セルビアとロシア政府は25日モスクワで、石油・天然ガス協力協定を締結しました。
協定の調印式には、セルビアのタディッチ大統領、コシュトニツァ首相とロシアのメドベージェフ第1副首相が出席しました。
タディッチ大統領は「この協定により、セルビアは欧州へのエネルギー供給の重要な中継地となった。セルビアとロシア両国民は歴史、文化、宗教で密接な関係があり、共通した経済的、戦略的利益をもっている」と語りました。
ロシアのプーチン大統領は「バルカン地域で石油・天然ガス輸送の重要な中継地となったセルビアを通じ、欧州全体へのエネルギー供給が確保できる」と語りました。
協定によりますと、ロシア国営天然ガス企業のガスプロム社が4億ユーロでセルビア国営石油会社の株式51%を購入し、カスピ海からセルビアを経由する天然ガスパイプラインを敷設するほか、2012年までにセルビア国営石油会社の技術革新に5億ユーロを投入するということです。
セルビアを経由する天然ガスパイプラインは年間輸送能力が100億立方メートルで、2013年に利用開始する予定です。
また、セルビア領内に3億立方メートルを貯蔵できる天然ガスの地下備蓄倉庫を建設することにしており、1日の輸送能力は160万立方メートルです。
ところで、この協定に対し、セルビア国内では一部の野党が「政府は自国の重要なエネルギー産業を破格な安値でロシアに売って国家の利益を損ねるとともに、エネルギー安全保障の権利を他国に握られ、またEUからの孤立を強めた」と非難しています。
アメリカは「ロシアはセルビアとの協定を通じて、バルカン地域での存在を誇示し、政治と経済の戦略的基地を建設する狙いがある」と不満を表明しています。
EUはロシアへのエネルギー依存度の低減を図り、イランからトルコ経由のパイプラインを計画しており、ロシアとセルビアやブルガリアとの協定に憂慮を示しています。
ある専門家は「経済の転換期にあるセルビアは外国からの資金や技術の支援が必要で、長期にわたるエネルギーの安全保障を得ることが出来る。また、セルビアはコソボ問題でEUとアメリカからの大きな圧力を受けており、ロシアからの支持は重要である。一方、ロシアもセルビアとブルガリア経由のパイプラインを建設することは、経済的な利益だけではなく、EUへの燃料供給をコントロールし、EUとNATOの東方拡大に対抗するという政治的な利益を得ることが出来る」と指摘しています。
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