【キッカケは1955年 心で撮影】
私が中国で撮影するキッカケとなったのは、1955年、北京郊外十三陵への途中で見た一軒の土塀に囲まれた農家の印象です。それは、私が夢見ていた中国独特の原風景でした。秋日に暮れなずむ農家の庭で目隠しされたロバが、丸い石臼の周りを黙々と回り、玉蜀黍の実を挽いている(写真参照)。
中国の平和で、静かな夕暮れの風景が私の心を捉えました。残り少なくなったとは言え、中国の奥地にはこうした光景は探せばまだかなり有ります。私の撮影は、その場に行って探すというのではなく、撮影する以前にすでに出来ている私のイメージとピッタリ重なった所が私の目的の写真なのです。即ち、出来上がった写真は、「目で見るだけでなく、心で鑑賞してほしい」し、当然、「目だけで撮影せず心で撮影する」というのが、私が撮影する鉄則となっています。こうした姿が失われないうちに何とか写真にだけは撮影記録し続けるつもりでおります。