私たちの中国国際放送は国営事業体です。国営の事業体に勤めている人たちの社会保障はすべて、職場任せですから、あまり身に染みた経験がありません。しかし、収入が一定基準を満たさず、最低限の生活を送れない、いわゆる「社会的弱者」がいるのも事実です。具体的には、低収入者、失業者、身体障害者、退職後のお年寄りなどです。そこで、中国では各都市で「最低生活保障金」制度が設けられています。これは日本で言えば「生活保護」のようなもので、文字通り、最低限の生活を保障するために金銭を支給する制度です。
ここでは、北京市の「最低生活保障金」制度を例にとって見てみましょう。北京市の規定では、一人当たり300元が「最低限の生活」に必要な金額と定められており、一つの家庭での総収入が人数×300元に満たない場合、その不足分が政府から支給されます。
ある北京市の家族を紹介します。この家族は夫婦とも身体障害者で、奥さんは個人で小さな店を開いていますが、旦那さんは仕事をすることができません。一人っ子の息子さんは小学校に通っていて、お父さんと同じく、足が不自由です。家計は奥さんに僅かな収入があるだけです。
最低生活保障制度により、この家族の必要金額は300元×3人で900元。しかし奥さんの収入はそれに満たないため、その不足分を北京市政府が支給しています。それで食事代はもちろん、子供が小学校に通う費用や、家族3人の医療費をまかなっています。
この最低生活保障の基準は、市民の生活レベルの向上にしたがって徐々に上昇しています。北京市を例にすると、制度が発足した当初は一人当たり月170元でしたが、いまでは300元に上がりました。
"300元"という金額は日本円にして、5000円足らずで、少ないように感じますが、中国の物価水準では、お米一キロが3元ですから、食べていくにはまず問題ありません。
またこの家族は、収入の少ない人々のために、安い家賃で部屋を提供する北京市政府の措置により10平米の部屋を借りて住んでいます。
収入が低い人々、身体の不自由な人々、そして退職した人、失業者など、いわゆる弱者層を支援する社会保障の仕組みが中国で次第に出来上がりつつあります。
中国の最高権力機関である全国人民代表大会では、今年、温家宝首相が?社会保障システムの整備 ?金銭の予定通りの支給 ?社会保障のカバー範囲の拡大の3点を表明しています。
中国の社会保障システムは、まだまだ不十分なところが少なくありませんが、徐々に整備されているところです。
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