四川は中国の歴史上、喫茶の習慣が最も早くから始まった場所とされ、今でも昔ながらの茶館が多く残っています。いい大人たちが日がな一日麻雀やトランプに興じながらのんびりお茶を飲み、席に座っていると、耳かき屋や按 摩屋、新聞・雑誌売りなどの物売り、偶には大道芸人なども見ることができます。
北京の胡同や上海の里弄などとはまた違った庶民的な風景が成都の下町の魅力です。最近は昔の街並みを再現した商店街「錦里」、「琴台路」などもでき、観光客でも気軽に散策を楽しむことができます
成都で最も良く知られる歴史的人物は、三国志の英雄、諸葛亮孔明、劉備玄徳と唐代の詩聖、杜甫でしょう。成都の観光でも必ず訪れるのは彼らのゆかりの地です。「武候祠」は三国志で有名な蜀の宰相、諸葛亮孔明の祠堂です。中には主君である劉備玄徳の陵墓もありますが、諸葛亮のおくり名である武候の名の祠となっているのは、今も昔も諸葛亮の方が人気があるからでしょうか?境内には諸葛亮と劉備だけでは無く、関羽や張飛、趙雲を始め、蜀の英雄たちの像が祀られています。その多さは他都市にある関帝廟等とは比べ物にならず、有名な武将はほぼ網羅されているといっても良いでしょう。三国志マニアにとっては、その一つ一つを見ていくだけでも半日はかかる三国志の聖地です。武候祠の側には古い街並みを再現した「錦里」があり、四川の小吃をつまみながら、そぞろ歩きをするのも楽しみです。
唐代の詩人、杜甫は戦乱を避けて成都に4年あまり滞在したことがあり、この期間に最も充実した詩作が生まれたということです。その杜甫が住んだと言われる場所に、「杜甫草堂」があります。杜甫にとって成都はあくまで仮の住まい。住居も質素なものであったそうで、今はもう残っておらず、現在残るのは後代に作られた祠堂を始めとする建築群です。園内には赤壁に挟まれた通路やうっそうとした竹林や梅林があり、四川ならではの緑豊かな庭園の雰囲気を楽しむことができます。杜甫にとって成都での暮らしは、あくまで戦乱を避けた不遇の時代ではありましたが、この庭園を見ると、この時代に最も杜甫の詩作が充実したのは、四川のこの豊かな風土が大きく影響していたのでは、と感じることができます。
武候祠が三国志の聖地なら、ここ杜甫草堂は漢詩の聖地と言える場所なのです。
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