけます。
【プロフィール】
小松 和彦(こまつ かずひこ)さん
国際日本文化研究センター所長
1947年東京都出身。
文化人類学者、民俗学者。口承文芸論、妖怪論、シャーマニズム、民間信仰などを研究。
文化人類学の切り口の1つとして、妖怪について研究し、学問として確立。
2016年10月 日本の文化功労者に選ばれる。
中国では、学術界だけでなく、ACG(マンガ、アニメ、ゲーム)など日本のサブカルチャー愛好者から、「妖怪博士」として知られている。
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