オリンピック誘致に成功して7年間、北京を始め、数多くの競技施設と関連施設が作られました。『グリーンオリンピック』を徹底するため、設計と建設の段階から、省エネなどに配慮し、様々な環境に優しい技術が盛り込まれました。例えば、主催都市の北京は水が乏しい都市なので、水の節約とリサイクルは設計・建設の段階で最も意識されました。そのうち、最も多くの水が必要とされるオリンピック公園では、グリーンオリンピックを実現するため、水のリサイクルが徹底されています。オリンピック公園の設計を担当した胡潔さんは、「北京は、水資源の乏しい都市だ。だから、オリンピック公園の設計では環境に優しいことを強調するため、水のリサイクルを導入した。オリンピック公園は、グリーンオリンピックの模範とも言える場所となっている」と語りました。
いったん、使用された水はその後、公園の噴水、体育館の清掃、緑化などに使用されます。オリンピック誘致に成功した2001年から、北京では10ヶ所の水リサイクル処理工場が建設されました。去年だけで、北京市は、4億8千万立方メートルの水が再利用されました。
また、太陽、風、地熱などのエネルギーも大いに活用されました。北京オリンピックの関連施設ではグリーンエネルギーの利用率が26%に上っています。北京オリンピック競技施設では、太陽エネルギーの利用だけで、年間58万キロワットを発電しています。これにより年間570トンの二酸化炭素の削減に成功しました。
また、『グリーンオリンピック』の約束を果たすため、北京市は、大気の質の改善を強化しました。例えば、北京の郊外にある首都鉄鋼の工場の一部が移転されました。北京に残された精錬工場でも厳しい管理が行われています。首都鉄鋼の穆懐明課長は、「生産量を下げたり、環境改善の措置を取ったりして、2008年の汚染物排出量は去年より50%減る見込みだ。特に、今年の第三四半期の汚染物排出量は去年の同期より70%減る見込みだ」と語りました。
首都鉄鋼のほか、北京市コークス生産工場も全面的に生産を停止し、移転の準備をしています。環境保護部門の予測では、これにより年間、大気汚染物質の排出量を7300トン減らし、二酸化炭素の排出量を7500トン減らすことができるということです。張希文社長は、「工場は市の中心から10数キロ離れている。都市の規模が拡大するにつれて近くなってしまった。グリーンオリンピックにとっては工場の移転が必要になった」と語りました。
汚染物質を排出する企業を移すほか、北京市は、車による排気ガスの削減に力を入れています。厳しい基準を実施したうえで、オリンピック期間中、車のナンバープレートにより走行制限を行います。これにより、車による汚染物の排出が最大限に抑えられます。
また、北京市は河北省などの周辺地域にも、汚染物の削減を求めています。
グリーンオリンピックの理念を徹底させるため、北京市は、市民に対して、都市の緑化活動に参加するよう呼びかけました。2007年の緑化面積は全体の51%になりました。
今、グリーンオリンピックの理念は、市民の心の中にも定着しています。例えば、北京市内の高校生、葉璐さんは、環境改善の活動に取り組んでいます。彼女は、10歳の時から、環境保護の活動を手伝ってきました。これまで内蒙古の砂漠で植樹活動をしたり、使用済みの電池を収集したりしています。葉璐さんは、「一番大事なのは、やっぱり個人の環境保護意識だ。そうすれば、皆が乾電池の回収やごみの分別、水の節約をするようになると思う」と語りました。
葉璐さんの努力は、国際的にも認められています。アテネオリンピックと北京オリンピックで、彼女は聖火ランナーにも選ばれました。
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