北京の文化財と言えば、万里の長城や、故宮、四合院をまず思い浮かぶでしょうが、実は、庶民たちが長年住んできたそれぞれの四合院を結ぶ「胡同」も、1000年ほどの歴史があり、無視できないものです。
「胡同」は、日本流に言うと、「路地」や「横丁」のことです。北京が中国全国の首都になったのは、モンゴル人が樹立した王朝である元の時代だったので、「胡同」の語源は、モンゴル語で「井戸」を表す「フタグ(hutag)」だという説が一般的です。
最新の調査によりますと、現在、北京には、「…胡同」という地名を持つのは、1300カ所あり、広い地域の胡同と言える巷や街などを含めれば、6000以上に上っているとのことです。これらの胡同をつなぐと、万里の長城とほぼ同じ長さになります。
それらの胡同のうち、自動車が楽に通れるほど広いものもあり、幅が数十センチメートルしかないものもあります。例えば、前門の大柵欄地区にある銭市胡同は、幅40センチで、北京では最も狭い胡同となっています。
そして、胡同は、まっすぐ伸びるものが多いですが、20もの曲がり角がある北新橋地区の「九道弯胡同」のような曲がりくねったものもあります。
胡同は、かつて北京市民の生活の場でした。子供が遊ぶ。道端に設けられた自由市場で野菜や果物を買う人々。夏場には、家から椅子やテーブルを持ち出して囲碁などに興じたり、パイプタバコをふかして夕涼みをする老人たち。そんな庶民の生活に根ざした胡同は、近年の都市建設にともなって、次第に姿を消していきますが、北京市の中心部に、胡同が昔のまま保存される地区を設けられました。北京の庶民文化に興味を持つ方々は、北京に来るとき、ぜひ胡同を訪ねてみてください。
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