写真・文 林 望
柔らかい緑色の茎に、キクの葉状に裂け目の入った小さな葉がついている。鼻を近づけると、青臭く、くせのあるにおいがツンと漂ってくる。
最近、日本では「コリアンダー」という名で紹介されることが多いようだが、「こえんどろ」という和名もある。一風変わった音の響きからも分かるように、東アジアの在来種ではなく、地中海沿岸から伝わってきたセリ科の植物だ。香辛料としての歴史は古く、古代エジプトやギリシャの文献にも出てくるという。日本には十世紀以前に渡来し、生魚を食べる時のにおい消しに用いられたこともあったが、結局日本人の口には合わなかったのだろう、伝統的な日本の食文化にはついに定着しなかった。
ところが、この香りの強い植物は中国ではしっかりと受け入れられ、その名も香菜と呼ばれている。餃子の餡や各種のスープに入れられるほか、前菜や肉・魚料理など、実に多くの料理に添えられるため、中国古来の香辛料だと思っている人も多いようだ。
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