今お聞きいただいているのは、清の時代の末期、元重慶駐在のドイツ領事であるフリッツ・ウェス氏が収録した船歌です。1911年、ウェス氏は重慶へ赴任するため、武漢から船に乗って揚子江を遡っている途中、三峡あたりに差し掛かった頃、歌を歌いながら必死に船を引張っている船頭たちに深い印象が残りました。ウェス氏が撮った録音と大量の写真などは現在中国で保存されている最も古い船歌です。

　揚子江は、全長6300キロで、中国の東西を貫いており、「黄金の水道」と呼ばれています。重慶は揚子江の上流にあり、「朝天門」埠頭は揚子江上流における最大の港です。しかし、重慶が世界で注目を浴びたのは第二次世界大戦の時のことです。

　1937年、当時中国の首都である南京が日本軍に占領されたため、国民党政府は重慶に移りました。それから1945年までの8年間、重慶はずっと戦時の首都でした。その間、多くの企業や、学校、文化団体なども重慶に移りました。この大移転は重慶の歴史における大きな発展の第一歩でした。

　1949年、中華人民共和国が成立しました。大量の工業企業が集まっていた重慶が直轄市の一つに指定されました。1954年、重慶は四川省の管理下に置かれましたが、1997年、中央政府は再び重慶を直轄にした上で、三峡地区のすべての土地を重慶の管轄範囲に加えました。再び直轄市になった理由について、重慶市発展改革委員会の楊慶育主任は次のように述べました。

　「最も大きな理由は、三峡ダムプロジェクトの建設によって発生した移民問題を解決するためです。歴史を数百年遡ると、国内や海外で大型のダムを修築する際、最も大きな問題は技術的難題ではなく、移民によって発生する問題なのです。中国政府は百万人に上る三峡の移民の生活をよく解決するために、重慶の行政レベルを再び直轄市に昇格させたのでしょう。」

　三峡ダムは世界で最大の水利中枢プロジェクトです。水門は湖北省の宜昌市に据え付けていますが、ダムの主要部分は重慶にあります。去年末までに、重慶市政府は累計して103万人の三峡移民の移転を完成させたとのことです。それと同時に、三峡ダムの貯水深度は去年10月に156メートルに達し、1万トン級の大型船が重慶の朝天門埠頭まで直行できるようになりました。

　今日の重慶市は、面積が8万2400平方キロで、その下に40の区や県が置かれ、人口が3200万人に上り、中国で面積の最も大きく、人口が最も多く、資源が最も豊富な直轄市になっています。ここ十年間、重慶はすでに中国の西部地区で最も魅力的な投資先となりました。これについて、重慶市の王鴻挙市長は次のように述べました。

　「資本を引き付けるには、地理的条件は最も重要な条件の一つです。重慶は地理的に恵まれています。経済的地理から見れば、重慶は中国の南西部にありますが、自然的地理から言うと、重慶はちょうど中国の中心部にあります。」

　地理的に恵まれている上、重慶の交通も非常に便利です。鉄道や、高速道路、空輸システムがいずれも完備されただけではなく、「黄金の水道」揚子江のため、水運もかなり発達しています。これらの条件が備わっている重慶は、現在、中国南西部の経済の中心地を目指して大きく躍進しています。