FAO・国連食糧農業機関のブドレザ・アバシアン穀物担当上級分析官はこのほど、ローマの本部で中国国際放送局のインタビューを受け、食糧と食用油価格の世界的な高騰をめぐり、見解を発表しました。
アバシアン氏は「われわれは世界的な食糧危機に陥っているか?1973年の大飢饉に比べると、現在は世界的な食糧危機ではない。1973年には食糧は購入できなかった。供給から見れば、現在、食糧は充分である」と語りました。
今年の食糧価格高騰について、アバシアン氏は「気候の影響で食糧輸出国の収穫量が減少し、また、世界の食糧備蓄が不足していることがその主な原因である。気候災害、アメリカのドル安、原油価格の高騰、金融市場の不安など、直接的な影響ではないが、情勢を複雑化させ、市場の混乱と食糧価格の不安定さを誘発した」と述べました。
また、アバシアン氏は「バイオ燃料の原料となる作物の大規模栽培も価格高騰の一因ではあるが、根本的な要因ではない」と見ています。
中国、インドなど経済新興国の食糧輸入についてアバシアン氏は「中国とインドは食糧の自給自足を確保し、また、穀物の一部を輸出している。両国ではいずれも人口と収入が増加し、食糧需要も拡大した。ただ、この需要拡大は農業への投資を拡大させ、他の国の農業生産を牽引する役割を果たした」と語りました。
さらに、中国の食糧安全保障についてアバシアン氏は「食糧安全保障で中国は良好な政策を実施している。食糧の自給自足、増産、灌漑用水と耕地の確保、野菜需要増大への対応など政策面で優れた成果を収めた」と語りました。
アバシアン氏は「今年の食糧高騰を警告として、どのような対応策をとるか、どのような投資により、危機を回避できるか、学ぶべきである。このような食糧情勢は1973年の大飢饉以来初めてであり、非常に重要である。国連や関連の国際機関にとって歴史の教訓を学び、解決法を見出すことは重要である」と語りました。
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