さて、暫くすると部屋の中では、卓上にあった置物が勝手に動き出し、また変な鳴き声がした。このとき目をつぶっていた幸霊が急に目を開き光らせた。すると、置物は元のところにかえり、変な鳴き声もぴたっと止んだ。そこで幸霊は何事も無かったかのように部屋を出たあと別荘の主である高悝に「もう大丈夫だよ」と言い残し、礼金も取らずにそのまま帰ってしまった。
このときからこの別荘では何もおかしなことは起きなかったという。
しかし、その後、幸霊はどうしたことか自分の家には帰らず、どこかへ姿を消してしまった。
それから数年たったある日、幸霊の兄が遠くに旅に出かけて怪我をしたとき、弟の幸霊が現れて兄の怪我を治し、また多くのものを土産に持たし家にかえらせたという。