天安門広場の西南側に西交民巷と呼ばれる静かな通りがあります。この一帯は解放前まで、中国金融業の中心でした。各銀行はこぞって店舗を構え、最盛時には15もの銀行があったそうです。
その一つに保商銀行というのがありました。1910年の創立で、主に天津の貿易商などを相手にしていました。その10年後に、西交民巷で普通商業銀行としての営業を始めました。中国銭幣博物館は、この建物を利用して2003年にオープンしました。由緒ある建物ですから、北京市の「文物保護単位」の指定も受けています。
実は博物館は1992年に中国人民銀行総行(本店)の中に、ひっそりと設けられていました。貨幣の収蔵、展示は、中国の歴史と文化を広く伝えるためにはどうしても必要です。しかし、銀行の業務のかたわら、見学者を大勢迎え入れる、というのは安全面でも心配です。5、6度の引越しでやっと落ち着いたわけですが、関係者は「もっともふさわしい場所」と喜んでいます。
玄関を入ると1階が特別展示、2階が秦から清代までの古代銭、3階が近代銭の各コーナーとなっており、陳列台の前には、丁寧な説明文が並んでいます。日本語のできる案内員もいます。日本語テープが聞けるガイドホーンの貸し出しもあるので、安心です。
中国で銅銭が使われ出したのは、紀元前221年、秦帝国が成立してから、といわれています。直径5センチぐらい、真ん中に穴があけられたもので、当時、重さを量る単位だった「銖」が、そのままお金を数える単位となりました。これが唐代の初期まで続き、その後は「宝」となり「圓」、つまり「元」を呼称にするようになったのは清の時代になってからです。皇帝が変われば、貨幣が新しく作られたことが多く、清の康煕帝時代は61年間も同じものが使われたそうです。一方で、鋳造されたものの、流通しないままに終わった短命皇帝の例もあります。
博物館に入ると、こうした歴史の流れも理解できます。収蔵品は約30万点です。月曜を除く午前9時から午後4時まで参観が可能。入館料は10元。地下鉄なら前門下車が便利です。
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