ウォン・カーウァイ監督は本当に話題性の高い監督で、彼の新作は、出るたびに注目を集めます。監督業以外でも、脚本家やプロデューサーとして第1線で活躍しています。中国全土ばかりでなく、国際映画祭でも数々の受賞歴を持っていますし、2004年の作品『2046』では木村拓哉を起用したことで、日本でも人気が出ています。
【インタビュー】
?デビュー当時の思い出
私のデビュー作は『旺角か門(今すぐ抱きしめたい)』です。この映画はぜんぜんあたらなかったのですが、やっぱり映画は魅力的だと思っていたので諦めませんでした。十数年間にわたって映画を撮ってきましたが、私にとってはすべていい想い出です。ワンシーンだけを見ても、撮影当日のエピソードなどが目の前に浮かんでくるんです。「ああ、あのころ、マギー・チャンはおデブちゃんだったなあ」とか、「あのワンカットは10回以上取り直したなあ」とか・・・映画って本当に不思議なものですよね。
?監督をはじめたきっかけ
小さい頃、家の近所には劇場が多かったんです。いつも親に連れられて映画を見に行きました。いちばん印象深かったのは、『甲午風雲』という中日戦争を描いた映画ですね。
私は上海生まれ、香港育ちで、父親の仕事の関係で香港に移住しました。香港に来てまもないころは、親戚も友人もおらず、映画を見ることは、私と母の唯一の楽しみでした。母と二人でよく映画館に通いました。でも、あのときの夢はスポーツ選手になることでした。映画監督にならなかったら、いまごろスポーツ選手になっていたかもしれません。
しかし、映画をやってみるとすっかり魅了されてしまいました。それで、映画という道にすすむことを決めました。
?いつもかけているサングラスについて
サングラスをかけると、確かに神秘感な印象になりますよね。サングラスをかけるのは、昔からの習慣です。いつも昼間に脚本を書き、夜中に撮影をするという生活だったので、目が敏感になってしまって、光を見ると、すぐ涙が出てしまうんですよ。それで、いつの間にかサングラスをかけるようになりました、屋外でも屋内でも。それは、映画を撮るために払った代償といえるでしょうか?でも、いくらつらくても、映画が諦められないんです。
【プロフィール】
1958年生まれ、上海出身。五歳のときに香港に移住、香港理工学院へ入学。卒業後はテレビの現場を経験し、脚本家として映画界へデビューしました。1988年の「今すぐ抱きしめたい」で初めてメガホンを取りました。興行的には今ひとつでしたが、この作品で主演のアンディ・ラウは一躍大スターになりました。ラテン・アメリカ文学を思わせる不思議な浮遊感やタイム・リミットへのこだわりが特徴だといわれています。代表作に、「恋する惑星」「天使の涙」「ブエノスアイレス」「花様年華」などがあります。
【過去の監督作品】
いますぐ抱きしめたい(1988)
欲望の翼(1990)
神鳥伝説(1991)
大英雄(1993)
楽園の瑕(きず)(1994)
恋する惑星(1994)
天使の涙(1995)
ブエノスアイレス(1997)
ブエノスアイレス 摂氏零度(1999)
花様年華(2000)
2046(2004)
愛の神、エロス(2004)
【受賞暦】
『いますぐ抱きしめたい』: 1989年カンヌ映画祭の「批評家週間」に招待。
『欲望の翼』:香港映画祭で、最優秀作品賞、最優秀監督賞、最優秀主演男優賞(レスリー・チャン)を含む5部門を受賞。
『楽園の瑕』:1994年ヴェネチア映画祭でプレミア上映。
『天使の涙』:トロント映画祭で公開。
『ブエノスアイレス』:カンヌ映画祭で最優秀監督賞を獲得。
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