「省エネ」「資源節約」などといった言葉を、毎日のように耳にします。水をはじめ、石炭・石油・天然ガス・金属といった資源は限られており、いつか底をついてしまいます。
そのため、現在、世界各国で、科学技術を利用したエネルギー開発が盛んに行われています。そのひとつの例が、原子炉開発でしょう。しかし、原子炉は、爆発・放射線漏れなどの危険を伴います。また、使用済み燃料の処理についても議論が続いており、より安全なエネルギー開発を求める声が高まっています。
中国でも、クリーンな燃料を利用して、無限にエネルギーを供給できるシステムの研究が行われています。たとえば、熱核反応を応用したシステムです。これは、水素を爆発させることによって生まれるエネルギーを利用する技術です。使用する原料はデューチリウムなどで、これは海水から取り出すことができます。海が原料供給源ということで、原料は基本的に無限です。つまり、このシステムが確立されれば、太陽エネルギーのように、半永久的な供給が可能なのです。また、原子炉のような危険性もありません。
4月2日、中国科学技術大学の関連施設を取材した際、この新エネルギー開発の現場を見学することができました。私が訪れたのは、合肥市郊外の物理研究院です。案内をしてくれた秦芝さんという女性は、昨年、中国科学技術大学の修士課程に進んだばかり。秦さんによると、現在開発中のシステムは、工程中に発生する放射線も安全基準内で、問題はないそうです。また、実用化をめざして、アメリカ・EU・日本・韓国・インドなどと共同研究が展開されています。そのなかで中国は、科学者を多く輩出している中国科学技術大学がリーダーシップを取り、日々、研究開発を進めています。
ただし、この研究には、莫大な費用がかかります。中国の場合、少なくとも1日あたり10万元(日本円で150万円)が必要なことから、まだ大々的には実施できないとのことです。しかし、この最前線の現場を見学していると、資源不足問題に対する不安がいくらか取り払われたような気がしました。研究の成功を祈ります。(文:朱丹陽)
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