北京
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新型コロナウイルス感染症によるパンデミックは、「世界健康安全保障」(global health security)に大きな試練をもたらしている。全人類がこの共通の危機にさらされる中、どの国も独り善がりにはならない。感染症との戦いで、ワクチンは重要な武器になる。特に最近、インドでの感染拡大は世界の注目を集め、ワクチン接種の緊迫性がいっそう高まっている。
7日、世界保健機関(WHO)は、中国医薬集団(シノファーム)北京生物製品研究所が開発した新型コロナウイルスワクチンの緊急使用を承認した。アジア、アフリカ、ラテンアメリカなどの発展途上国がコロナワクチンの公平な分配のための国際的な枠組み「COVAX(コバックス)」を通じて入手できる。
一方、9日、エジプト保健人口相は、中国の科興控股生物技術(シノバック・バイオテック)社と協力してエジプトで現地生産したコロナワクチンが6月に発売される見込みだと発表した。これにより、エジプトはアフリカで新型コロナウイルスワクチンの生産能力を持つ最初の国となる。
中国製ワクチンのWHO承認や、国際公共財として多くの国に導入された動きを受け、一部の西側諸国とメディアは、相次いで「ワクチン外交」のレッテルを中国に貼り、政治的茶番劇を上演して、混乱を引き起こし、世界の感染症対応の格差を拡大させている。
5日、米バイデン政権は、コロナワクチンに関わる知的財産(特許)の一時放棄を認める意向を示した。これは、アストラゼネカ、ファイザー、ジョンソン&ジョンソンなどのワクチン生産メーカーの逆鱗に触れ、米製薬大手ファイザーのアルバート・ブーラ最高経営責任者(CEO)は従業員への公開書簡で、米政府の決定に「断固反対」を明言している。
マクロン仏大統領は7日、英米を念頭に、「アングロサクソンがワクチンや原材料を遮り、米国で生産されたワクチンの100%は米国市場に供給されている」と非難した。
さらに、8日にボルトで開かれた欧州連合(EU)非公式首脳会議の後、欧州委員会のフォン・デア・ライエン委員長は、「ワクチン特許の一時放棄は問題解決にならず、無意味なことだ」と述べ、生産分を国内使用に限定して、輸出には消極的である米英を暗に批判した。
なんとも1年前に見覚えのあるシーンではないか。マスクや人工呼吸器、個人防護設備(PPE)などをめぐり、欧米諸国の間で奪い合いが起きていた。過去から考えれば、ワクチンに関する欧米諸国間のあつれきと混乱はもはや驚くことではない。感染症の世界的大流行の封じ込めで協力するよりも、自国の利益を優先させていることが原因であろう。
4日に発表されたファイザーの財務諸表では、2021年の新型コロナウイルスワクチンの年間売上高は当初の150億米ドルの見通しから260億米ドルに上方修正され、約70%も増加している。それでも、ファイザーのCEOは、特許放棄は「投資家の懸念を招く」と不満を垂れ、金儲けには目がないのだ。
一方、バイデン政権は、ワクチンの特許放棄を表明して、モラルリーダーシップをアピールしようとするが、実に偽善的な振る舞いだ。周知のように、ワクチンの特許放棄は複雑な問題で、その交渉にはかなり時間がかかる。また、一部の途上国や後発国にワクチンの特許を与えても、製造するどころか、ファイザーワクチンの保管に必要な超低温コールドチェーンシステムさえが確保できない現実がある。あたかも絵に描いた餅のようで、現実的には役に立てない。
現在、世界的なワクチン不足の大きな要因の一つは、一部の先進国は国内の必要量を大いに上回った備蓄量を保有しているからだ。そうした行動により、低・中所得国家はワクチンを入手できず、もしくは注文しても必要な量の供給が保障できなくなっている。米政府はワクチン問題の解決に真に誠意があれば、どうして大量に独占したワクチンを一番必要な国に回さないのか。少し前に、韓国やインドが、ワクチンの緊急使用で米国に助けを求めた。しかし、同盟国の韓国でさえ、「寛大に」扱ってもらうことができておらず、ましてや発展途上国のインドとなると、なおさらであった。
残念なことに、欧米はいつもワクチン問題を「政治問題化」し、「ワクチン協力を利用して政治的影響力の拡大を狙っている」と中国を非難し、途上国や後発国にワクチンを提供している中国の行動を「ワクチン外交」と批判している。それを言うならば、欧米諸国は途上国や後発国に何をしてきたか。
写真:「フォーブス」誌が3月31日に公式サイトで公開した
新型コロナウイルスワクチン輸出の統計データ
「フォーブス」誌は3月31日に公式サイトで、中国は世界最大の新型コロナウイルスワクチンの輸出国だと報じた記事を配信した。それによると、この3月末時点で、中国は1億900万回分のワクチンを輸出し、輸出量は総生産量の48%を占めている。一方、世界2位の新型コロナウイルスワクチンの生産国である米国は、3月時点までに生産した1億6400万回分のワクチンは100%国内使用に回されている。また、3月末時点で、英国は1600万回分を生産したが、同じく100%国内使用に限定されていた。対して、インドとEUはそれぞれ、その製造したワクチンの44%と42%を輸出に拠出している。
さらに、イギリスの調査会社「エアフィニティ (Airfinity)」が発表した最新のデータによると、4月末現在、中国は他のすべての国の合計数よりも多く、約2億4000万回分のワクチンを輸出した。
人命第一。これは中国の感染症対策で貫徹された原則だ。ここでいう「人命」には、中国人の「命」だけでなく、感染症に苦しめられている全人類の「命」も含まれている。中国は新型コロナウイルスワクチンを国際公共財にすることを最初に提唱した国で、この約束を守り続けている。国内での接種率はまだ集団免疫のレベルに達していないにもかかわらず、80カ国の途上国にワクチンを支援し、50カ国にワクチンを輸出した。中国による継続的なワクチン輸出と援助行動は、米国の提出した特許放棄よりも、即時かつ切実な力になる。
ワクチンの輸出実績ゼロの国にはワクチン輸出の実績がある国を非難する資格はどこにあるのか。偽善的な演出よりも、地道に最善を尽くす努力が求められている。一部の国にとって、いま彼らが差し迫って対応しなければならないことは、新型コロナウイルスワクチンの提供に先立って、政治的ウイルスの拡散を防ぐ取組なのかもしれない。(CRI日本語部論説員)