国際原油価格の急騰が続いています。ニューヨーク取引所の5月限の軽質原油先物相場は1バレル66.03ドルで取引を終え、去年8月以来の最高値となりました。これについて、専門家は、「イランと西側諸国との緊張した関係などが、国際原油価格が高騰を続ける主な原因となっている」と分析しています。
イランは23日、イラン領海への不法侵入を理由として、15人のイギリス海軍兵士を拘束しました。イギリスのブレア首相は29日、拘束された海軍兵士の釈放をイランに求めるとともに、関連の声明を採択するよう国連安全保障理事会に働きかけることを明らかにしました。このほか、国連安保理は24日、核ミサイル計画を続行しているイランへの制裁を定めた第1747号決議を全会一致で採択しました。一方、イランは、「この決議は違法である」との見方を示した上で、25日、IAEA・国際原子力機関への協力の一部を中止することを発表しました。
これとともに、関係地域の政治的な危機もエスカレートしています。イラン海軍が湾岸海域で1週間にわたる軍事演習を行った後、アメリカ軍も27日から湾岸地区で大規模な軍事演習を始めました。アメリカ軍の軍事演習は2003年3月イラク戦争が勃発して以来、この地域で行った最大規模の軍事演習です。その目的は軍事演習を通じて、イランに圧力をかけることにあると見られています。
イランと、アメリカ、イギリスとの緊張が高まっている中、OPEC・石油輸出国機構で第2の原油生産国としてのイランが西側諸国への原油供給を停止することが懸念されています。これは、国際原油市場に不利な影響をもたらし、原油価格の高騰を招く原因となっています。
次に、気象予報によりますと、メキシコ湾岸地域が多くのハリケーンに襲われる可能性があり、この地域の原油生産に影響を及ぼすかもしれません。これとともに、アメリカの原油の在庫も減少する一方で、中でもガソリンの在庫は数週間連続して減少しました。こうしたことも原油価格が高騰する原因の一つとなっています。
また、アメリカでは5月末から9月初めまで、夏の石油消費のピークを迎えます。全世界の原油に対する需要も高まっています。さらに、政治問題によって衝突事件が起こる可能性もあり、こうした要因は、短期間内に国際原油価格の高騰を推し進める可能性があります。
国際原油価格の今後の動きについて、専門家は、「原油価格にとって鍵となるイランと西側諸国との緊張が短期間で緩和される見込みがないため、原油価格が近いうちに大幅に下落することはないだろう」と見ています。また、OPECのアルバドリ事務局長は28日、「湾岸地域の緊迫した情勢によって原油価格が高騰しているが、現在、原油の供給は十分である。このため、OPECは現在の市場に対し新たな措置を取らない」と述べました。同時に、専門家は、「ここ数年、原油価格は地政学的な問題による影響を受けているが、最終的には、市場の需給関係が、原油価格の値動きを誘導する。イギリス海軍兵士の拘束事件が解決すれば、国際原油価格は落ち着いてくる」としています。
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