次のお話です。「野人閑話」という書物から「ネズミ薬」です。
「ネズミ薬」
むかしむかし、ある町に一人の爺さんがいて、ぼろぼろの服をまとい、物乞いするのではなく、汚い袋を提げて人の多いところの角に座り込み、なんとネズミ薬を売っていた。
「さあ、買った買った!わしの薬はネズミを殺せるだけでなく、人が呑めばどんな病でもよくなるよ!さあ、買った買った!」と叫んでいる。
これには道行く人々も笑い出すのは当たり前。
「おいおい!なんだよ爺さん、ネズミ薬で人の病を治すんだって?馬鹿いうなよ」
「そうだよ。人がネズミ薬を呑めば、死んでしまうぜ!そんなことしてると役所につかまるぞ!」
「ホントだ!早いことどこかへ隠れてしまいな」
こういってみんなは馬鹿にする・
「何を申す。わしの薬は人の病を必ず治せるんじゃ」
「じゃあ、爺さんよ。あんたのネズミ薬を自分で食べてみな」
「ああ。若いの見ておれよ」
と爺さんは、自分の売っている薬をみんなの前に幾つも呑んだ。ところが爺さんには何の変わりもないので、みんなは何の効き目もない薬だと思って相手にしなかった。
さて、この町には古本を売っている張という年寄りがいた。実はこの張老人、長い間、足腰の骨の痛みに苦しんでいたが、どうもいい医者と薬がないので困っていた。
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