【観察眼】ウィンタースポーツ人口「3億人」の目標は、もはや夢ではない

　先日、浙江省台州市に住む友人と連絡を取ったときのことだ。彼女は「最近よく娘を連れて、市内の室内スキー場に行っているの」と教えてくれた。それを聞いて私は驚いた。なにしろ、台州市は冲縄県那覇市とほぼ同じ緯度の沿海地域にあるのだ。

　そんな温かいところにスキー場があるのかと尋ねると、友人は「新しくオープンしたのよ。それに今どきはスキー場なんて、もっと南の広東省や福建省にだってあるわよ」と、私の見識の狭さをからかうように笑って言った。

▲台州市のスキー場で練習する、筆者の友人の娘さん

　『中国スキー産業白書』によると、中国のスキー人口は北京冬季五輪の招致成功をきっかけに増え続けており、2019年度には延べ2090万人に達したという。2020年度はコロナ禍の影響で減少したものの、スキー産業への信頼性は高いようで、通年で8カ所のスキー場が新たにオープンしている。これにより国内のスキー場は計778カ所になった。

　氷上スポーツも盛んだ。今年初めまでに、中国には国際規格のスケートリンクが654カ所設けられており、これは2015年の五輪招致成功当時に比べると4.17倍に増えている。多くの学校でスケートの授業が行われ、子どもたちは授業を通してスケートの魅力を体験できるようになっている。アイスホッケー、カーリング、フィギュアスケート……かつて中国ではマイナーだったスポーツも、だんだんとメジャー化し普及しつつある。

　そもそも、中国人のウィンタースポーツに対する情熱は古来より受け継がれてきたものだ。今から1400年ほど前の隋の時代の記録には、「中国東北部の少数民族が雪の中を『木に乗って歩いていた』」とある。そりのような板を踏んで、雪が降った地面を歩いていたのだという。近代においては、1979年から2001年にかけてが、中国でウィンタースポーツが急速に発展した時期だとされている。それは、この期間に全国冬季運動会が6回も開催され、1980年に中国が初めて冬季五輪に参加し、1996年にハルビンでアジア冬季競技大会が開催されたことが大きい。これによってウィンタースポーツは中国人にとってますます馴染み深いものになった。そして、さらなる発展の契機となったのが、2015年の北京冬季五輪の招致成功というわけだ。中国のウィンタースポーツ人口は2018年時点で延べ2億7000万人に達した。ウィンタースポーツの普及によって、寒い冬にも家に閉じこもることなく、屋外で運動することを選ぶ中国人は増え続けている。

　ーーこうしてまとめてみると、感慨深いものがある。筆者は東北出身で、中国でウィンタースポーツといえば「北方」のものだと思い込んでいた。しかし、それらはいつの間にか南下し、深く根ざして花を開き、すでに実を結んでいたのだ。中国では、ウィンタースポーツ産業の発展の見通しは明るく、それを支援する政策も相次いで打ち出されている。ウィンタースポーツに関する教育の普及が各地で進行中のいま、五輪招致に際して掲げられた「3億人がウィンタースポーツを楽しむ」という目標は、もはや夢ではない。

　北京冬季五輪は100日後に幕を開ける。北京は世界初の「夏と冬の五輪の両方を開催した都市」になる。冬季五輪を成功させるには、政府から民間まで、各分野の連携が必要だ。私たち中央広播電視総台（チャイナ・メディア・グループ/CMG）は中国初のオリンピック専用のテレビチャンネルを開設した。チャンネルの開設に際しては、習近平国家主席からメッセージが寄せられ、冬季五輪の関連報道に対する支持と大会を成功させる自信が改めて示された。北京冬季五輪の開催が、中国のみならず世界のウィンタースポーツの発展をも後押しすることが期待されている。

　実は職場の近くに最近、新しいスケート場ができた。今週末にでも滑りに行ってみようかと思っている。これで私も、晴れてウィンタースポーツを楽しむ3億人の1人だ。（CRI日本語部論説員）