幸い、馬は嘶いたりはぜず、黙って言われたとおりかの雲のかなりあとからついていく。やがて白い雲はぽつんと建っているある一軒の屋敷に近づき、ふと中に消えてしまった。これをみた和尚と弟子は、何がなんだかわからないのので、家にいくらか近づき様子を見ていた。すると中から声がする。
「どうしたんだ?庭の荷車に繋いであった牛が倒れたぞ」
「ああ!?鶏小屋の中の鶏が全部死んでいるぞ!」
「部屋の中の猫がおかしい」
そして屋敷の中から多くの驚きの声と恐ろしさに震える声が聞こえた。すぐに屋敷から誰か逃げ出してきたようなので、和尚は、馬をおり弟子と一緒にそのものに近づいた。それは屋敷の下男のような身なりをした年寄りだった。
「お年寄り!いったい屋敷の中で何があったのですか?」
「大変です!うちの何人かの若い坊ちゃまが急に倒れ、息を引き取りましたのじゃ。誰か助けてくだされ!!」
下男はこういってまた屋敷の中に走り入っていった。そこで和尚と弟子がそれに続いて入ろうとするとなんと両足が動かない。二人がこれは?と驚いていると屋敷の中からのものすごい悲鳴が聞こえた。やがて二人が動けないまま、深夜となり、そのうちに夜が明けた。このとき、屋敷からかの怪しい白い雲が出てきて、どこかへ行ってしまった。このときに二人はやっと動けるようになったので、さっそく屋敷の中へ入ってみようと思ったが、とても恐ろしかったので、屋敷の遠くにある家々の人を呼び起こし、みんなと一緒にその屋敷の中へ入ってみた。するとどうだろう。屋敷では主人から下男までの十数人のほか、猫や犬とすべての家畜が口から血を流して死んでいたではないか。
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