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「中国の発展は日本の発展、日本の発展は中国の発展」
   2008-10-31 17:20:31    cri

「中国の発展は日本の発展、日本の発展は中国の発展」

日本銀行北京代表所 瀬口清之代表に聞く





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 【プロフィール】

 2006年4月、北京に赴任。1991年ーー93年の北京滞在に続き、二度目の中国駐在になります。北京や上海を拠点に、全国各地を駆け回り、中国経済の最前線をウォッチし続けています。

 中国の改革開放や経済発展の現状について分かりやすく解釈をしていただくほか、中日の相互依存関係、または、国際金融危機を背景にした両国のあり方への期待を語っていただきました。

 ■中国経済の減速は構造変化によるもの

 記者 20日、国家統計局の公開した今年1-9月までの主な経済指標では、中国のGDPが6年ぶりに10%台を割り込んだことが注目されていますが、こうした動きをどのように受け止めていますか。

 瀬口 中国経済の成長率が減速方向に向かうという方向感自体は、予想された通りのことです。ただ、変化のスピードが予想よりも速いことが大きな特徴です。中でも、五輪の影響で工業生産が落ちてきたのではないかという見方も一部にあったようです。しかし、実際には五輪の影響ではなく、輸出の減少、住宅投資の伸び悩み、自動車の販売動向の低迷などにより、いくつかの主要産業で生産の減少が見られました。それが製造業の減速につながって、そのため、GDPは足元が鈍化してきたように思います。

 今回の変化は予想よりも早い変化ではありますが、何か意外なことが起きたのではなく、中国政府がこれまで目指してきた輸出投資主導型の経済から輸出と投資がバランスのとれた経済にするということです。そういう意味では、今回の変化は、中国政府の目指した通りの変化だったと言えます。

 記者 ということは、中国経済の健全な成長のため、これは必要な措置だったとお考えですか。

 瀬口 私はそう理解しています。中国のこれまでの経済成長のパターンは、輸出が力強くて、経済成長のスピードが速すぎたという問題があったり、大きく成長した後に大きく沈む危険性がありました。そういうリスクを軽減するためにも、中国政府を目指してきた消費を景気のリード役にもってくるという方向は正しいことだとも思いますし、まさに、今、その消費が力強い歩調をもって、中国の経済を支えてきている存在になっています。そういう意味で、中国経済が目指している方向にうまく構造変化を遂げていると私は理解しています。

 ■ 発展の原動力は農村にある

 記者 中国の改革開放は農村の改革からスタートしました。その改革開放が30周年になる今年、10月中旬に開かれた三中全会は、再び農村の発展と改革に関する決定が発表されました。こうした動きをどのように見ていますか。

 瀬口 農村改革は、今から5年前から中国にとって、最も重要な経済課題のテーマとして取り上げられ続けてきました。ただし、解決が難しいため、時間がかかったわけです。さらにここで核心部分にふれる改革を推進していこうということで、三中全会で大きなテーマとして取り上げたのだと思います。

 中国はいま、まだ40%以上の人が農業に従事して生活をしています。この人たちが安定的に生活を営み、社会に満足することは、中国の経済のみならず、政治、社会の安定にとって非常に大事です。

 中国の今の発展の勢いは、農村の人たちが都会に出てくることにより生じた一連の消費です。彼らは必死に頑張って、「少しでもよい生活をしたい」と本能から噴出すエネルギーが、中国経済の力強い原動力になっていると思います。

 彼らが希望を失わずに、「自分も農村から都市に行って頑張るんだ」という気持ちが中国全体に溢れている限り、今の力強い成長がずっと続くと思います。

 日本も高度成長期は、農民がどんどん都市に流れ込んだ形で高度成長が実現していました。日本の農業人口は戦前の1940年には40%、1950年に一旦45%に増えたが、1960年に一気に30%にまで減り、その後、1970年に20%、1980年代に10%に減りました。農村から都会に出てきた人たちの誰もが止められないパワーが爆発的に炸裂して、日本の経済を押し上げ、1980年代に日本はG7の国に仲間入りし、完全に先進国を追いつくことができました。今の中国は、まさに、そのパワーの炸裂をさせている真っ只中にあると思います。

 記者 そういう意味で、改革開放はいま、たいへん要の時期に入ったと言えますね。

 瀬口 中国の経済発展は、これまで、がむしゃらに発展する時期が長かったと思います。今後は社会の安定を視野におきながら、どうすれば幸せになれるかにを考え、ある程度バランスを配慮した時代に入ったと思います。これまでの30年の改革開放の大きな果実を皆が共有できている前提があるからこそ、次の30年に向けて、皆で一緒に頑張ろうという気持ちになれると思います。

 ですから、今回の三中全会で、「もっと皆で豊かになろう」と呼びかけ、そこで、一番もっと豊かにならなければならない人は農村の人たちです。農村の人たちが都会に入ってくる時のパワーが、金融動乱の逆風をも跳ね返すほどのすごさがあると思います。

 ■環渤海経済圏の発展が日本企業のチャンス

 記者 中国の改革開放が絶えず深化している中、日本企業にとって中国進出のメリットをどう考えますか。

 瀬口 中国の改革開放は、これまで三段階の発展が見られたと思います。

 つまり、1980年代、深せんを中心とした珠江デルタの発展。1990年代から2006年頃までの上海を中心とした長江デルタ地区の発展。そして、まさに今、天津の濱海新区を中心とし、北京、河北、山東、遼寧などを含めた環渤海経済圏の浮上です。

 長江デルタ地区の発展は時期的に、丁度、日本がバブルが崩壊して、やっと経済がを正常化し始める直前の状態でした。日本経済が下降し続けた時代にもかかわらず、企業はこの地区に大量の投資をし、中国とともに発展していくことをうまく自分たちの力にしてきました。

 一方、今、世界の金融動乱の中で、野村證券がリーマンの一部分を買ったり、東京三菱UFJがモルガンスタンレーに投資をしたり、日本企業の収益が改めてクローズアップされています。いまは、日本企業の世界での経済的影響力が高くなりつつあり、もともと持っていた元気をこれからもう一回発揮するぞという時期です。

 こうした中、中国は環渤海を一つのリーダ役とした新しい内需の時代が始まろうとしています。日本企業がこれにうまく入っていくことができれば、非常に大きなメリットが得られると思います。

 また、内需の時代は、重厚長大型がどうしても出てくるので、中国では、環境問題やエネルギー問題が注目されています。それから、中国はワンランク上の消費を目指してきたので、それらを支えているトップの技術が日本にあります。

 ヨーロッパのドイツも、高い技術水準を有していますが、地理的に中国から遠い上、東ドイツや東欧がその最大の資源投入先になることでしょう。それに対し、日本は中国の最大の資源を投入しており、中国とともに発展するメリットがあると思います。

 そのため、日中間はこれまで、良好な関係にあると思いますし、これからも益々その関係が強化されていくと思います。

 ■ 中国の発展は日本の発展、日本の発展は中国の発展

 記者 瀬口さんはこれまで、スピーチの中で、中国と日本の相互依存関係を強調してきましたが、それを具体的に言いますと?

 瀬口 日本は1980年以降、安定成長の時代に入って、今の中国のように、自立的に内需でどんどん高度成長をとげる時代でなくなりました。日本は、世界トップレベルの技術やサービスをたくさん持っています。市場さえあれば、もっともっと売れる力があると思います。残念ながら、日本国内に閉じこもれば、その機会はありません。

 隣の国の中国はまさにこれから開けると言う状況なので、日本がその中国とともに発展することができれば、中国の市場に日本の素晴らしい技術とサービスが入ってくることによって、日本の人たちもそこから大きなものを得ることができるというふうに思います。

 逆に中国のほうにとっても、これからどんどん発展していかなければなりませんが、まだまだ先進国にくらべると、技術やサービス、制度、市場化の面などで、色々と学ばなければならないものがたくさんあると思います。それを学ばずにいると、東南アジアの国々に追いつかれ、追い越され、競争力がどんどん低下してしまいます。中国にとって、これからこそ技術とサービスを磨く時代になります。

 過去に日本も海外から学びましたが、中国もいま、海外から学ぶことがたくさんあると思います。この中、 日本は中国と近いし、歴史的に見ても、非常に親和性が高い。日本は中国にとって、非常に特殊な存在です。その日本から学び取れるサービスと技術は、中国のこれからの発展の肥やしになると思います。

 日本の存在が中国の発展にとって非常に重要で、もし日本のことを活用できないと、どんどん後から追いつかれて、長期の発展を遂げることが難しくなってくると思います。そう意味で、中国は長期の発展を遂げるには、日本が必要だと思います。

 日本と中国が互いに信頼しあい、がっちり協力をして、良いところを出し合えば、両国が世界の中心になって、輝いていくことは間違いないと私は思います。

 ■ 日本銀行業にとっての中国、「国際競争に向けての練習の場」

 記者 金融業を例に、両国の経済交流と協力の実態をご紹介ください。

 瀬口 両国間の協力といいますと、今までは政府同士の協力が中心になっていました。実際、日本銀行と中国人民銀行の間で非常に良い協力が行われており、世界の中央銀行の中で最も仲の良い二つの銀行だと言われています。しかし、それは色んな協力の中の一部。これからは、協力の中心は民間企業だと思います。民間企業の協力がどんどん発展していくように、それを支援するのが政府の役割です。

 一方、日本の金融機関はこれまで日本の企業をサポートするものとして、発展を遂げてきました。世界のリテールバンキング(小売り銀行業務)の世界の中で、まだ、競争力が十分発揮できていないように思います。たとえば、中国国内でリテールバンキングをうまく発展した香港上海銀行や、シティーバング、スタンダードチャータード銀行に比べると、まだ後発です。

 日本の銀行は非常に安定感のあるビジネスをし、お客さんへのサービスも一生懸命やっているので、本来ならば、リテールビジネスで競争力をもっているはずです。しかし、残念ながら、現状はそうではありません。私はその原因は国内競争の不十分さにあると思います。自動車や家電は、日本の中の商売が世界のトップクラスの競争につないでいますが、金融業の場合は、政府が決めた様々な規制があり、十分に競争できない環境にあります。世界の銀行は効率を上げ、コストを下げるために、あらゆる知恵と技術を絞って戦い抜いてきました。そういうところに制約がないのが前提条件ですが、日本の現状では十分に競争することができていません。

 しかし、中国に来れば、世界のトップレベルの銀行と同じ土俵で戦えるわけですので、今まで以上に、もっと自由に競争力を発揮することができます。こういうことは、急にやると、失敗する可能性がありますので、徐々に一生懸命に努力していけば、自由な競争に自分も加わるチャンスがあると思います。

 日本はこれから、中国という市場を使って、金融分野も世界の一流の銀行と戦っていけるような競争力をつけるトレーニングをしていく場にできるのではないかと思います。

 ■世界金融危機の対応、「日中の協力で世界に貢献を」

 記者 当面の世界金融動乱の対応に、中日両国に何が求められますか。

 瀬口 世界経済が今後、非常に厳しい時代が来ると思います。どこまで金融動乱の影響が広がるのか、どこまで深く経済を落とすのか、世界中の誰にも分からない大きなリスクに直面していると思います。その世界経済の大きなうねり、大きな困難の中で、おそらく、一番元気な中国と、先進国の中で、一番健全な経済状況を保っている日本、この二つの国が一生懸命に協力して、世界経済のために貢献していければ、世界のいま直面している大きなリスクの突破に、大きな貢献が果たせるのではないかと思います。まさに、これから起こってくることに対して、中国と日本が互いに、緊密に意見や情報を交換して、どうやったら、二つの国の協力関係が貢献できるのか、どうやって世界経済をリードしていけるのか、それを真剣に考える局面に入ったと思います。

 そして、もし世界の大きな混乱を、日中の協力を着実に構築しながら、乗り切ることができれば、日本と中国は世界の中で、またもう一歩高い地位で大きな影響力を発揮できる段階に入っていくのではないかと、私は期待しています。

 それは、単独の国でできることではないと思います。日本と中国が、お互いに信頼しあい、尊敬しあい、協力しあい、初めて大きな世界の貢献ができるのではないかと私は思っています。(聞き手:王小燕)

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