パロディーという言葉は元々英語で、伝統的な名作や有名人の話などの内容を面白おかしく作り直すものです。日本の「替え歌」はそれに似ているものの一つです。そして、今、中国で流行っているのは、インターネット上でのパロディーです。ちなみに中国語ではといいます。その風潮は今年の一月ごろから起きています。きっかけは胡戈という元ラジオ局のDJがテレビ局の法律番組の形をとって、名監督陳凱歌(チン・カイコー)の映画「プロミス」(「無極」)をパロディー化しました。このパロディーのタイトルは「饅頭による殺人事件」で、まったくのフィクション。内容は特に深刻なものでもありませんが、一時、「饅頭」は流行語になりました。しかも、作者胡戈さんはもう少しで陳監督に「著作権違反」で提訴されるところでした。彼はこれについて、こう説明しています。
「これを作った目的は、一つはこの映画に対して、自らの意見を言いたいということ。もう一つは、面白いものを作りたい。三つ目は映像の編集技術の練習。そんな動機だったんですが、やはり面白い形で、社会現象に対して、自分の意見を現したい思いがあるんですよ。」
黄健翔さんはCCTV・中国中央テレビ局でサッカー実況を担当しており、キャリア13年間、経験豊かで、人気のあるスポーツアナウンサーです。ちなみにすごく個性のある方です。今年のサッカーワールドカップの、イタリア対オーストラリアの試合の中継を担当し、終了前の三分間、彼はイタリアに肩入れをした持つ実況を連発しました。そして、イタリアが勝った瞬間、なんと「イタリア万歳!」と叫んだのです。その後、ほとんどのメディアでは、彼はアナウンサーとして失格だという議論が沸き起こりました。その後、彼のあの三分間の絶叫は、すぐ色々なバージョンにアレンジされ、各種のメディア、特にネットに広がっています。みんなが不満に感じる社会現象で、携帯電話産業のおかしい現象、不動産販売の裏話など、彼の口調を借りて、パロディー化してからかっています。
パロディーのもう一つの代表的なケースがあります。清華大学のある教師は自分のブログにアイドルをパロディー化する油絵を掲載し、そして皮肉な口調の説明もつけたのです。彼の作品はあちこちに転載され、賛否両論が沸き起こりました。一部のネット利用者には好評でしたが、「肖像権違反」と彼を提訴しようとした人もいるそうです。この安廸という教師は自分の考えをこのように話しています。
「ただ、アイドルには、こんな見方もあるんだ、とみんなに知ってもらいたい。実は、みんなを笑わせたいだけなのです。アイドルを攻撃していると言う人は、まだその面白さがわからないでしょう。まあ、法律で判断してもらえれば良いですよ。」
最近、パロディーの対象は一般的な映画やドラマ、流行歌だけではなく、歴史小説や時代を代表する名作、そしてみんな尊敬している人物にも広がっています。それに関する論争はもう、ネットの世界を超え、社会全体に広がっているようです。今のような、文化が多元化した時代では、いたずらのネットパロディーが流行ってもそれなりの理由がありますが、伝統的な名作やみんな尊敬する人物、そして伝統的な価値観をパロディー化すれば、人々の感情を傷つける恐れがあります。特に心配されるのは、価値観がまだ固まっていない青少年に悪い影響を与えるのではないかということです。
これに対して、北京師範大学の学生は、ネットパロディーは人に対する最低限の尊敬が必要だという態度です。
「多くのパロディーは、社会に存在する良くない現象への皮肉を込めているもので、いいものが多いですね。しかし、人の尊厳を傷つけ、人の利益を損なうのを目的にするパロディーは許せないです。まあ、どんなパロディーでも広く言えば、一種の芸術作品じゃないですか。芸術に関するものなので、いいか悪いかを判断する基準はみんなそれぞれ違いますから、最終的な判断はやはり社会全体の反応だと思います。」
中国でもっとも代表的なボータルサイト、シーナーネット「新浪網」の管理者も同じ考えを持っています。侯小強副編集長は「ポータルサイトはネットの内容を広げる最大の管理機構として、パロディーの内容を把握する責任がある」と次のように話しています。
「やはりパロディーの内容を判断しなければなりません。ただみんなを楽しませるため作ったもの、しかも道徳や法律に背くことがなければ、別にかまわないですが、道徳と法律に違反し、人の利益を損なうことになったら、許されないと思います。いずれにしても、どんな業界でも一定の段階に成長していけば、それなりの規範を作らなければならない。もし、混乱した状態が続けば、悪い結果がもたらされるに違いありません。」
「自由な世界」ともいわれるネット社会でも、現実の社会と同じで、それなりの行動規範があるはずです。先日、北京放送の記者は国家ラジオ映画テレビ総局の楊培紅氏を取材しました。それによると、ネットで番組を制作、放送するのは、やはり許可証を取得しなければならないということです。そして、許可証を取得した機構は、責任を持って、ネット放送番組を審査すべきだということです。
「規定では、パロディー制作側の具体的な責任を特に決めていません。パロディー番組の制作は個人の場合が多いですね。しかし、それを放送するのはネットメディアです。それを発表する以上、それなりの責任を負わなければなりません。」
また、関係者の話では、どんなパロディーを放送すれば良いのかについては、メディアは判断力を持つべきで、監督資格を持たない、あるいは監督しようとしないネットメディアに対しては、一般的なメディア関連の法律に従い対応するということです。
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