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中国国家海洋局は9日、「海に排出された汚染物質が絶えず増加していることから、中国の海洋環境、特に近海の環境は深刻な汚染状況である。改善措置も極めて難しい状況にある」とする報告を発表しました。
尹中全さんは中国広東湛江市の水産養殖業者で、近海での魚類の養殖で生計を立てています。2005年夏のある日、大きな災難がふりかかってきました。「養殖している魚がすべて死んだ。数十斤もある大きな魚も死んだ」というのです。わずか数日間で、尹中全さんが飼っている魚が全て死んで、得られるはずだった数万元の収入もなくなりました。そして、現地のほかの水産養殖業者も同じような不幸に見舞われたのです。
これは"赤い幽霊"と呼ばれる赤潮がもたらしたものです。赤潮は陸上から海に排出された汚染物質によって、海水中のプランクトンが異常増殖して、海水が変色する有害な生態現象です。赤潮生物が分泌した粘液は、魚のえらにへばりつき、魚を窒息させ、死なせます。
中国が9日発表した『2005年中国海洋環境質公報』によりますと、2005年中国の近海で同じような赤潮が80回ほど発生し、7000万元の損失をもたらしました。
中国国家海洋局の李春スポークスマンは「現在、中国近海は陸上から排出された汚染物の深刻な被害を受けている。陸上からの汚染物質が多く、わが国の河口や、海湾、湿地の生態システムはますます悪化してきた。海に流れ出た汚水に含まれている高濃度の栄養素は、大規模な赤潮を起こした。それと同時に、陸上の汚染物質の大量排出は珊瑚などの生態システムにもひどい影響を与えた」と述べました。
統計によりますと、ここ5年、陸上からの汚染物質は絶えず増えています。去年の汚水量は317億トンを超え、2000年より96億トン増加したとのことです。
深刻な海洋汚染に対して中国環境保護部門と沿海各地の関係部門は重大な注意を払ってきました。海洋汚染を減少するために、多くの地区は汚染物質の排出を抑制し、汚染状況を厳しく検査するなどの積極的な措置を講じています。中国東部の山東省煙台市はここ数年、国家の海洋清浄化行動計画に積極的に参加しています。煙台市の海洋と漁業局の姜清春局長は「海の許容能力を無視して、勝手に汚染物質を海に排出する行為を抑制しなければならない。魚類がますます少なくなり、海洋環境の許容能力もますます小さくなった。私たちは海を保護しなければならない。」と述べました。
姜清春局長は「海を汚染したのち再び元に戻すのは非常に難しく、長い時間が必要である。だから、海洋環境を保護する場合、やはりまず汚染そのものを減少させなければならない」と強調しました。
汚染の処理施設が少なく、環境意識が不足し、また一部の企業が不正行為を行っていることから、現在の中国は100%の汚染を処理を行うことはできません。中国海洋環境観測センターの馬明輝研究員は「これから、中国政府はさらに汚水処理設備を充実させると共に、不法に汚染物質を排出した個人と企業を処罰し、陸上からの汚染物質の排出を減少させる必要がある。そして、海洋汚染処理のための人と資金の投入を拡大し、海洋汚染が人々の生産と生活にもたらす悪い影響を緩和させていく」と述べました。
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