1994年にユネスコの世界文化遺産リストに登録された湖北省の武当山は有名な観光地だけでなく、道教の名山としても知られています。ここは山が高く、うっそうと茂った森に覆われ、風景が非常に美しいです。72の山が最高峰の天柱峰を取り囲み、洞窟や泉、岩、谷が山々の中に点在しています。雲が険しい峰と深い谷の上を浮き上がり、まるで仙境のようです。
伝説によりますと、道教を信仰する真武大帝はこの山に生まれ育ち、ここで修業して、道を得て、昇天したと言われています。そのため、「仙人の故郷」であるこの山は、昔から道を学ぼうとする人たちを引きつけています。
武当の道教は武当派武術と深いつながりがあります。道教の道士は道を得るために修業すると同時に武術を学ばなければならなかったのです。武当派武術は身を守り、体の健康をを目的にしたもので、柔らかそうな動きで勢いよく力強い相手を制し、先手を打たないというものです。「内家拳派」という気功による独自の武術流派を形成し、北方の少林寺拳法と共に名を知られています。
武当山には中国で最大規模の道教寺院の建築群があります。その建築は真武帝が山をつくり上げたという神話にもとづいて建造されたもので、権力と神権を結びつけようとする意図を示し、おごそかな雰囲気にみちています。道教は自然を崇拝する宗教で、その建築物も雄大な山や険しい崖、奥まった洞窟を利用して、最もふさわしい場所を選んで合理的に配置され、周りの森や岩、谷と融けあい、まるで自然にでき上がった景観のように見えます。
山の麓から天柱峰の頂上にある金殿までの道は黒い石で敷き詰められ、長さ70キロで、「神道」と呼ばれています。両側には瓦礫となった宮殿や寺院も少なくありませんが、現存している建築物は雄大かつ精緻に築造されているので、文化価値の高いものがたくさんあります。
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